円相場、21世紀に入り市場構造が変化 | 株えもんのブログ

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 為替レートの変動に影響する要因の一つとして貿易収支がよく挙げられます。実際、1987年、95年、98年の円高局面は、貿易黒字が大幅に拡大した後に起きました。

半面、円高進行後に貿易黒字が縮小する傾向も見られ、90年代までは、こうした関係が非常にきれいに表れていました。


 しかし、それが21世紀に入ってからは、あまりみられなくなりました。例えば、2006年から07年にかけての円安局面で貿易黒字はほとんど増えませんでした。

08年から09年にかけて貿易黒字が大幅に減少したにもかかわらず、円安にはなりませんでした。なぜ、変わったのでしょうか?


 まず日本の輸出競争力の低下、つまり交易条件の悪化があります。90年代までは日本の輸出競争力は抜群だったため、過度な円高さえ障害にならなければ、輸出が大幅拡大しました。

 近年は中国をはじめとする新興国が生産基地として台頭し、日本の競争力が相対的に低下、多少の円安では思うように日本からの輸出が伸びなくなったものと考えられます。


 もう一つは為替市場の主役が、貿易取引から資本取引へ交代したことです。90年までは貿易決済が為替レートに及ぼす影響が大きかったのに対し、今はむしろ資本取引の影響度が拡大したようです。


 日本の経常収支の構造を見ても、かつては貿易黒字が経常黒字の大部分を占めていたのが、貿易黒字に代わって、所得収支の黒字が大半を占めるようになりました。


 90年台までの実物経済が、21世紀に入りマネー経済に変化したことが市場構造を大きく変えたといえそうです。