巨大市場の可能性「セルフメディケーション」 | 株えもんのブログ

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欧米各国では巨額の財政赤字削減の一つとして、医療費の抑制を上げています。このため軽い病気は自分で直したり病気を予防する「セルフメディケーション」という考え方が浸透しつつあります。



これに伴い一般用医薬品(大衆薬)や「薬」の要素を取り入れた食品や美容製品の市場が成長しています。「患者」から「消費者」へとターゲットが変わる中、多様な企業が争奪戦を繰り広げています。


米国中心に浸透



米国で発売直後から記録的なヒットとなった大衆薬が話題となっている。英グラクソスミスの抗肥満薬(アライ)。2007年に米国、09年に欧州で発売。米国では発売半年で3億ドルのセールスとなり、初年度に売上2位となった。


アライはスイス・ロシュ製の医療用抗肥満薬の成分を転用しており、その有効性に、ダイエッットに励む女性などがドラッグストアに殺到した。国民の2割弱が医療保険に加入していない米国では「まず大衆薬」が一般的。消費者ニーズにピタリとはまった。



反面、国民保険制度がある日本ではだれでも軽い自己負担で処方薬が手に入るため、大衆薬が普及しにくい。調査会社によれば、08年の全医薬品に占める大衆薬の比率は日本10%に対し、欧州は国によって違うが25~30%、米国は19%に達する。


米国ではさらに変化が出てきた。オバマ政権が2010年に成立させた医療保険改革法では、病気予防プログラムに参加する労働者の保険料削減を認めることなどが盛り込まれた。保険加入者増で予防市場が伸びる可能性が大きくなった。



新薬開発に壁


ターゲットは米国の大人の3分の2が該当する肥満や過体重。糖尿病、高血圧、動脈硬化になりやすい肥満の改善・予防市場が拡大すれば、医療費削減が期待できる。



しかし、武田薬品工業(4502)の食欲を減退させる処方薬が安全性を上回る有効性が確認できないとして米国で承認されないなど、新薬の審査は厳しくなっている。


厳しくなる新薬の承認基準と予防市場の拡大に目を付けたのが大手食品メーカーだ。味の素(2802)は10年4月、脂肪燃焼成分を配合した食品を米国で発売。


販路は全米450の医療機関に肥満改善や予防のプログラムを提供するCMWL社だ。運動や生活の指導ともに、味の素の食品を取り入れた。



昨年2月にはカリフォルニア州南部の生活改善専門の医療機関チェーンも味の素の食品を採用。味の素では健康食品の知名度を上げ、米国を起点に欧州にも展開すると意欲的だ。


世界最大の食品メーカー、ネスレも動く。昨年1月に肥満や高血圧などを予防する食品の開発会社を設立した。同社では世界の健康食品のマーケットは1000億ドルを突破する可能性があると見ている。



世界で医と食の境界をまたぐ新市場が生まれようとしている。海外売上比率が5割に達し、米国の比率が34%にもなる武田薬品は、数年前に食品事業を他社に譲渡し、医薬品に特化して高収益を享受してきた。


しかし、先進各国が財政難の中で医療費削減の動きを強化すれば、武田だけでなく国内製薬大手は新たな対応を迫られることになりそうです。