[ワシントン/東京 30日 ロイター]
米連邦準備理事会(FRB)は29日、連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で、2月から債券購入額を月額で100億ドル減らして、計650億ドルにすると発表した。
決定は市場の予想通り。新興国市場の混乱が懸念されるなかでも、量的緩和縮小の継続を決めた格好だ。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●イエレン新体制のフォワードガイダンスに注目
<RBS証券 チーフ債券ストラテジスト 福永顕人氏>
12月から量的緩和縮小を開始しているので、今回のFOMCで債券買い入れをさらに月額100億ドル縮小したことは想定通りだ。
新興国経済の先行き不透明感が強まっているが、これが米国経済に悪影響を与えることが見通せない限りにおいては、米連邦準備理事会(FRB)の政策判断の中では、重視する必要がないとみるのではないか。
次回からイエレン新体制になるので、フォワードガイダンスの内容でなんらかの調整があるかというところが注目だ。
新興国の通貨安に関しては、基本的にはグローバルな先進国の金融緩和を受けて、新興国に資金がしみ出してきたという面がある。その巻き戻しは先進国側の正常化にともなって、起こらざるをえないと受け止めている。
日米債券の見通しについては、株式相場が昨年末ごろに堅調だった反動が出ている。株安を受けて債券に買いが入る構図だ。
一方で、今週、もしくは来週ぐらいでリスク回避的な動きがいったん収まる可能性も念頭に置く必要がありそうだ。
●不安定なマーケット続きやすい
<三井住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏>
新興国不安が再燃しているが、心理的なものだろう。
米国がテーパリング(量的緩和縮小)に踏み切っているからという側面もゼロではないが、お金を引いているわけではなく、緩和は続いている。
クライシスがグローバルに起こらない限りは、予定通り毎回100億ドルずつの縮小を続けていくとみている。
足元では経常赤字国、対外債務の多い国が狙い撃ちされている。こうした動きがグローバルに広がってクライシスになるとは思わないが、世界経済 に対する自信を取り戻すまでは、不安定なマーケットが続きそうだ。
2月に入ってくると、米政府債務上限問題もまた出てくる。リスクを取りたいという心理は働きづらい。
ドル/円は下値は100円程度、上値は少し前までは106円程度をみていたが、だんだん抑えられてきている。
強めの米雇用統計が出れば105円もあり得るだろうが、この1か月くらいをみると100円から105円といったところではないか。
●FRBへの淡い期待が裏切られる
<岡三証券 シニアストラテジスト 大場敬史氏>
市場の一部では、米連邦準備理事会(FRB)が新興国不安を考慮して、債券購入額の減額規模を100億ドル以下にするのではないかとの淡い期待があった。
それほど期待値が高かったわけではないが、予想通りの緩和縮小となったことで市場が失望した形となった。
大きな懸念として認識されたのは、新興国通貨が防衛できていないことだ。
南アフリカの利上げは効果が見られず、トルコリラは大幅な利上げを発表したが、通貨上昇を維持できなかった。
切り札を切ったにもかかわらず通貨を防衛するに至らなかったことで、市場には「打つ手なし」のムードが広がった。
日本株は前日に大きく上昇した反動も加わって売りが先行している。
●新興国からのマネー引き揚げに不安
<SBI証券 シニアマーケットアナリスト 藤本誠之氏>
米連邦準備理事会(FRB)による債券購入額の減額規模は100億ドルと予想通りの内容で、大きなサプライズ要因はなかったものの、新興国不安や一部のさえない米企業決算を嫌気した形で米国債や円が買われた。
インドとトルコに続いて南アフリカも利上げを実施し、新興国の間では通貨防衛の動きが出ているが、大幅な利上げにもかかわらずトルコリラなどが上げを維持できなかったことで懸念が広がった。
FRBの金融政策に対する批判が高まったわけではなく、緩和縮小によって新興国を支えていた緩和マネーが引き揚げられるという思惑がネガティブに働いた。
●予想通り、年末以降のマネー逆流に警戒
<SMBC日興証券・金融財政アナリスト 末澤豪謙氏>
米連邦公開市場委員会(FOMC)で債券購入額の100億ドル縮小を決めたことは予想通り。
緩和縮小(テーパリング)を決定した昨年12月以降、毎回100億ドルの債券購入額を減らして出口戦略に向かうというシナリオに沿った動きだ。
新興国問題がふらついているが、現時点で大きな懸念を持っていない。ストックベースでFRBの債券購入額が増え続けているためだ。
現在は思惑先行の印象が強い。しかし、ストックベースの残高が減少に転じる年末以降は、新興国からのマネー逆流が本格化する可能性がある。
新興国経済はまさに正念場を迎えるだろう。
前日の米国市場は円高・株安・債券高。きょうの円債市場は買われて取引が始まるだろう。
