携帯電話大手が格安スマートフォン(スマホ)を相次ぎ発売する。
ソフトバンクは5日、今月中に売り出す新機種を発表した。
KDDI(au)グループも15日に発売する。
シェアを伸ばしている新規参入者に対抗する狙い。
だが、一皮むけば及び腰の姿勢が浮かび上がる。
自社の従来ユーザーからの切り替えが増えるのを恐れているためで、巧妙な対策で流出を防ごうと躍起だ。
ソフトバンクは米グーグルの中級モデル「アンドロイド・ワン」を格安ブランド「ワイモバイル」で発売する。
通信・通話料金は月1980円からで同端末を分割払いで購入すると合計2500~2600円になる見通し。
一般的な大手の最低料金の半分程度ですむ。
3月に発売した米アップルの旧型「iPhone」に続く主力商品。
5日に都内で開いた記者会見に出席した寺尾洋幸執行役員は「他の大手2社からの乗り換え需要をつかまえたい」と述べた。
KDDIグループのUQコミュニケーションズも15日、旧型iPhoneを発売する。
通信・通話料金が月1980円からのプランと組み合わせる。
NTTドコモは直接参入はせず格安事業者に回線を卸売りしている。
大手が格安スマホに力を入れ始めた背景には新興勢の躍進がある。
格安スマホの契約回線は3年で7倍に増え、移動系通信全体に占める比率は7.8%。
総務省が携帯大手にスマホの「実質0円」販売を禁じた4月以降、格安スマホの市場拡大に弾みがついた。
楽天やイオンをはじめ事業者数は560を超え、5日には日本郵便が販売への参入を発表した。
ただ、大手には格安スマホを拡販しにくい事情もある。
月5000円以上を払ってきた自社の顧客を自ら切り崩しかねないためだ。
大手の従来価格帯のスマホは最新機種をそろえ、オプションも豊富。
とはいえ使用できるデータ量の上限や通話品質は格安スマホとほぼ同等だ。
実用上あまり変わらないなら「安い方を選ぶ」という消費者は多い。
このため大手は自社ユーザーの流出を防ぐ工夫を凝らしている。
通信・通話料金が月1980円からのワイモバイル。
ソフトバンクから乗り換えた人は、これより月1000円高くなる。
契約の2年目からさらに月1000円上がる。
結局、月3980円になり、グーグル端末を分割で買うと5000円に近づく。
寺尾執行役員は「ソフトバンクの契約者をワイモバイルで積極的に取ることはしていない」と認める。
KDDI系の料金も同様の仕組みだ。
「料金体系がわかりにくい」(携帯のコンサルタント)との指摘もあり、消費者に親切とは言い難い。
たとえ自社ユーザーからの乗り換えを防げても、他社の格安スマホへの顧客流出は防げない。
今やスマホ料金が家計を圧迫する家庭も目立つ。
安いスマホへのシフトは加速する可能性が高い。
ソフトバンクが携帯事業に参入して10年。
当初は価格破壊で携帯の普及に貢献したが、その後は価格面の挑戦は停滞。
大手3社の料金は横並びで高止まりが続いた。
今、大手の足元は格安スマホに揺さぶられている。
稼ぎすぎともいわれる大手の高収益モデルは転機を迎えた。