岡山の小学校教育現場では5年位前から「丸ごと読み」が話題となり,今ではも当たり前のように教師間で「この教材,丸ごと読みで行く?それとも場面読みで行く?」といった会話が交わされています。

直観からの出発―読む力が育つ「丸ごと読み」の指導/田中 智生
¥1,995
Amazon.co.jp

 「丸ごと読み」は児童個々の直観から学びをスタートさせるので、読み手の側に立った読み方で、児童が活発に発言するようになります。仲間の発言をきっかけにまた自分の読みを深めていくという、そういった交流の楽しさも生まれ易くなります。単元構成として一般的になっているのが、単元の前半に1つの作品を皆で読み、後半はそれと同じ視点で各々が別々の作品を読んで紹介し合うというものです。これは読解力育成というより、「皆で読むと楽しいね」と感じさせ、読書生活につなげることを重視した展開です。

 この「丸ごと読み」への注目は、子ども達の読書生活を重視しているという意味で、学校教育へのフォトリーディング導入を後押しする背景の一つになると思います。

 ただ私は,国語科で「読解力を育成する」という観点でみると,「丸ごと読み」に偏った指導では厳しいと思っています。【丸ごとの読み・詳細の読み】の軸に【主観的な読み・客観的な読み】の軸を加え,4つの座標面を意識してバランスのとれた系統的指導を小学校6年間でしていく必要があると思っています。
 私も文学作品に「教師解釈の」正解が1つあってそこに到達させることを目的とした授業をすることには反対ですが,作品の構造やテーマはある程度「客観的に」読めなければならないと思います。その客観性の上に初めて主観があると思うからです。そこを取り違えると,作品の枝葉末節部分にしか反応できない子どもになってしまいます。
 小学校ではこれまで「詳細で」「主観的な」読み偏重の向きがありました。文学で言うと場面に細切れにして人物の心情を延々と個々の「想像で」語り合う授業です。そこに「客観的」な読みや「丸ごと」の読みを入れることで,より作品の本質に迫れたり作品を楽しめたりすることにつながっていくと思います。
 「丸ごと」の読みが脚光を浴びるのはよいことですが,小学校段階では,客観的に自力で読める力の育成も大切にしながら,バランスよく指導していきたいと思っています6年間の学びの系統の中で、教材の特性や児童の実態を踏まえながら、いかにバランスよく多様な読みの経験をさせるかが大切だと考えます。