2月─3月にかけては東京都知事選、米債務上限問題の議論など日米でイベントが目白押しで、株高トレンドが小休止になりやすい。
●緩和縮小停止の壁高い、新興国不安重要視せず
<LPLフィナンシャルの投資ストラテジスト兼エコノミスト、ジョン・カナリ氏>
米連邦準備理事会(FRB)が緩和縮小の停止ボタンを押すにはかなり高いハードルがある。
最近の市場の混乱も、このハードルを越えることはなかった。
米連邦公開市場委員会(FOMC)声明には、新興国に関する言及はほぼ全くないため、流動性などの面で新興国の状況がかなり悪化しなければ、FRBは緩和縮小を中断することはない。
絆創膏を剥がして状況を見守るのが最善との判断に至ったのだろう。
市場が懸念したのは、FRBが新興国市場の状況には注意を払わず緩和縮小を継続しているのではないかという点だ。
もちろんこれは誤りで、3週間後に公表される議事録では、FRBが新興国の状況を注視していたことが明らかになるだろう。
ただFRBにとり、声明文で言及する必要もないほど重要度としては低かった。
そのため、市場はFRBは状況を理解しておらず、FRBが考えているよりも大きな問題だと懸念した可能性がある。
●失業率6.5%はもはや基準ではない
<ウエルズ・ファーゴ・プライベート・バンクの首席投資責任者、ジョン・リンチ氏>
FOMCの決定を受け、流動性低下をめぐる懸念から株が売られる反面、債券相場はあたかも追加買い入れが実施されるかのような上昇ぶりだ。
市場では混乱や懸念が入り混じっているもようだ。
FOMC声明からは、FRBがこうした懸念を和らげることに尽力しようとしている様子がうかがえる。
われわれはFRBが債券購入額を新たに月額100億ドル縮小することを見込んでいた。
それでも650億ドル(の債券購入)は極めて大きな額だ。
FRBは経済成長や消費に関し率直な見解を示し、金利が長期間現水準にとどまることも明確にした。
利上げの目安となる失業率6.5%はもはや数値基準ではないようにみえる。
●3月もさらに100億ドル縮小へ
<ルネサンス・マクロリサーチ(ニューヨーク)の米経済部長、ニール・ドゥッタ氏>
今回の米連邦公開市場委員会(FOMC)声明にはまったく驚きがなかった。
今後、米連邦準備理事会(FRB)は次回3月のFOMC会合までの期間、新興国市場の動向が米経済に及ぼす影響に目を光らせていくことになるだろう。
新興国市場の金融状況には一部ひっ迫の動きも見られるものの、それによってFRBがずっと不安に陥ることはない見通しで、実際に足元でもFRBはこの問題をほぼ静観している状態だ。
したがって金融市場によほどの混乱が起きないかぎり、3月のFOMCではさらに月額100億ドルの追加縮小が行われると予想する。
●QEでバブル発生の恐れ、縮小継続で将来のリスク低減
<ING米国インベストメント・マネジメントの首席市場ストラテジスト、ダグ・コテ氏>
米連邦準備理事会(FRB)が市場の乱高下を理由に(緩和縮小プロセスに)干渉していたら、危険な前例を作るところだった。
量的緩和(QE)はバブル発生の恐れを生み出していた。
緩和縮小を継続することで、FRBは将来的なリスクを縮小している。
将来的にバブルが崩壊するよりも、現時点で調整が入る方が望ましい。
FRBは手を引くことで、市場にバトンを返そうとしている。
市場の正常化は歓迎すべきことだ。
●米国が改善している限り緩和縮小継続へ
<カトラー・インベストメント・カウンセルの債券ディレクター、ハビエル・アーピ氏>
トルコやアルゼンチンなどが通貨急落の危機に直面しているものの、少なくとも米国での状況が安定、もしくは改善している限り、FRBは緩和縮小を継続していくと考える。
●年内にQE終了させるとのFRBの決意継続
<ウエストウッド・キャピタルのマネジング・パートナー、ダニエル・アルパート氏>
米連邦準備理事会(FRB)のこの日の決定は、2014年中に量的緩和第3弾(QE3)を終わらせるとのFRBの強い意志が継続していることを示している。
QE3はここしばらくは実体経済の大きな支援にはなっていないうえに、金融経済のプライシングが歪められ、恩恵はほんの一握りのトレーダーのみが享受する状態になっている。
QE3の賞味期限はもう切れている。
世界的に経済成長が停滞しているものの、FRBができるだけ速やかにQE3を終了させることは適切だ。
●最近の弱い統計でも景気見通し変わらず
<BNYメロンの首席通貨ストラテジスト、マイケル・ウールフォーク氏>
米連邦準備理事会(FRB)が今回の連邦公開市場委員会(FOMC)で追加緩和縮小を見送る可能性がわずかながらあった。
だが声明文からは、(12月の雇用統計で)非農業部門雇用者数の伸びが大幅に鈍化したことについて懸念していないことがうかがえる。
消費動向も、昨年終盤から1月に入っても続いている政策の不透明性による影響を引き続き受けていない。
市場にとっては、米景気見通しがこのところの弱い経済指標による打撃を受けていないと安心できる。