はい、後半戦入りますよ。

次の例。

インベンション№7なんだけど楽譜を2種、見てみよう。

 

 

どアタマ開始音である左手の『ミ』。

(A) にはモルデントが付けられている。

(B) には無い。

すると(B)の楽譜で学ぶ場合は、これをどう弾くべきか、悩まなくても良い。と、一瞬思われる。

が、そうは問屋が卸さず。

4拍目に出現する、『ミ』。

こちらは(A)にも(B)にも、モルデントが付けられている。

この曲の調性は e moll。♯は1個だ。

これだけを手掛かりに、(B)もモルデントの弾き方を考えねばならぬ。

 

要は2パターン。

↓の(イ)と(ロ)、どっちで弾くか、である。

#であろうが♮であろうが、2度の長短選択肢であり、和声短音階の短3度とは何の関係もナシ。

 

結論から。

まぁ、言うまでもなく♯、即ち(ロ)に決まってる。

その疑いようの無さは、さっきの№3と同様だ。

何故だろうか?

何が大前提なのか。

 

これも結論を云ってしまおう。

e moll なる短調の(ア)イオニアンスケール、之れ即ち7音音階が鉄則(グランド・ルール)だからだ。

では何故?

それは ・・・ Bachだから、としか云いようが無い。

 

「じゃBachじゃなかったら(イ)、つまり♮でも良いってか?」

 

然り ・・・ ん、もちろん全部じゃないっすよ。むしろ時々。

 

「何でやねん?」

 

それは既にヒントを述べてます。

(ア)イオニアンって ・・・

 

「7音スケールって言ってましたよね?て事は7音スケールじゃなくて ・・・ 」

 

左様!

ペンタトニック=5音階だったら、のケースは違うかも、って可能性があるって事です。

 

話はいきなり、200年すっ飛ばします。

誰を例にするかというに、昨年生誕150年のラフマニノフに。

例えば有名な前奏曲g mollのメロ構造は、

『ソ・シ♭・レ・ファ・ソ』

の、半音音程を含まない完全なペンタトニック。

彼の楽曲てかメロ、往々にして凄くブルージー、この場合はブルース的って意味ね、だったりジャズっぽいのは、このせい。

イパ~ン的には其れをして、

 

「チャイコフスキーを踏襲した、ロシア民謡の引用が伺える」

 

みたいな説明がなされるんだけど、オレは其れ、違うと思う。

明らかにアメリカ音楽の影響&吸収である、と。

これ、山下洋輔さんも、ちゃんと言ってます。

 

決して脱線では無いんだけど、どんどんBachから離れていくので、もとい。

つまり5音階ルールならば、♮も有り得るって事ですね。

 

さっきの№3D Durは、短調スケール上の装飾音型は、和声音階(MH)の短3度は認めず、というグランドルールだった。

で、コチラは、旋律音階の7音構造に則れ、というルール。

 

つまり、装飾音型というアドリブを、7音スケールの自然短音階なり旋律短音階の上で行うべし、ア~ンド、和声短音階は御法度、ジャズ風に言えばアボイド(回避)という、暗黙の了解が存在しているってことだよね。

 

何よこれ。

それって呈示されたモードスケール上でアドリブすべし、ってジャズ技法そのものじゃん。

こういうのがドンドンどんどん、見出されてゆくんだから、Bach大先生の読譜はヤメられない止まらない。カッパ海老煎のドツボに填ってしまうんだな。

ん、オレだけだって?

ちゃうぜ!イニシエの演奏家の多くがそうだ。

じゃ、今日はここまで!