[東京 31日 ロイター]
タイの記録的な洪水で、日系企業の現地生産への被害が拡大している。
日系企業が多数進出するアユタヤ県をはじめ各地の工業団地が冠水、自動車業界ではホンダ(7267.T: 株価 , ニュース , レポート )が現地の四輪車工場で生産再開の見通しが立っていないほか、調達部品の供給制約でタイに進出している日系メーカーの多くが操業停止を決めた。
電機業界や電子部品業界などでも工場操業中止が相次いでいる。
タイ洪水の影響は日本や周辺諸国での生産にも影響を与え始めた。
トヨタ自動車は(7203.T: 株価 , ニュース , レポート )は24日から始めた国内工場の生産調整を11月5日まで継続する。
ホンダも11月7日から国内の四輪車工場の生産調整を行う。
◎31日午後8時現在
・ホンダ(7267.T: 株価 , ニュース , レポート ):
アユタヤ県ロジャナ工業団地にある四輪車工場は、調達部品の供給停止で
10月4日から生産活動を停止。
10月8日以降は浸水により生産を停止しており、再開のメドは立っていない。
タイからの部品供給の制約を受け、マレーシアでの四輪車生産を25日から停止したほか、日本の鈴鹿製作所、埼玉製作所の四輪車工場についても11月7日から生産調整に入る。
一方、タイの二輪車工場も10月11日から操業を休止しており、当面11月4日まで休止を継続する。
・TDK(6762.T: 株価 , ニュース , レポート ):
TDKタイランドのロジャナ工場(金属磁石、記録メディア、センサの加工・製造)、
マグネコンプ・プレシジョン・テクノロジー社のロジャナ工場(HDD用サスペンション製造)、
TDKタイランドのワンノイ工場(金属磁石応用製品)、
マグネコンプのワンノイ工場(HDD用サスペンション製造)の4工場が稼働を停止している。
同社は31日、タイの洪水による影響に加え、円高による事業環境の悪化と電子機器向けの需要低迷などで国内外のグループ従業員1万1000人を削減すると発表した。
国内外で生産拠点の統廃合なども視野に入れる方針。
・東芝(6502.T: 株価 , ニュース , レポート ):ハードディスク工場など10拠点が操業停止中。このうち9拠点が浸水被害を受けている。
11月から12月にかけて発売する予定だった冷蔵庫やエアコンの一部製品について発売を延期。部品供給先が被災しているため部品調達が困難になったことや製造工場が操業を停止していることが背景。
売上高はある程度下がるものの、損益への影響は最小限にとどまる見通し。
ハードディスクについてはフィリピン工場などに生産を移管する。
ハードディスク不足に伴うパソコン生産への影響も年内は問題ないとしている。
・住友金属工業(5405.T: 株価 , ニュース , レポート ):タイに4社の連結子会社があるが、ロジャナ工業団地で電磁鋼板の加工販売を行うタイスミロックスが10月10日から操業を停止している。
電子部品用の電磁鋼板を加工販売しており、加工能力は年間7万2000トン。
再開の見通しはたっていない。
業績への影響については「見積もるのは難しい。
ある想定に基づき(通期予想に)織り込んでいる」(本部文雄副社長)としたが、
詳細は公表しなかった。
・神戸製鋼所(5406.T: 株価 , ニュース , レポート ):タイの洪水の影響で顧客の生産に支障が出ているため、月次のタイ向け輸出鋼材2万トンのうち「8000トン程度の薄板について当初計画比で減産している」(藤原寛明副社長)。
また、タイにあるグループ会社7社のうち、銅の板を切断する1社が冠水し、操業を停止中。
外注先に振り向けたり、国内工場での代替生産を検討している。
残り6社は被害を受けていないが、溶接材料を製造する2社は、顧客の引き取りが止まっているため、操業を停止している。
7社の合計月間売上高は平均55億円。
洪水による収益への影響は不透明なため、通期予想には織り込んでいないが、「損益的に大きなものにはならないと思っている」(同副社長)。
◎28日午後8時現在
・日産自動車(7201.T: 株価 , ニュース , レポート ):28日までとしていた
四輪車工場の生産停止を11月4日まで延長する。
現時点ではタイ以外の工場でも生産調整はしていない。
自社工場に直接的な被害はなく、10月14日まで一部生産を継続していたが、
同17日から部品不足で操業を見合わせている。
・三菱自動車工業(7211.T: 株価 , ニュース , レポート ):10月中旬以降、約1カ月半のライン休止を視野に入れており、1カ月半、生産を停止すれば3万5000台の減産になる見込み。
自社工場への直接的な被害はないものの、取引先からの部品供給が停止し、13日夜から生産を停止している。
同社はタイ洪水による生産停止が営業利益に与える影響を140億─150億円と試算し、下期の業績見通しに織り込んだ。
・ダイハツ工業(7262.T: 株価 , ニュース , レポート ):
トヨタ自動車(7203.T: 株価 , ニュース , レポート )からの受託車を生産している
池田工場、京都工場で10月31日から11月5日まで稼働レベルを調整する。
国内の軽自動車の生産については11月までめどが立っているほか、インドネシアとマレーシアの工場についても部品不足の影響はなく、11月は現在の稼働が続けられる見通し。
・マツダ(7261.T: 株価 , ニュース , レポート ):28日までとしていた四輪車工場の生産停止を11月4日まで延長した。
・日野自動車(7205.T: 株価 , ニュース , レポート ):タイ日野販売の本社、部品研修センターと一部の市バス整備センターで浸水被害。タイでの仕入先と物流系統に被害が発生している。
タイ日野製造の日野ブランド車生産ラインは、一部の部品欠品で14日から28日まで停止中。
