読書感想:『日本文学史序説』補講 (加藤周一著・ちくま学芸文庫)
・加藤周一さんの本は、昔々に(正・続)「羊の歌」、「芸術論集」など読んでいたが、その後は、あまり著書を読む機会も無かった。・船旅で、じっくり時間がありそうで(なんせ円安でOver Land Tourという「船から先行して、あちこち飛び回る旅」は、予算があわず、船が停泊した時、日帰りで行けるツアーのみに限定)なので、船内での時間はたっぷりとある。この本も読み通せるかもしれない・・。・で、少し齧ってみたら、こちらの知識不足が主原因だが、「歯が立たない!」感じで参った。そしたら、それの「補講」が文庫本ででていたので、飛び付いた。こちらは何とか読める。信州・追分で企画された五日連続の「勉強会・合宿」の記録で、「質疑応答」の側面もあり、非常に読みやすい。・「序説」は、世界7か国語に翻訳されているそうで、なるほど加藤さんならそういう本を書ける訳だ・・と感心した。ま、世界の人が感心する前に、私もその感激をシェアしたい!!・『補講』は、「とてもおもしろい視点」というか「今まで聞いたことがない分析」がちりばめられている。・2,3「なるほど!おもしろいな・・」と思った記述を、アト・ランダムに、ご参考までに書いておこう。・①道元、ロヨラ(pp.119-127):「座禅ーすなわち只管打坐」による「悟り」が推奨される。ただ、悟りは(あらゆる社会的・精神的な約束事を破壊した)「意識のなか」で起こることで、それを唯一認めてくれる意識外の存在は、「先生」だけ。なので「印可」が大事・・しかし、「悟り」を追求する過程から日々の生活をおくる規則は学べない。なので、『永平寺清規』(これも道元が書いた)というガンジガラメの生活規則(何時に起きて、食事は何時から〜のような)が定められた。・・ま、「内面」を徹底的に追及させ、「外面」は決めたとおりにやりなさい・・という訳。イグナティウス・ロヨラ(スペインの神秘的神学派の代表的人物。精神的及び肉体的に神との一体感に達するのを信心の核とした。禅宗の悟りに似ている。)は、同様に、「いかに神秘体験に達するか」と、共に細かい日々の生活の『イエズス会会則』についても書いている。なるほど!!・②恋愛詩としての万葉集:(pp.59-73):陸軍は日本文化の根幹に「勇ましい」ものを探し、「防人の歌」がそれにあたるとして賛美したが、万葉集全4,500首のうち、せいぜい10~20首。大半は徴兵されたが早く故郷に帰りたいとか、そんな歌。まあ、下士官のつくった歌だから、戦闘的なものもあるけど・・。・③ついでに、日本人は、自然を愛していたのか?(pp.51-54、71)。「・・誰も旅をしたくなかった。京都は世界でいちばん美しくて、そこにいれば出ていく必要はない。そこで、<自然>といっても京都から外へは出ないのです。・・・」。・・せっかく旅しているのに、『土佐日記』には「一日も早く京都に帰りたい、今頃、京都はどうなっているのだろう・・」と京都の事ばかり、景色さえ見ていない・・・!・(ちなみに)「国宝をたずねる」旅は、現在、700件を超え、「77歳までに800件」というおおざっぱな目標=生きがい、も達成できるかな??(今月、74歳の誕生日をむかえたばかり。来年は「後期高齢者」だ。)ジャンル別にみると、「訪問済み」は、建物:88%,彫刻:82%。ただ、古文書:25%,書籍・典籍:41%と古文書・典籍系が弱い・。そのあたりの「強化」も図りたいが、こういう読書は、役に立つかな?