--2012年の鉄鋼市場の見通しは
「辛抱の1年になるだろう。
11年度は東日本大震災のダメージを受けたが、自動車の生産回復が軌道に乗り、下期への期待が高まった。しかし、その期待も欧州危機の長期化で悲観的になりつつある。
円高の影響も相当厳しい。
われわれは鉄鋼大手の中でも国内メーカー向けのウエートが高い。
原料価格の高止まりで直接的な収支への影響は少ないが、国内製造業の海外シフトで間接的には大打撃だ」
--中国経済の見通しは
「金融引き締めの影響もあり、しばらくは低い水準が続く。
足元では供給過多の状況だ。ただ、先
進国と違って2~3年もの間、低迷が続くとは考えていない。
設備投資が底打ちするなど徐々に回復傾向をみせており、
年内に復調するのではないか。
中国は今年、新たな指導体制が発足することも追い風かもしれない。
従来の見通しから分析すると、新体制発足時は景気を底上げしようとするはずだ」
--今後の海外戦略は
「日本で培った技術を世界市場に広げていく。
軽量で強度の高い自動車用高張力鋼板(ハイテン))は13年に米国で生産を開始する。
今年夏、中国では自動車用アルミ鍛造部品の生産を開始。
いずれも日本で研ぎ澄まされてきた技術で、国際的にも競争力が高いものだ
。国内生産の一部を海外に持っていくのではなく、新たな海外需要を取り込むもので、生産面でもプラスになる」
--低品位の鉄鉱石を活用した製鉄所の海外展開を進めている
「インドで鉄鋼大手のSAILと、15年の稼働を目指して準備に入っている。
高品質の鉄鋼原料価格が高騰する一方で、品位の低い粉鉱石などは未利用のまま放置されている。
今後はベトナムなど新興国での導入が中心になるだろう」
--新日本製鉄と住友金属工業が10月に合併する。影響は
「2社とはすでに資本・業務提携しており、この関係は継続する。
合併を通じて建材など一部の鋼材は生産ラインを統合するのだろうが、
重なる品目は少ない。
うちは鉄だけで大きくなるという戦略をとっていないため、影響は限定的だ。
ただ、(合併で原料の調達力が上がることで)国内市場における
原料価格の安定にはつながるのかもしれない。
今回の合併で重要なのは、公正取引委員会が合併の判断を
早期に下したこと。
競争力強化に向け、合併を目指す企業は間違いなく増える。
日本の産業界にとって大きな意義を持つ」(川上朝栄)
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【プロフィル】佐藤広士
さとう・ひろし 九大大学院修了。
1970年神戸製鋼所入社。
技術開発本部開発企画部長、常務執行役員、
専務取締役などを経て、2009年4月から現職。
大分県出身。