国内の大中型トラック工場では影響は出ていないが、今後、部品調達状況で生産影響が考えられるとしている。
トヨタ自動車(7203.T: 株価 , ニュース , レポート )向け生産は、一部の部品欠品とトヨタの工場停止に合わせ、生産ラインを10日から停止している。
国内の羽村工場でのSUV社生産も部品の一部欠品で24日から稼働時間を調整している。
・住生活グループ(5938.T: 株価 , ニュース , レポート ):パトムタニ県にあるアルミ建材生産の子会社社トステム・タイが冠水状態にあり操業を停止している。
タイの生産品目は2─3か月分以上の備蓄があり、日本国内工場でもバックアップ設備があるため出荷への影響はないとしている。
・江崎グリコ(2206.T: 株価 , ニュース , レポート ):パトゥムタニ県のバンカディ工場は敷地と建屋への浸水で操業を停止。
販売への影響が出始めた10月中旬から、タイ・グリコの決算期である12月末まで製品出荷がほとんど出来ないと想定している。
この影響は、28日発表の2012年3月期通期連結業績予想に織り込んでいるが、建物と生産設備などの被害額は現時点で把握できていない。
・明電舎(6508.T: 株価 , ニュース , レポート ):配電盤の製造・販売をするメイデンエレクトリックタイランドのある工業団地への浸水の危険性が高いと見て、13日から操業を停止。
15日に浸水が始まった。
工業団地へ向かう幹線道路も冠水している。
◎27日午後8時現在
・トヨタ自動車(7203.T: 株価 , ニュース , レポート ):11月5日まで生産委託先の車体メーカーを含む国内すべての車両組立工場で生産調整を実施する。
同社はタイ洪水の影響で部品調達に影響が及ぶ可能性があるとし、24─28日まで残業を取り止めて定時稼働にするとしていた。
29日以降も各工場で生産調整を継続する。
24─29日までの減産台数は計7000台。
10月10日から生産を全面的に停止しているタイ3工場は11月5日まで
生産停止を延長。
インドネシア、フィリピン、ベトナムの各工場についても11月5日まで生産調整を行う。
北米では10月29日と10月31日から11月5日、南アフリカの生産拠点は
10月31日から11月5日まで、それぞれ稼動時間を調整する。
・東レ(3402.T: 株価 , ニュース , レポート ):タイ・トーレ・シンセティクス(TTS)社のアユタヤ工場は6日に操業停止。
避難命令を受けて、工場には近づけない状況。
バンコク工場も、工場近隣地域の浸水により26日に稼働を停止。
浸水に備えて生産設備の保全措置に着手した。
TTS社から日本市場向けの原糸輸入量はこれまで少なかったこともあり、
国内市場向け供給への影響はほとんどない。
国内4工場で可能な限り増産を進める一方、インドネシア、韓国、中国の海外関係会社とも連携し、製品の安定供給体制を維持する方針。
◎25日午後7時現在
・キヤノン(7751.T: 株価 , ニュース , レポート ):ハイテク工業団地とロジャナ工業団地にあるインクジェットプリンター工場の操業を6日から停止中。
ハイテク工業団地で製造しているインクジェットプリンターは、タイの別の場所(ナコンラチャシマ県)で稼働を予定している新工場およびベトナム工場で代替生産を進める計画。
また、ロジャナ工業団地のインクジェットプリンター用紙は、国内に移管する方向で検討している。
タイの洪水被害の影響額としては今期の営業利益に200億円のマイナスを見込む。
現地にカメラ工場はないが、一部部品メーカーが浸水地域にあるため、一時的な影響を受ける。
部品の発注先を変更するなど対応を進めているが、年末商戦への影響は避けられない見込みという。
・日本電産(6594.OS: 株価 , ニュース , レポート ):ハードディスクドライブ(HDD)用モーターの生産拠点で13日から操業を停止していたタイ日本電産のランシット工場(パトンタニ県)が、25日に一部稼働を再開した。
これで日本電産グループがタイ国内に持つ10工場のうち、操業を停止しているのは7工場となる。
HDD用モーターでは、バンガディ工場(同)が12日に稼働を停止。
工場内に一部浸水している。
ロジャナ工場(アユタヤ県)も工場内浸水により10日に操業を停止。
モーター部品工場は3工場が稼働停止中。
日本電産の世界全体のHDD用モーターの生産量のうち、タイ拠点が占める割合は非公表。
今後、中国、フィリピンの工場で代替生産を進めるが、永守重信社長は25日の会見で、7─9月期で約1億4000台だったHDD用モーターの世界出荷台数は、10─12月期には1億台程度が限度になるとの見通しを示した。
バンガディ工業団地で家電用モータを生産する日本電産シバウラエレクトロニクス・タイランドや、ナワナコン工業団地(パトンタニ県)でカメラ用シャッタなどを生産する日本電産コパル・タイランドも工場内浸水で操業を停止している。
・ミネベア(6479.T: 株価 , ニュース , レポート ):ロジャナ工業団地のダイキャスト部品工場が浸水し、7日から操業停止中。
工業団地閉鎖のため詳細は未確認で、復旧の時期は未定。
外部からの購入量拡大に向け手配をしている。
小型モーター部品を生産するナワナコン工場(パトゥムタニ県)は14日午後から操業を停止中。
工場内に一部浸水しているが、工業団地閉鎖のため、詳細は未確認。
アユタヤ県でボールベアリングを生産するアユタヤ工場は停電と断水で7日に操業を停止したが、25日から生産を再開した。
ミネベアは世界で月産2億─2億1000万個のボールベアリングを生産しているが、同工場が生産量で最大。
また、ボールべアリングや機械加工品などを生産するバンパイン工場(アユタヤ県)も従業員の安全確保のため15日に操業を停止したが、
20日に生産を再開している。