【任天堂の誤算(上)】想定外が続いた3DS ビジネスモデルの限界 | 人生の水先案内人

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初の赤字決算で、厳しい表情をみせる任天堂の岩田聡社長=4月26日、


大阪市中央区の大阪証券取引所(頼光和弘撮影)


2012.4.28 19:00

JR大阪駅前の家電量販店、ヨドバシカメラマルチメディア梅田(大阪市北区)前には、すでに開店前に約250人の列ができていた。


お目当ての商品を手に入れ、嬉々とした表情をみせる若者、親子連れ…。


ちょうど14カ月前、平成23年2月26日早朝のことだ。

 

「どんなふうに見えるのか楽しみ」

 

「これからは3D(3次元)の時代ですよ」

 

購入者は目を輝かせながらこう話し、裸眼で3D映像を楽しめる任天堂の携帯ゲーム機「ニンテンドー3DS」に未来を感じた。


任天堂の岩田聡社長は「3Dの製品がまとまった数で一気に普及する機会」と話すなど社内も、業界関係者も新たな“任天堂神話”の始まりを予感していた。

 

それから11カ月。


今年1月26日、任天堂は平成24年3月期の連結営業損益が初の赤字に転落する見通しを公表。


翌日には大阪証券取引所で任天堂株が一時9910円まで売り込まれ、約7年10カ月ぶりに1万円を割った。

 

26日に発表された営業赤字は373億円。なぜ、ここまで不振に陥ったのか? 


最大の元凶は、新たな成長の原動力と期待を寄せた3DSで「想定外が重なった」(証券アナリスト)ためだ。


岩田戦略は当たったが…“想定外”の事態に

 3DSは発売2日間で37万1326台を販売。好調な滑り出しだったが、東日本大震災で状況は一変。


自粛ムードで消費意欲が低下し、ソフトの発売延期も相次ぐなど需要は瞬く間に冷え込んだ。


この“想定外”が響き、100万台を突破したのは「ニンテンドーDS」の発売4週目に対し、3DSは13週目だった。


「3DSをDSの後継として普及させるためには思いきった手を講じなければならない」。昨年8月、岩田聡社長は強い口調でこう述べ


3DSの価格を2万5千円から1万5千円にするという異例の値下げに踏み切った。

 

値下げ効果と、昨年末に発売された「スーパーマリオ」シリーズや「モンスターハンター3(トライ)G」など人気ソフトの影響で、3DSの販売は急回復。


国内ゲーム機としては史上最速ペースで500万台を24年2月に突破した。

 

岩田戦略が当たったわけだが、これが業績を圧迫するという“想定外”の事態を生む。


3DSは1万円の値下げで、売っても赤字という逆ざや状態。好調な売れ行きが「1台あたり4千~5千円」(証券アナリスト)という逆ざやを積み重ね、赤字を拡大し始めた。


ハードで大きな利益を計上するのは難しい

 値下げ前の国内販売台数は約130万台に対し、値下げ後は400万台以上を販売。単純計算で国内だけで160~200億円の赤字が生じたことになる。

 

任天堂は、今年度上期にも「逆ざやは解消する」と説明しつつも「ハード(3DS本体)で大きな利益を計上するのは難しい。

ソフトで稼いでいかないといけない」(岩田社長)。

 

しかし、任天堂のソフト部門を牽引するのは昭和58年のファミリーコンピュータ登場以来、「スーパーマリオ」シリーズなど、以前からのヒット作が多い。


「一度ヒットしたシリーズがその後もヒットを続けるというのは奇跡のように難しい」(岩田社長)と強調するが

、ある関係者は「常に驚きがあるゲームでリードしてきた任天堂だが、旧態依然の感が否めなくなっている」と苦言を呈す。

 

全世界での販売台数が1700万台(3月末時点)に到達した3DS。


想定外の1年を乗り越え、ようやく安定軌道に乗ったものの、任天堂の経営戦略は依然として視界不良が続いている。

 

平成24年3月期で営業、最終損益とも初の赤字に転落した任天堂。


業界をリードしてきたゲーム王国に何が起きているのかを検証する。