【ITビジネス最前線】ツイートミュージック、驚異の拡散力 | 人生の水先案内人

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フィリピン生まれの「ツイートミュージック」は、個人がソーシャルネットワークをどう使いこなすかという課題を解決する可能性を秘めている(同社ウェブサイトから)


2012.7.23 05:00

 ■メタ・ソーシャルネットワーク出現

 Twitmusic(ツイートミュージック)は、米500スタートアップスが最近投資先に選んだ企業の一つだ。


フィリピン生まれのテクノロジー企業としては、アメリカの投資ファンドから目立った投資を受けた初めてのケースかもしれない。


このプラットホームを使うことで、音楽アーティストたちは自分の楽曲をアップロードし、それを画期的な方法でツイッターのユーザーに売り込むことができる。

 

◆27万5000曲シェア

 ユーザーがtwitmusic.comのウェブサイトを訪れると、アーティストのリストとその楽曲が表示される。

Twitmusicでは、ユーザーは何をするにもツイッターのアカウントを使ってログインしなければならないが、ログインさえすれば、楽曲を無料で最後まで視聴することが可能だ。

 

楽曲のページで、たとえば“#nowplaying”というボタンをクリックすると、ページへのリンクとともに、今その歌を聴いているというツイートが裏で自動的に投稿される。


また、“Love”ボタンをクリックすれば、そのアーティストのツイッターアカウントを気に入ったという内容のツイートが送信される。


もちろん、歌に対してコメントをすればツイッターにもコメントが送信され、アーティストや楽曲の情報が即座にフォロワーに伝わる。

 

新進気鋭のアーティストにとっても、すでに人気を不動のものとするアーティストにとっても、Twitmusicは音楽をウイルスのように拡散させる原動力になる。


なぜなら、Twitmusicは1つのプラットホームで、共有のしやすさ、親しい友達からのおすすめ、そして流行といった、ソーシャルにおいて拡散を生み出すのに必要な要素を自動化して実現しているからだ。


50万ドル(約3900万円)以上の資金を調達し、チームがサンフランシスコに移転したいま、Twitmusicはこのプラットホームを、さらにメジャーな音楽レーベルやアーティストへと売り込み始めている。

 

すでにTwitmusicには約8000ものアーティストが楽曲を載せ、彼らの抱えるツイッターフォロワーは合計3000万に上る。これまでにシェアされた楽曲は27万5000曲。


サイトが閲覧されるユニークページビュー数は毎月20万を超える。

 

Twitmusicの可能性に世界が注目する一方で、興味深い問題も浮き彫りになりつつある。


アーティストから小規模の商店、大企業に至るまで、いまや誰もがソーシャルメディアを利用したマーケティングの価値を理解しているにもかかわらず、技術力を持たない人が簡単に使えるプラットホームがほとんどないという現状である。

 

動画共有サイトのユーチューブにビデオをアップロードして売り込むアーティストは数え切れないほどいるが、ユーチューブという土俵の上での勝ち方を詳しく知らずに、トップページに躍り出るアーティストはわずかだ。


何百万というアーティストがツイッターやフェイスブックのアカウントを持ってはいるが、フォロワーやいいね!が500すら超えない場合も多く、誰もが話題にするほどの拡散を達成することはできずにいる。

 

爆発的な人気を得るためには、継続したマーケティング戦略が必要になる。もちろん時にはコストが伴う。予算を多く割けない人においては、何が有効か見いだすために試行錯誤を繰り返す時期に、資金が底をついてしまうこともあるだろう。

 

◆ファン10倍上乗せ

 アーティストにも、商品やサービスを提供するブランドにも、達成可能な拡散レベルというのがある。


私が日本コロムビアにいたころ、どこのレーベルにも属さないアーティストでも、熱心に応援してくれるファンをだいたい200人から500人は獲得できることを知った。


応援というのは、サイトでアカウントを作成してアーティストに投票する作業をいとわないという意味である。


CDや楽曲を購入するというほどの高いハードルではないが、それでもハードルには変わりない。


 ソーシャルメディアにおける拡散性を考えると、ブランドは既存のファンの約10倍はソーシャル上のファンを獲得できるものだ。500人のファンがいれば、5000のフォロワーといいね!、ましてやすでに5000人のファンがいるならば、キャンペーン期間6カ月で5万のフォロワーといいね!を容易に達成できるだろう


