--今年の世界経済の見通しは
「米国は徐々に回復していくと思う。オバマ大統領は8.8%にまで上がった失業率を下げようと景気刺激策をできる範囲でやろうとするはずだ。
ただ共和党が徹底的に反対するだろうから大きな刺激策は取りにくい。
いまの景気をよたよた維持しながら少しでも良い方向に持っていくくらいが関の山だと思う」
「欧州は英国とフランスがお互いにののしりあい、協調体制がとれていない。
もう半年くらい様子をみないと、どうなるのかよくわからない。
あれだけの不良債権処理をするとなると完全なバランスシート不況に陥るが、埋め合わせるためのカネはどこからも出てこない。
なんとか切り抜けてもらわないと困るが、欧州の本格的景気回復は2~3年は望めないと考えざるをえない」
--欧米が当面不況から抜け出せないならば新興国が世界経済を牽引(けんいん)する構図は変わらない
「なかでも中国は当分、高成長を続けていくだろう。
胡錦濤氏から習近平氏への国家主席交代を前に国内景気を落とすわけにはいかない。
あまり報道されていないが、中国の各地で政府に対する抗議行動が起きている。
沿岸部と内陸部の格差、地方政府の権力者の腐敗などの問題が深刻だ。
国民の不満と憤りをなだめるには年率9%近い成長を達成し、年間1300万~1500万人の新規雇用を創り、内陸部の成長を上げないと治めきれない。
不安要因は北朝鮮情勢だが」
◆海外の労働・投資呼ぶ
--肝心の日本の景気はどうなる
「良くなるに決まっている。いや、良くしなくてはいけない。昨年の景気は震災で落ち込んだが震災復興のための資金が潤沢に手当てされている。
私がメンバーになっている政府の国家戦略会議でも申し上げているが、復興特需が緩やかな成長路線につながるように持っていかねばならない」
--成長へ向けた処方箋は
「成長戦略、歳入増大、歳出抑制のそれぞれで優先順位をつけて必要な措置を講じることだ。成長戦略策定では、まず海外から労働人口と投資を国内に呼び込むような規制・制度改革を導入する。
次に日本を魅力的な市場に変え、3つ目にイノベーション(技術革新)の推進を図る。もう第2次産業に期待はできない。
国内総生産(GDP)の7割を超える第3次産業の生産性を上げていかないと。
日本だけでなくいずれ周辺国にも高齢化社会が来るのだから、介護や福祉の分野でビジネスモデルを構築して、将来ニーズが見込まれる国に提供していく。
また経済が成長している外国に出て行き、その成長を支援するとともに成長の分け前を得るというのも効果的だ。
道路や港湾など社会インフラの整備費はアジアだけで今後50年間に800兆円、オセアニアも入れると1000兆にのぼると試算されている。
政官民が一体になって高速鉄道、上下水道、発電など日本が強い分野でビジネスを取りにいくべきだ」
--税と社会保障の一体改革は
「消費増税で歳入を増やす前に歳出削減を先にすべきだという論議はもう止めた方がいい。
両方やらねばならないに決まっている。
野田佳彦政権にお願いしたいのは同時並行だ。
都合の悪いことを先送りしてとにかく増税、増収だけを図ろうというのでは国民から愛想を尽かされてしまう。
行政、政治、社会保障の各改革をきちんとやって歳出の削減に努め、歳入面では消費税率を上げて安定的な財源を得ることだ」
◆TPP参加へもがけ
--環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加を促進するには
「正式に参加するにはTPP参加国すべての承認を取らないといけないので、ある程度時間がかかかるだろう。
しかしビジネスマンの立場から言わせてもらえば、マイナスよりプラスの可能性が多かったらまずやってみて必死にもがいてみるべきだ。
交渉前進を期待する」
--野田政権を採点すると
「60点だ。80点を目指してほしいが、民主党の3代目の政権で政権基盤が安定していないし、閣僚の不規則発言もあり高い点数は付けられない。
党内野党がいる状態では野田首相もリーダーシップを発揮できまい。
どういう形で解消するかが長期政権になるかどうかの分かれ目だ」
--来年のキーワードは
「リスクあるチャレンジだ。
これだけ環境が激変するなか座して待っていてもいいことは何も起こらない。
こういうときこそ経営者も国家もリスクをとってチャレンジすべきだ」
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【プロフィル】長谷川閑史
はせがわ・やすちか 早大政経卒。
1970年武田薬品工業入社。
経営企画部長などを経て2003年社長。
04年経済同友会入会。
06年副代表幹事を経て11年4月に代表幹事就任。
65歳。山口県出身。
2012年1月1日15:18更新
