10月16日(ブルームバーグ):
ソフトバンク の孫正義社長は日本の政策担当者に
明瞭なメッセージを送った。
あなた方が日本経済を再生させるのを、
もう待ってはいられないと。
米携帯電話3位のスプリント・ネクステル の株式70%を201億ドル(約1兆5800億円)で取得するソフトバンクの決断は、それを示すものだ。
投資家は今回の買収が同社にとって吉と出るか凶と出るかと頭を悩ませている。
外国企業が米電話市場に参入してあまりもうかった例がないからだ。
しかし私たちはもっと大事な点を見落としている。
それは、日本で2番目の富豪が少なくとも部分的に、高齢化が進み人口が減少する日本に背を向けて成長機会のある海外市場に目を転じつつあるということだ。
問題は円高にある。
日本は先週またしても、過大評価された通貨が経済を弱めているということに主要7カ国(G7)を同意させることができなかった。
ここ3年で5人目の財務相に就任した城島光力氏は前任者らと同様に、円高是正を第一の仕事と位置付けている。
しかし、ドルとユーロのファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)が円よりも悪い状態で、円安を実現するのは難しい。
現実を見ようとしない財務省の姿勢に、孫氏としては海外に活路を見つけるよりほかに選択肢がない。
手元資金が潤沢な日本企業にとって、円高には外国企業の買収を割安にするという利点がある。
ファーストリテイリングやキリンホールディングス、ローソン、楽天も、デフレに加え人口動向が不利な日本から、海外の高成長市場へと向かいつつある。
定説に挑戦
孫氏はこれまでにも中国の電子商取引運営会社アリババ・グループ・ホールディングスやヤフー・ジャパンへの投資で優れたギャンブラーの才能を発揮した。
スプリント買収もうまくいくかどうかはまだ誰にも分からないが、今回の賭けにはもう一つ、別のプラス側面がある。
日本株式会社を沈没させる「ガラパゴス症候群」を何とかすることだ。
日本の携帯電話メーカーは、チャールズ・ダーウィンがガラパゴス諸島で発見したような、その土地にしか適応できない固有種だ。
各社の製品は高度に進化を遂げ、他の地域にあるどの製品とも異なる。
しかし、島の外でも力強く生き抜けるかというと疑問だ。
孫氏のスプリント買収は絶好のタイミングでこれを試すことになるだろう。
円高は常に悪だという日本の思い込みにも風穴を開けるかもしれない。
(ウィリアム・ペセック 氏はブルームバーグ・ビューの
コラムニストです。
このコラムの内容は同氏自身の見解です)
原題:Strong Yen Threatens Japan’s ‘Galapagos Effect’(抜粋)
記事に関する記者への問い合わせ先:
東証 Willie Pesek wpesek@bloomberg.net
記事についてのエディターへの問い合わせ先:
Willie Pesek wpesek@bloomberg.net
更新日時: 2012/10/16 15:32 JST