彼女と知り合ったのは、北京の日本人スナック。
長い髪と、すこし突き出たぽってりした唇のかわいい小姐だった。
はじめは僕の友人の担当だったが、友人があまり店にいかないせいか、
僕についてくれるようになった。
お店では彼女に中国語を学び、彼女に日本語を教えた。
だんだん二人の距離は近づいていった。
夜は店で働く彼女と会うには、昼間しかない。
休日には、朝から北京市内の観光をして、夜には一緒に店にいく。
同伴通いと同じだが、二人にとってはデートの締めのようなものだった。
彼女の故郷は吉林省の長春。
そこから北京にひとりでやってきて、スナックの寮住まい。
そんな彼女にとって、僕はどんな存在だったのだろうか。
僕には日本に恋人がいた。
彼女も、それにはうすうす気づいていたようだ。
僕は、北京の彼女との距離に絶妙を保っていた。
近づきそうになると、深入りしそうになると、僕はすっと我にかえる。
彼女もまた、好きだけど、好きになってはいけない、と思っていた。
手をつなぐ瞬間をお互いに迎えるまで、どきどきは途切れなかった。
好きだから、しょうがない。
好きだから、ずっと一緒にいたい。
そんな想いが、現実を追いやっていたのだろうか。
北京でのひととき、二人は幸せな時を過ごしていた。
彼女の突然の別れの電話のあと、
僕は、北京にいくまでじりじりとした日を過ごしていた。
彼女は店を辞めていた。
店の彼女と同僚のコを昼間に呼び出し、彼女の様子を聞いた。
「・・・彼女、結婚するんだよ」
僕は頭が真っ白になった。同僚のコに話の続きを迫った。
同僚のコは、僕の目をじっとみながら、片言の日本語まじりの中国語で、
ここ数ヶ月の彼女の様子をはなしはじめた。
そこには、いかにも中国的な真相があった。
つづく




















