ロイターのコラム:BRICsはもう「死語」なのか | 人生の水先案内人

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[4日 ロイター] -  

筆者はロイターのコラムニストです。

ジェームズ・サフト

長年抱いてきた信念がとっくに通用しなくなっていたのに、顔面に平手打ちをくらうまでそれに気付かないというのはよくある。


ロシア によるウクライナへの軍事措置は、いわゆる投資概念としてのBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国 )がもはや通用しなくなっていたことを気付かせる「平手打ち」と言える。



ウクライナ南部クリミア半島へのロシア の軍事介入は、歴史はまだ終わっておらず、グローバリゼーションは必然的ではなく、こうした過程によって、投資家はいとも簡単に打撃を受けるということを見せつけた。



市場の観点から言うと、今のところダメージはロシア の軍事介入から放射状に広がっており、特にロシアの資産が大きな打撃を被っている。


それは当然のことだが、もしこれをロシア固有の地政学的問題と捉えるなら、大局を見逃すことになるだろう。



BRICsへの熱狂は、今となっては非常に疑問視されている2つの概念の上に成り立っていた。



第一に、新興国のファンダメンタルズが優れていると考えられていたことだ。


こうした国々は債務水準が比較的低く、人口増加や経済成長への展望、急拡大する中流層といった、人口動態の観点から見て未来があるとみなされていた。



しかしこれは、ロシア にはまったく当てはまらない。また、人口動態は明らかに、中国 に投資する大きな理由にはならない。


中国は人口動態的な転換点に差し掛かっているが、それはわれわれが10年前に確信していたよりもずっと早く訪れようとしている。


そして、富の増加と中流層の拡大は結構なことだが、こうしたことが投資家に一段の利益をもたらすという証拠は極めて少ないのが現状だ。



<双方向のリスクと衝突>


第二に、いよいよ全くの妄想に突入することになるが、グローバリゼーションは着実に進み続け、常に資本に有利に働くというダボス会議的思考だ。


BRICsや新興市場への投資は、「皆」が発展と成長を最大限に成し遂げたいと望み、「皆」が国際的なルールによって投資家に公平な機会だけでなく、ゲームを提供するという考えを当然視する世界観によって支えられていた。



ロシア がクリミア半島に軍事介入したようなことが起こる世界では、海外への投資には慎重にならざるを得ない。


警戒心の強い資本を呼び込むためには、高いリターンを必要とする。


ロシアはことさら大きな打撃を受けるだろうが、他の新興市場にも同じことが起きる可能性は十分ある。



これは何も、ロシア の軍事介入そのものだけで起きる訳ではなく、各国から聞こえてくる非常に臆病な反応を通じて起きるものだ。


天然ガスの約4割をロシアから輸入するドイツは、エネルギー分野に対する制裁を阻止したいように見受けられる。


また、英国はロシア指導者らの資産凍結を含め、ロンドンの金融街を脅かすようなことには慎重な姿勢を見せている。



ここで明確に言うなら、ロシア は特に投資には不向きであり、株式市場は3日に10%超下落する前でさえ下げ基調にあった。



ほかにも最近、新興市場とグローバルな投資の関係が試された事例がある。


中国 人民銀行の監督下で、緩やかながらも着実に上昇してきた人民元 は、過去数年の間、グローバル市場で最も確実な投資先の1つとみられていた。



しかし2週間前、予想外に人民元 は下落し始め、投機筋にひどい打撃を与えた。


中国 が単純に双方向リスクを市場に導入したがっていると考える理由はある。あるいは、人民元の緩やかな上昇に「ただ乗り」しようとする投機筋に不利な条件をつくり出そうとしたと考えることもできる。



中国 は、多くの影響力を持つ支配層に痛みを伴うであろうデレバレッジ(負債の圧縮)を進めつつ、必要とされる消費主導型経済への移行において、かなりの困難に直面している。



人民元 安は投機資金の流入は抑えるかもしれないが、同時にそれは近隣窮乏化政策につながり、国際的には非常に危険だと言えるだろう。

言うまでもなく、ロシア のウクライナ戦略のように、それは外国資本フローにも好都合とは言えない。


要するに、ロシア が浮き彫りにしたように、グローバリゼーションは可逆的なのだ。



*筆者はロイターのコラムニストです。

本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。