はい、後半始めます。
よっしゃ、D子さんに別れの曲の中間部を弾いて貰いましょう。
みんなは配布した楽譜で、リアルに眼で追ってね。
~ D子、別れの曲を弾く。勿論、譜例(A)の方 ~
ありがとう、拍手拍手👏👏👏。
今のはイパ~ン的な譜例(A)の演奏でした。
じゃあD子さん。次は(B)を弾いてくれるかい?
~ D子、(B)を弾く~
どうだろう?
こんなの聴いたことないよね。
ところがどっこい、むしろショパン、当初はこっちの記譜を先に出版しているんだ。
「違和感ありまくりです」
そうだよね。
ぜって~普段聞き慣れている方が自然だよな。
でもね。よっく譜面を見て欲しいんだ。
ここには演奏表現上の気分が二組、対になっている。
(A)を記号化即ち数式化すると、↓の具合。
「M調 with forte→m調with piano」+「M調with forte→m調with piano」
(B)はこうなるよね。
「M調with forte→M調with piano」+「m調with forte→m調with piano」
そして(B)は算式の分配法則が使えるから(B)’として、
「M調with(forte→piano)」+「m調with(forte→piano)」
どうだろう?
確かに(A)はナチュラルだ。
「明るい」は「強く」と、「暗い」は「弱く」と、それぞれに親和性を持つ表現のパートナーを選んでいる。
でも、それって自然であると同時に、余りに当たり前田のクラッカーって、作曲者本人、かえって芸の無さを披露している様な気分に陥ってしまうもんなんだ。
たとえオーディエンスや鑑賞者には違和感に違いなくとも、作曲家としての、曲に対する矜恃を崩したく無くないってね。
だからショパンは、(B)で最初の出版を決意したんだ。
弾く側、聴く側に言われなくても、それが人間のフィールと相容れないのは、
百も
万も
億も
兆も承知の介(スケ)なわけ、ショパン本人が。
Feeling + Emotion <Logic
という選択をした、という事だ。
こういう例、ショパンは他にも幾つかある。
キミたちはピアニスト。
だから間違いなく一生、ショパンを弾き続ける運命にある。
こういう例をどれだけ見つけられるか。
そして、どう処理するか、すなわち楽譜を遵守するのか、それとも自分のフィーリングやオーディンスの趣向に合わせるのか。
ショパンだけじゃない。
こういうのはバッハ、メッチャ多いよ。
それは必然なんだ、フーガを作る上での。
モーツァルト、
ベートーベン ・・・
キミ達を指導する人たちはキミ達に言い続ける。
「深い譜読みをしろ」と。
でも、それが具体的にどういう作業をすることなのか、果たして教わってきただろうか?
まずはフィーリングの前にロジック~論理性~がある。
記譜された楽譜のロジック、ね。ロジックを、
① 見出す。
② 遵守してみる。
③ 法則性を検討&検証する。
④ フィーリング&感情に即したフレージングに代替してみる。
そして⑤として初めてやっとフィジカル性即ち弾き易さを比べる、という事だ。
ショパンの凄い点。
それは①から④が、全て⑤と連動している事。
どういう事か。
👆の①~④を実現させる上でイッチャン演奏容易な奏法を見出す、または編み出す事が、結果として
「作品の本質に辿り着くのと同値関係になる」って事。
それが極度てか、並外れて探り当てる能力のピアニストが、ウラディミール・ホロヴィッツ。
ホロヴィッツ信者って、空疎な美辞麗句ばっかり並べて、こういう具合に解法を示せないんだ。
結局、だから分かってないんだよ。
単にゴリ押しに騙されてるだけ。
オレも偉そうなことは言えない。
③の「法則性」は、病院のロビーピアニストである、会津良子先生に示唆してもらったんでね(..;)。
じゃ、残りの時間で歌詞に見る作曲とのアナロジーを示すことで締めくくるよ。
差し上げた歌詞カード、
「too Far Away」は、水越恵子さんってステキなお姉さんが歌ってます。
聴いてみようか。
~多々良、CDを再生、生徒一同、静かに鑑賞~
作曲・作詞とも、伊藤薫さんていうミュージシャン。
WikiったらMaybe、シンガーソングライターって紹介されるだろうけど、正直彼が歌っているのは見たことが無い。
でも大変な出世作があって、オーヤンフィフィっていう中国人歌手が歌う、
「ラブイズオーバー」の作者。
これね、キミ達のお父さんやお母さんは知ってると思う。
1984年に大ヒットしたんだ。
えっとね、指摘して置きたいのはツーコーラス目のAメロ後半。
― 月並みだけど この世にひとり
貴君(キミ)だけ好きだ 貴君だけ好きだ ―
どう、これ?
一段目と二段目、語句の対応が入れ子になってるよね。
日本語としての言語論理性に則るならば、語順は
― 月並みだけど 貴君だけ好きだ
この世にひとり 貴君だけ好きだ ―
がナチュラルだよね。
少なくとも詩(poem)ならば。
が、これは詞(lyric)。
作者は詩として書いたのちに、歌詞に転化すべく「好きだ」を連呼させた。
それは単純に気持ちの強調かもしれないし、連呼によって生じる気持ちの「ウツロヒ」の機微を歌って欲しいのかもしれない。
その場合、歌手はどう歌うだろうか?
f + f ?・・・ んな事無いよな?
f + p ・・・ だよな。それが奥ゆかしきヤマトコトバの機微ってもんだ。
以上。
ね、感情が実は論理性で規定されるって、何か意外だし不思議だよね。
それほどに音楽のうち作曲って行為、ロジックなものなんだよ。
知性的と言っても良いかも。
ハイ、じゃ宿題出して終了します、お疲れ様。
【宿題】
貴方が弾いてきたピアノ曲で、
「ここの箇所の音(型)は、自分は別の方が良い」
と思った」例を、具体的に想いだして記譜せよ。