2022年3月18日。
愛猫、稲姫(イナヒメ)が、18歳で虹の橋を渡りました。
記憶というものは儚くて。人間は忘れていくように作られた生き物らしいです。つらい事を乗り越えるために。
でもこの気持ちを、今の思いまで忘れたくはないので書き残すことにしました。
イナは私が大人になって、一人暮らしを始めてから、自分の責任だけで初めて飼った猫でした。
スーパーで「子猫貰ってください」のチラシを見て、どの子でももらってって!とポイっと投げるように渡された猫。
恐かったからか、イナだけ逃げず暴れず私の腕にずっと納まってた。
そのまま連れて帰って、最初だけ洗濯機の裏に隠れていたけど、30分もしないうちに寝転ぶ私の胸の上に乗って喉を鳴らした。
臆病で、大人しくて、優しい子。
人も同居猫も絶対に傷付けることなく、無駄に鳴かず、おっとりしたとても頭の良い子でした。
18歳はきっと猫にしたら大往生で、何ひとつ病気もしたことなく老衰死。最初から最後まで、一度も手を煩わせることなく逝ってしまった。
ご飯が食べれなくなり、歩けなくなり、水も飲まなくなって、最後は目もちゃんと開かなかった。
それでも、かすれてほとんど出ない声で、私の方を向き「ニャー」と口だけを動かす。
「大丈夫だよ」
「そばにいるよ」
「大好きだよ」
動かない足を必死に動かそうとして、最後まで私の近くに来ようとしてた。
動けなくなって
それから3日も頑張ってくれた。
先週コロナの濃厚接触者になってしまった私は、7日間の自宅待機でこれ以上仕事が休めなくて、最後の最後の日に仕事に行ってしまった。
仕事中に「トントン」って、背中を叩かれたんだよね。
誰もいないのに。
その時悟った。
(あ、逝っちゃった。最後に挨拶に来てくれたんだ…)
こういう不思議な事って本当にあるんだな、と思った。
仕事なんて休めばよかった。
18年も一緒に居たのに。
自分の子供より長く一緒に過ごしたのに。
最後すら看取ってあげれなくて、ごめん。
一人で逝かせてごめん。
こんな飼い主でごめんね。
家に帰って、私の布団の中で、朝と全く同じ姿勢で、
眠ったように亡くなってた。
とても安らかそうに見えたけど、それ故に死んでるように見えなくて。
何度も撫でて声をかけたけど
反応は無くて、体は冷たい。
「お疲れ様」
「頑張ったね」
「愛してるよ」
泣きながら一生懸命伝えたけれど。
イナ、つらくなかったかな?少しでも幸せだった?
死んだんじゃない。
生き切ったんだよね?
最後まで立派な子だった。
ありがとう。
イナと暮らせて、本当に幸せだったよ。