こんにちは、談話喫茶”ホーボー軒”へようこそ。
店主の Klavi-Seli にて御座候、どうぞごユルリと☕。
さっきから武相芸術大音楽部教授の多々良真先生が、ゼミ生の有志と雑談会をしています。部外の方も参加・聴講は自由との事なので、よろしかったらどうぞ。
前回ショパンの白鍵マズルカについて、みんなに考察してもらったわけだけど、どうなんだろ。これほどのストピブームなのに、マズルカの演奏をupって、殆ど見たことがないよね。
このマズルカ、十分に演奏効果は高いと思うんだけど、ジャンル的にマズルカがインスタ映えしない料理みたいに思われているのは確定のようだね。
で、突出して弾き、upされるのが幻想即興曲で、革命で、ノクターン2番て具合で、動画ウケが固定してるんだよね。
じゃあ白鍵マズルカ、黒鍵のアレとは如何なる相違点があるのかな?
「全然違います。」
「何の共通点も見出せません」
「そうよ」
「そうや」
「黒だけ、白だけっていう何とか歌合戦みたいな分け方以外に、何も意味がないと思う。」
じゃあ黒鍵だけで成り立つ音楽って何か。
白鍵だけで成り立つ音楽って何か。
それに共通点は見出せないだろうか。
Octave内の12音のうち、白鍵は7個、黒鍵は5個のノーテーションを使用する。
すると、どういう現象が起きるか。
あ、ここではFis Dur ではなくGes Dur としよう。
黒鍵ではGes(g♭)から始まる5音階か、Es(e♭)から始まる5音階しか存在しない。
5音階。所謂ペンタトニックってヤツだ。
ペンタとは「5」を意味する。
だから五角形で出来ている、アメリカの国防省の建物をペンタゴンて
呼ぶわけだ。
白だと「ド」から「シ」まで、7つ全部で音階を開始することが出来る。
黒鍵の2つに比べて、格段に変化がある。
だから近代西洋7音階は、フォークロアな5音階すなわちペンタトニックよりも高度&高尚である、とされてきた。
これが大きな間違いってか、誤解なんだ。
文明の発達度合いの先進性が、音楽にも表わされた現象である、という西洋優生学主義を洗脳すべく、徹底的に7音階を刷り込みされているんだよな。
それが我が国の🎹教育だ。
ショパン作曲練習曲集Op10-5「黒鍵」。
これを黒鍵を巧みに操るためのメソッド、としか見ないのは凄く間違っている。
ショパンに先立ってベートーベンは、小遣い稼ぎのために、相当量の民謡の🎹伴奏付き編曲をやっている。
民謡だから7音のフル使いではない曲が、かなり有ったはず。
そしてシューマン。彼のトレードマークモチーフ、
「ドーレーミーソーラーソーミード」
この、音階と分散和音との折衷的な音型こそ、その原型は紛れもなくペンタトニック即ち5音階だ。
黒鍵はペンタトニックの練習なんだよ。
なんでか?
装飾的即興演奏には、手軽な音型だからだ。
レコードのライナーノーツには
「黒鍵の使用だけによる『エキゾチズム』が」
とか、良く書かれているんだが、それは因果関係が逆。
エキゾチズムの手っ取り早い方法として、黒鍵を用いた、と見るべきなんだよ。
まだ当時は、チェルニーメソッドが幅を利かせていた。
いうまでもなくチェルニー、7音フルスケールの鬼だ。
あんだけ膨大な練習曲つくっておいて、只の1曲もペンタトニックの曲が無い。
これはチェルニーが、ペンタトニックの存在を「知らなかった」のではない。
5音より7音の方が高尚でしょ、というフォークロアへの蔑視の反映に他ならぬ。
ショパンもシューマンも面従腹背で、その差別意識に気付きながら忖度していたんだ。
それが時として黒鍵の練習曲や白鍵だけのマズルカを書く、隠されたモチベーションなんじゃないか。
だから音大ピアノ科に到達した者がジャズに転向するのは、ムズいっていうより、手遅れなんだ。
ペンタトニックに触れて来なかったんだから。
これは「手」の問題じゃない、断じて。
文化の問題だ。
西洋流の近代合理主義精神に基づく7音は、ペンタトニックよりも2つもノーテーションが多いんだから、優れてるのよ、っていう誤った優生思想を、膨大な7音階を弾かされ続けることで植え付けられて来た事を自覚し、そこからエスケープしなきゃならないんだ。
だから当の大作曲家たち、
ショパンも
シューマンも
リストも
チャイコフスキーも、
みんなフォークロアに根ざしているって点で、イコールBlues&Jazz
センスを、ちゃんと備えていた、と言い切って良い。
ソレが無いってか、喪失させられたのが、チェルニーメソッドで育てられてしまった🎹学習者たちだ。
チェルニーを捨てよ。
フルスケールを捨てよ。
そうしないと、一生ポピュラーのマインドを獲得出来ないんだよ。
え、何を大袈裟なって?
じゃ、一度でも、1曲でも、ペンタトニックの曲を弾けるか。
「(ドボルザークの)ユーモレスク」
あ、確かにそうだった!
因みにショパン、F Dur を選択した場合、ピアニズムの活かし具合から、極めてペンタトニック的な音型を用います。
♢練習曲Op10-8
♢前奏曲Op28-23
👆
この2曲のルーツが、ベートーベン🎹ソナタ№22第2楽章にあるのは確実です。
ベートーベンも、という事。
分散和音型が基本ですが、刺繍音の接着で、ジャージーなフレージングを形成しています。