。これが、最も基本的な拡散レベルだ。しかし、ブランドの多くがこれさえも達成することができない。

 

その理由は、ブランドには拡散を媒介するプラットホームをコントロールする力がないからだ。


ブランドがユーチューブやツイッター、フェイスブックを操作することはできない。実際には、ブランドといえども、他のユーザーへのアクセスを得ようとする点を除けば一般のユーザーと変わるところはない。


新しいファンを獲得する方法としてはかなり割高だが、プラットホームに巨額の広告費を支払いでもしない限り、ブランドもただのユーザーでしかない。

 

ブランドの運営するウェブサイトと比較してみるとよく分かる。ウェブサイトでは、何人のユーザーがどこからサイトを訪れ、どのページで何をして、どのサービスや楽曲、商品に興味を持ったかなど、すべてを詳細に分析することができる。


その情報に基づいて、ブランドは最適化を図り、ファンの行動を引き出すためにサイトに変更を加える。


ウェブサイトを通じて、ブランドは成長の鍵となるデータを得ているのだ。


 一方、データに基づかない戦略や行動はすべてが推測でしかあり得ない。


フェイスブックやツイッターでは、ブランドはこういった情報を得られず、もしなにかデータがあるとしても、それは一部の大広告主にしか提供されない。


ユーチューブからは少し情報を得られるが十分とはいえないし、アーティストの利用する音楽配信プラットホームの場合には、ユーザーについてのデータが得られることはほとんどない。

 

Twitmusicは、この問題の解決策になり得るメタ・ソーシャルネットワークの一つになるのではないかと思う。


これは、一般のソーシャルネットワークよりも一段上にあって、フェイスブックやツイッターといった一般のネットワークにおける人間関係、いわゆるソーシャルグラフをコントロールするためのソーシャルネットワークの一種である。


ユーザーはこれを使うことで、ネットワークの垣根を越えてコンテンツを共有し、横断的にネットワーク上でのコンテンツのパフォーマンスを監視し、その情報に基づいて最適化を図ることができる。


実際にコンテンツを共有する目的地たるソーシャルネットワーク自体が情報を提供することはなくても、メタ・ソーシャルネットワークを使えばデータが得られる仕組みだ。

 

◆マイナーを後押し

 ソーシャルメディア・マーケティングについては、小規模のブランドはもちろん、大企業でさえも次に何をすればよいか迷い、圧倒されているというのが現状だ。


Twitmusicはソーシャルメディア・マーケティングのプラットホームではないが、アーティストにとっては新しい「ウェブサイト」になり得る。そこから、

Twitmusicのデータとツールの助けを借りて、アーティストはユーザーを目的地へと誘導することができるのだ。

 

Twitmusicは、下位のソーシャルネットワークにおける拡散の火付け役となり、拡散性をはかり、そして最適化するメタ・ソーシャルネットワークである。


現状ではツイッターのみに対応するが、いずれはすべての主要ネットワークに対応するだろう。

 

通常のソーシャルネットワークは、大きくなればなるほど最大の提携先ブランドやパートナーに視線が集中してしまう。


そこで、メタ・ソーシャルネットワークがその他の小規模なブランドや新規事業主、アーティストらの頼れるプラットホームになっていくだろう。

 文:イジョビ・ヌウェア

 訳:堀まどか

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【プロフィル】Ejovi Nuwere

 イジョビ・ヌウェア ニューヨーク生まれ。


全米最大の無線LAN共有サービスFON創業者のひとり。


ビジネスウイーク誌により「25人のトップ起業家」に選出される。


2008年に日本でオンラインマーケティングに特化したランドラッシュグループ株式会社を設立し、現最高経営責任者(CEO)。Eラーニングのgatherat.comを手掛ける。