12月5日(ブルームバーグ):
「人生は予測不能。私はこれを信条にしている」。
ジョシュア・シャピロ氏はこうも語る。
「多くの思いがけないことが人生を変える」。
調査会社マリア・フィオリニ・ラミレスの米国担当チーフエコノミストのシャピロ氏(54)は、タフツ大学4年生の時に感謝祭でニューヨークの実家に帰省しなければ、自分のキャリアは違ったものになっていたかもしれないと話す。
当時、実家の近所の知り合いがシャピロ氏に、米J・ヘンリー・シュローダーの資産運用部門の冬期インターンシップを勧めた。
経済学専攻だったが、それまで司法の道など幾つか進路を検討していた同氏は、このインターンシップをきっかけに経済学に傾倒、1980年の卒業と同時に経済調査アシスタントとして同社に就職した。
ブルームバーグ・マーケッツ誌1月号が伝えた。
以来30年。
ブルームバーグ・マーケッツの年次グローバルエコノミスト・ランキングで、シャピロ氏は9月末まで2年間を対象にした米経済予測分野でトップのスコアを獲得した。
シャピロ氏が現在のキャリアを歩み始めた80年代前半、米経済は低成長と高失業率 という現在と同じ状況に苦しんでいた。
シャピロ氏は2年前に、今回の回復ペースは遅いと予想したが、他のエコノミストはそう予測しなかった。
同氏と勤務先の調査会社は、鈍い成長と比較的高水準の失業率が2013年末まで続くことを示唆するデータに言及し、エコノミストらの中でも景気回復により悲観的な立場を取る。
同氏は来年の米成長率が約1.5%にとどまると予想する。
財政面の足かせ
政策金利をほぼゼロに据え置く米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策が経済成長に与える短期的影響は限定的だとシャピロ氏は指摘。
さらに1兆ドル(約82兆円)の米財政赤字が将来の景気拡大の大きな重しになると判断している。
13年について悲観的なのは、JPモルガン・チェースのチーフエコノミスト、ブルース・カスマン氏も同じだ。同行はブルームバーグ・マーケッツの世界経済予測
企業ランキングで首位。
38カ国の詳細な経済予測をまとめるチームを率いるカスマン氏は
「景気は底入れしつつある。
年明け後に世界経済の軌道は緩やかに上向くだろうが、この『緩やか』という点が重要だと考える」と分析。
さらにこう予測する。
「金融緩和による政策支援は極めて限定的になりつつあり、財政面では引き続き大きな障害に直面する。
事実、米国の足かせは深刻化しつつある」。
カスマン氏(56)はニューヨーク州立大学ビンガムトン校で経済学学位を取得後、イスラエル財務省で経済予測の実務を学んだ。
コロンビア大学で経済学博士号を取得した後、ニューヨーク連銀に7年間、
モルガン・スタンレーに1年間それぞれ勤務。
JPモルガンには18年間在籍している。
債務危機は緩和か
同氏は13年の世界経済成長率を3%と予測。
欧州では、財政難に陥っているユーロ圏諸国の国債を購入する欧州中央銀行(ECB)の方針が効果を発揮し、債務危機は緩和されるとみる。
米国については、成長に勢いがない状態が続くとしている。
このほか、中国は13年の世界経済成長に寄与する可能性があると予想した上で、中国景気は回復するだろうが、構造改革を必要とする状況が10年続いた2桁成長の再現を妨げるとみる。
「タイトな労働市場が何年も続いていることで、世界における中国の競争力の位置に変化が見られる。
中国政府は状況を大きくてこ入れしようせず、また信用市場と住宅市場の管理で真の問題を抱えていると思う」と指摘した。
ブルームバーグ・マーケッツのランキングは、ユーロ圏と11カ国を調査対象とするエコノミスト約400人の予測を基にまとめた。
米国の番付は9月末までの2年間についてエコノミスト71人の予測を検証、国内総生産(GDP)、失業率、消費者物価指数、生産者物価指数、住宅販売、鉱工業生産、個人消費など13分野における経済予測の正確性を測った。
ユーロ圏はGDPやインフレ率、失業率、消費者信頼感、鉱工業生産を含む9分野が対象。
国・地域別番付
経済予測の企業・銀行・調査会社番付では、米国のほか4カ国以上の予想をまとめている機関をランキングの対象とした。
JPモルガンの経済チームは米経済指標を分析した71チーム中13位。
ブラジルの予測では2位、
日本については3位、
カナダでは6位となっている。
ユーロ圏のエコノミスト番付で1位となったのは、2年連続でデカバンクのアンドレアス・ショイアレ、ペーター・レオンハルト両氏。
中国についての番付ではゴールドマン・サックス・グループの宋宇氏。
カナダはCIBCのエーブリー・シェンフェルド氏。
日本については、第一生命経済研究所首席エコノミストの熊野英生氏がトップだった。
ショイアレ氏(47)はユーロ圏の景気が13年に停滞すると予測。
欧州で来年注目すべき点は、銀行システムに関するユーロ圏新規則の総仕上げなどの構造改革だと言う。
さらに、「イタリアを注視している」とし、反緊縮派の政党が来年の総選挙でかなりの支持を集め、債務や財政赤字削減に向けたユーロ諸国の合意を損うことを懸念している。
ワイルドカード
一方、カスマン氏は米欧、中国以外では、インドで問題が発生しかねないとみている。
「インドはわれわれを不安にさせる場所の一つだ」と語り、インド政府は国内外からの投資を支援しておらず、またそれによって支えられてもいないとして、
「ワイルドカード(不確実要素)」とみなしている。
ゴールドマンの宋氏は、中国の成長促進には一人っ子政策の緩和を含め、政府主導の社会経済的な改革が必要だと分析する。
同政策が続けば、一人っ子が両親の老後の世話を担うことでゆくゆくは社会構造に打撃を与えかねないとみる。
中国東北部育ちの宋氏は、鄧小平体制下で繁栄していく国家を目の当たりにし、経済学に魅せられた。
UBSセキュリティーズのチーフエコノミスト、モーリー・ハリス氏は昨年の米経済予測ランキングでトップだった。
同氏は、就職をあきらめていた労働者が戻ってくることで、失業率に上昇圧力がかかると分析。
ただ同氏率いるチームは、米国は労働市場の着実な改善を示し、13年末の失業率は7.5%になると11月時点で予想している。同チームは今年、失業率予測で首位。
シャピロ氏は、労働市場の状況改善に加え、財政赤字 の削減が米経済に最大の利益をもたらし得ると指摘。
「これは経済という体にできた腫瘍で、今なら医者は患者を死なせることなく腫瘍を治療できる。
先送りすればするほど、そのシナリオの見込みは低くなる。腫瘍がなければ、他の全ての病気もはるかにうまく治療できるだろう」と語った。
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更新日時: 2012/12/05 08:00 JST