【Monday i.】化学大手 構造改革の波 | 人生の水先案内人

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2012.10.8

 ■長引く中国減速に原料高騰直撃

ミチヒロ企画の情報発信ブログ

 

化学大手が描く業績回復シナリオに不透明感が強まっている。


石油化学製品の需給に大きな影響を与える中国の景気減速が続くほか、石化製品の原料となる国内のナフサ(粗製ガソリン)価格が原油に引きずられる形で上昇。


各社とも合成樹脂などの値上げを打ち出したが、内需低迷や円高で割安な輸入品の流入が増えている中では値上げ交渉も容易ではない。


中東や中国などでの設備増強もあって競争力が低下する中、業績悪化が続けばさらなる設備削減、業界再編に突き進む可能性もある。

 

◆コスト削減の限界

 「中国が相当強くシュリンク(縮小)している」

 石油化学工業協会の小林喜光会長(三菱ケミカルホールディングス社長)は中国の景気低迷の長期化に強い危機感を示す。

 

中国の景気低迷や円高を背景に、化学大手の業績は軒並み悪化。


大手6社の2012年4~6月期連結決算は、三菱ケミカルホールディングス(HD)と三井化学、東ソーの3社が最終赤字に落ち込んだ。


石化製品の市況回復の遅れなどから、三菱ケミカルHD、旭化成、住友化学、東ソーの4社が12年上期の業績予想を下方修正した。

 

「中国政府の重点分野の支援本格化や公共投資拡大などで、石化需要は年後半にかけての緩やかな持ち直しを期待する」(小林会長)向きもあったが、中国の景気好転の兆しはみえてこない。


「アジアの石化製品市況の回復は来年初めごろまでずれ込むのでは」(アナリスト)との見方が強い。

 

そんな中、エチレンの原料となるナフサ価格が高騰。住化によると、国産ナフサ価格は7~9月期予想の1キロリットル当たり4万9000円から、足元では5万7000円に上昇。


今後さらに上がる可能性もあるという。


同社は「コストダウン努力だけでは吸収できない」として、9日出荷分から液体容器などに使うポリエチレンと、雑貨に使うポリプロピレン樹脂をそれぞれ1キログラム当たり10円以上値上げすることを決めた。


他社も合成樹脂の値上げに走っている。

 

◆過剰設備縮小も

 ただ、ポリエチレンなどの合成樹脂の内需は減少傾向にあるうえ、円高を背景に中国などからの安価な輸入品が国内に浸透。


国内需要家との価格交渉も「すんなりと値上げに応じてもらえるかは分からない」(大手化学メーカー)のが現状。


業績の下振れ要因となりかねない。

 

短期的な業績は中国の景気動向などに左右されるが、中長期的には内需は減少傾向が続くうえ、頼みの中国も大幅な成長は期待できない。


大規模な設備増強を進める中東や中国勢などとの厳しい価格競争にさらされ、構造的問題ともいえる国内の過剰設備の縮小・集約などを進めなければ生き残りは難しい。

 

プラスチックやさまざまな合成繊維などの原料となるエチレン生産は6月を底に稼働率は上昇に転じたが、国内の今年上期の生産量は18年ぶりに300万トンを割り込み、今年1年間の生産量も前年(669万トン)を下回りそうな情勢。


海外勢の安価な製品に押されて内需が低迷し、コスト競争力の低下で輸出の減少が続く中、各社が生産態勢縮小に追い込まれているためだ。

 

エチレンは鉄鋼とともに日本の経済成長を支えた基礎原料の一つで、大規模コンビナートの中核を担う素材だけに、化学メーカーには「設備を所有することは一つの誇りといえる時代があった。


停止には抵抗がある」(化学大手)との意識が働いていたが、厳しさを増す経営環境がそれを許さなくなってきた。

                   ◇

 ■勝ち残りへ業界再編の声も強まる

 三菱化学は6月に鹿島コンビナート(茨城県神栖市)の2基ある設備のうち1基を2014年に停止する方針を決定。


三井化学も9月、千葉県市原市にあるエチレン生産設備を低稼働率でも採算性が向上するよう改造することを発表するなど、生産設備の再編に踏み出し始めた。

 

一方で、エチレンなどの汎用(はんよう)製品では海外製との価格競争が難しいと判断。“脱汎用品”の動きも加速する。

 

三井化学が昨年11月に、食品包装などに使われる高付加価値ポリマーの生産能力を年24万トンから30万トンに増強するなど、高度な技術力を武器に競争力の高い商品や高機能素材へのシフトが一段と鮮明になっている。

 

とはいえ、米国では新型天然ガスの「シェールガス」を原料とした石化設備の新設が相次いで打ち出されており、それらが市場に流れ込めば、日本勢はさらに窮地に追い込まれる。

 

“内憂外患”に苦しむ各社を取り巻く環境変化が想像以上のスピードで進む中、「業界再編なくして世界市場で勝ち残るのは無理」

(業界関係者)との声が強まっている。(橋本亮)