[シカゴ/ニューヨーク 26日 ロイター]
米連邦準備理事会(FRB)は今回の連邦公開市場委員会(FOMC)で、量的緩和弾3弾(QE3)に一歩近づく姿勢を示した。
バーナンキ議長も記者会見で米国経済に関する暗い見通しを強調し、なかなか上向かない景気回復を支え、インフレ率が新たな設定した目標である2%を過度に下回る水準に落ち込むことを防ぐべく、今後再び債券買い入れに乗り出す可能性をほのめかした。
ジェフェリーズ・アンド・カンパニーのエコノミスト、トーマス・サイモンズ氏は「(FRBは)引き金に指をかけたようだ」と指摘している。
FRBは、早くとも2014年終盤までは金利の引き上げは考えにくいとの認識を表明。
これは従来の時間軸を1年以上先延ばしするもので、発表を受けて米国債利回りは低下した。
バーナンキ議長のコメントも、FRBがQE3に踏み切る可能性を高める形となった。
議長は記者会見で、インフレ率が予想以上に跳ね上がったり、米経済が急激に加速したりしない限り、FRBにとってさらなる景気支援策を検討することは理にかなっていると指摘。
「景気回復とインフレ正常化のペースが改善しない場合、さらなる刺激策を実施する方法について検討する必要があることは明らかだ」と語った。
JPモルガンの米国担当チーフエコノミスト、マイケル・フェロリ氏は
「バーナンキ議長が記者会見で伝えた要点は、FRBがさらなる量的緩和に乗り出すには、経済成長やインフレに関する大きな失望感が必要なわけではないということだ。
実際、議長の答えからは、追加的な量的緩和を実施する上で失望感が必要であるとの考えは明確に示されていない」とコメントした。
ただ同氏は、さらなる資産買い入れに対するハードルが低くなったとしても、それは実施されるとは予想していない。
コアインフレ率が1.7%の水準にあり、FRB当局者が今年の失業率は8%を上回る水準で推移するとの見方を示す中、多くのアナリストはバーナンキ議長のコメントについて、QE3がほとんど不可避であることを示すものと受け止めている。
<モーゲージ>
FRBはこのところ低迷が続く住宅市場に注目しているため、QE3を実施するとすれれば、住宅ローン金利のさらなる押し下げを目指し、モーゲージ債(MBS)を買い入れるとみられている。
一部のエコノミストは、FRBは6月末まで待ち、「ツイストオペ」の効果を見極めようとするとみている。
ツイストオペでは短期債を売却する一方で長期債を買い入れ、長期金利をさらに押し下げることを目指す。
バーナンキ議長は、政策運営スタンスに関するコミュニケーション改善の効果が現れるのを待つ可能性もある。
FRBは明確なインフレ目標を定めたほか、金利に関する政策当局者の予測値を初めて公表した。
イートン・バンスのポートフォリオマネジャー、エリック・スタイン氏は「きょうのコメントを見れば、(MBS債買い入れは)いつ行われてもおかしくない。
国債利回りがすでにかなり低水準にあり、住宅市場が主な問題の一つであることを考えれば、まずMBSの買い入れに焦点が当てられるだろう」との見方を示した。
<政治的落とし穴>
だが、大量のMBS買い入れに踏み切れば、政治的な反発も予想される。
FRBが2010年11月に米国債を対象とするQE2を発表した際、共和党議員の間から、インフレに火をつける恐れがあり、いずれFRBが金融引き締めに動きにくくなるとの批判が噴出。
バーナンキ議長は中央銀行の使命を逸脱しようとしているとの批判を浴びた。
JPLフィナンシャルの投資ストラテジスト兼エコノミスト、ジョン・カナリー氏は「経済的には、FRBはさらなる量的緩和に踏み切りたいのだろうが、彼らが政治的な反発に耐えられるかどうかは分からない」と指摘している。
大統領選に名乗りを上げている共和党の候補者らは、FRBやバーナンキ議長の対応を繰り返し批判している。
ギングリッチ元下院議長は、今回のFRBの発表について「オバマ・プログラム全体の失敗を示すサインだ」と指摘。
さらに、FRBは「将来のインフレ期待を生んでいる。
バーナンキ議長は将来にとって非常に悪い基盤を作っている」と批判した。
海外からも厳しい目が向けられている。FRBの量的緩和に対しては、これまでも各国から米国は意図的に米ドル相場を押し下げ、自分たちの輸出が悪影響を受けているとの批判が出されてきた。
一部のエコノミストは、FRBにとって政治的圧力は大き過ぎるとみている。
ハイ・フィリークエンシー・エコノミクスのチーフエコノミスト、
イアン・シェパードソン氏は
「QE3は依然としてFRBの手の及ばないところにある。
バーナンキ議長は議会から酷評されたくないかもしれない」と語っている。
それでも、多くのエコノミストはFRBが再び行動に出ると予想しており、ロイター調査によると、プライマリーディーラー18社のエコノミストのうち12人が、FRBがさらなる量的緩和を実施するとの予想を示した。