1011時間 !!

 1011時間。これが小学校6年間の算数授業時数です。

 算数は国語に次いで時間数の多い教科です。

 新年度が始まったばかりですが、学校からもらって帰った時間割を見ると毎日1時間は必ず算数があります。

 

 なぜ学校で算数を学ぶ時間はそんなに多いのでしょう?

 

 国が定める小学校新学習指導要領(平成29年3月公示)には以下のように算数科の目標が述べられています。

 

・ 数量や図形などについての基礎的・基本的な概念や性質などを理解するとともに、日常の事象を数理的に処理する技能を身に付けるようにする。
・ 日常の事象を数理的に捉え見通しをもち筋道を立てて考察する力、基礎的・基本的な数量や図形の性 質などを見いだし統合的・発展的に考察する力、数学的な表現を用いて事象を簡潔・明瞭・的確に表したり目的に応じて柔軟に表したりする力を養う。
・ 数学的活動の楽しさや数学のよさに気付き、学習を振り返ってよりよく問題解決しようとする態度、算数で学んだことを生活や学習に活用しようとする態度を養う。

 


 「日常の事象」「生活や学習に活用」という言葉が出てくるように、私たちが日常生活の質を上げ、よりよく生きていくためには、算数や数学は不可欠なのです。

 例えば、私たちが生活の中で使う「数字」。1年生から1、2、3などの数字を学びます。この数字のもつ多くの意味の中に次のような2つの側面があります。

 

 ・数字は、正確な情報共有のために記号化されたもの

 

 ・数字は、未来への創造を導くもの

 

 数字をうまく使うと説得力が増します。例えば、「熱がある」と言うのと、「平熱は36℃だけども今38℃ある」と言うのとでは違います。 また、「うちは駅から遠い」と言うのと、「うちは駅から2km以上ある」と言うのとでは、相手にイメージさせる距離が異なるでしょう。数字は、異なる経験をもつ他者と情報を共有するのに大変有効なコミュニケーションツールなのです。

 さらに、数字を組み合わせる(足したり掛けたり、比で表したりする)力は、創造する力や推測する力にもつながります。通勤時間が1日に3時間の人がいたとします。起きている時間を18時間だとすると、1日3/18の時間、つまり1/6時間を通勤に費やしていることになります。このように分数で表してみると、「1日の6分の1もの時間をどのようにうまく使えばよいか」とか、「1日の6分の1を通勤に使うのは好ましいかどうか」などと思い付きます。
 最近はビジネスを自分で立ち上げようとする若い人が増えましたが、事業計画を作り、収支シミュレーションをすることで事業の将来を予測することができます。また、将来日本の人口がどうなるかとか、温暖化がどのくらい進むのかといった予測にも数字や数学は必須です。

 

 ハーバード大学の心理学者・ハワードガードナーは、私たち人間には8つの知性が備わっていると述べています。

 

 8つとは

「言語的知性」

「論理数学的知性」

「空間的知性」

「身体運動的知性」

「音楽的知性」

「対人的知性」

「内省的知性」

「博物学的知性」です。

 

 時間割で国語や算数が多いということは、小学校の学習においては「言語的知性」と「論理数学的知性」を使う場面がそれだけ多いということです。国語や算数が苦手な子にとっては窮屈さを感じる時間が多いかもしれませんが、本来それだけで知性が評価されるものではありません。他の知性もあわせて発揮することで自己実現していけばよいのです。

 

 話が少し逸れましたが、なぜ学校で国語や算数の時間が多いのかといえば、国語や算数で培う力が社会で生きていく上で「汎用性が高い」と考えられているからではないでしょうか。国語の汎用性はイメージしやすいですが、算数の汎用性はどこにあるのでしょう? 買い物の時に困らない程度の計算力さえつければ、それでいいのでしょうか。


 以前、授業でこんな算数の問題を出したことがあります。「30歳の時点で1000万円貯金しました。これを60歳まで5%で運用する(貯金が毎年5%ずつ増えていく)と貯金はいくらになりますか?」答えは4321万円でした。ここでもし「1000万円は無理でも半分の500万円ならいくらになるのかな?」とか、「だったら自分は○歳までに○円貯金して○%で運用することをめざそう」と考えることは未来を考えることにつながります。

 また別の例として、将来の夢を実現するために何かのスキルを身に付けたい人がいたとします。スキルにもよりますが、一般的には「1000時間」でそこそこのレベルに、「10000時間」でかなり上位のレベルにまで到達できると言われています(1万時間の法則と呼ばれ、経験則を数値化することで知恵の共有化を図ったものです)。そうすると、自分のめざすレベルに何年で到達したいかによって一日あたりの練習時間や学習時間を決めることもできます。

 私たちが社会の中でよりよく生きていくためには、数学的な感覚やスキルを身に付けることが不可欠です。先人の知恵を「数字」という形で共有し、自分や社会の未来を的確に予測して生活の質を上げていくのに算数や数学はとても役立ちます。小学校ではその基礎が身に付けられるように、多くの時間を費やして指導しているのです。


<参考・引用>
・小学校学習指導要領 文科省
・勝間和代 著

 「勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力」

 

・勝間和代サポートメール2015年3月23日~29日

 「数字感覚を手に入れる方法」 

 

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