産業/グループ化補助金の今(上)再建着手見えず焦り
土地のかさ上げが進む東松島市大曲浜地区。
基盤整備が完了しなければ復旧できない事業者は少なくない
東日本大震災から3年が過ぎ、
東北の被災地は復旧から本格復興への転換期を迎えようとしている。
復興まちづくりの推進に加え、
暮らしの再建や産業、コミュニティーの再生など、足元に残された課題は少なくない。
災禍を乗り越え、住民や企業、地域社会はあすへの一歩を踏み出せているのか。
現状を追った。(震災取材班)
<未消化700億円>
事業再生の号砲が鳴らない。スタートラインで立ちすくむだけの日々がもどかしい。
「早く再建したいのだが…」。
宮城県石巻市の運送業、一力運輸の加藤雅章専務(47)が力なくつぶやく。
大型貨物車の拠点として使っていた宮城県東松島市の営業所は津波で流失した。
2012年7月にグループ化補助金の交付決定を受けたものの、
2年近くたった今も再建はかなっていない。
予定地の大曲浜地区では工業用地のかさ上げ工事が進む。工期はことし9月まで。
建屋などの建設に着手できる時期は見通せない。
加藤専務は「年内は土地の確保で終わりだろう」と諦め顔だ。
地盤沈下などに伴い、
沿岸部では土地の改良が必要となるケースが多い。
上下水道、道路などのインフラも求められる。
これらの公共工事が終わらない限り、グループ化補助金の出番はない。
宮城県の場合、期限内に補助金を消化できない業者は全体の3分の1近くに上る。
その額約700億円。執行の繰り越しや再交付の手続きが取られ、
巨額の公金が被災地にむなしく積み上がる。
<「廃業選択も」>
再開の遅れは、地域経済縮小の恐れもはらむ。
岩手県大船渡市の仮設商店街「おおふなと夢商店街」を中心としたグループは、
4割に当たる約20事業者がかさ上げ工事中の商業地に移る。
本格再建は、遅ければ16年3月にずれ込む見通し。
補助金採択から実に3年以上の年月を要することになる。
同商店街協同組合の伊東修理事長(61)は「既に復興特需は落ち着きつつある。
いざ再建というときに、廃業を選ぶメンバーも出てくるだろう」と推測する。
事業者にとって、被災地を中心とした工事費の高騰も懸念材料だ。
補助金は申請時の事業費に基づいて算定されているため、
実際に掛かった経費との差額は自己資金で埋めるしかない。
<労務単価上昇>
一般財団法人建設物価調査会などによると、公共工事では、
作業員の労務単価が震災前に比べ被災3県で平均4割上昇している。
生コンクリート価格は仙台市で7割程度アップした。
震災前からの債務を抱える事業者も多く、復旧費の負担増が重くのしかかる。
石巻市でみそ、しょうゆの製造販売を手掛ける山形屋商店の山形政大専務(42)は「民間の取引でも、時がたつにつれて資材、労務費が上がる印象だ」と頭を抱える。
同社は11年12月に補助金交付が決まったが、完全復旧には至っていない。
「売上高は震災前の6割程度。
再建費が増せば、規模縮小も考えなければならない」。
山形専務は疲れた表情を見せた。
[グループ化補助金]被災した中小企業グループに対し、
国と県が施設や設備の復旧費の最大75%を補助する制度。
ことし4月まで10回の募集があり、
岩手で1244業者(補助額782億円)、
宮城3721業者(2318億円)、
福島3131業者(921億円)が採択された。
5月16日まで11回目となる公募が行われている。