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母と娘の話をする時、

それは決まって乳飲児の頃の苦労話。


おっぱいを飲まなかった。

寝なかった。

ママしか抱っこさせてくれなかった。

便秘で大変だった。


毎回同じ話をして泣き笑いしているのは、わたしと母だけで


娘は


今のわたしの話をしてちょうだい。と言う。



わたしも娘ぐらいの歳の頃、

父や母に小さい頃の昔話をされると、

そんなに弱い子だったのか、とか

そんなに心配をかけ迷惑をかけたのか、と思っていた。



父も母も

あの頃のわたしが一番手がかかり、親子の密着した時期を懐かしんでいた。とわかったのは

わたしも歳を取り同じことをしてるからである。



娘は時々、

大変だったね。とわたしを労うけどそうして欲しいわけじゃない。


初めて母親になり

初めて奮闘し、いつしか終わった時代をもう一度、今度は余裕があるわたしで味わっているだけなのだ。



ああ、小さかった。

ああ、軽かった。


あの正方形の座布団におさまり寝ていた、と

愛おしい飴玉を味わい、舐めていたい。せめて溶け終わるまでノスタルジックに浸っていたい。



小さいから知らない。

小さいから教えないと。


娘の代わりにやってきたことは

だんだんと追い越された。


東京に集まって、居酒屋に入り

タッチパネルより進んだ、スマホで注文するやり方に


夫が先導を切り操作したが

一向に料理は届かずに

遅い、と文句を言っていた。


娘や友人の息子がスマホに数秒触れただけで一気に酒も料理も運ばれてきた。




結婚してから、

父や母と私たち夫婦が

慣れない小洒落た店にはいる時

父ができなくなったことをやるのは夫の役目で


若い世代のやり方でスマートに進む流れを

父は悔しがり

わたしは夫を羨望の眼差しで見ていた。



都会の真ん中で店に向かう時、


いつかのように夫はアプリで駅や店を探すし、

娘が迷子にならないように配慮しても


娘の方が何倍も早く店や道や

駅のあれこれを見つけ出して

間違いを指摘する。


夫が説明してやろうとすれば

被せ気味にわかってるって!と返される。



追い越したなあ。

追い越されたなあ。

と、つくづく思う。


わたしたちの常識で進んできたうまいルートはもうなくて、

次の世代がひっぱっている。


わたしはすぐに諦めてるけど

夫はいつでも家長で一家の責任を担おうとする。

そんな夫が可愛いし愛おしい。


ご長寿クイズにでるようなトンチンカンなわたしだって、


時代錯誤な夫婦になったって、


昭和の経済をまわし、

家族のために働いてきた、

子育てをがんばってきた同士。

それも含めての今、だから。


わたしは知ってるよ、あなたの頑張りや愛情を。

と、隣にいてやるのがわたしなのだ。



父のやり方や母の価値観に不満を持ち

夫とわたしたちの心地よい家庭を築いたように


娘はとっくにわたしたちのやり方を選ばずに

楽しい生き方を始めた。


東京でほんの少し一緒にいるだけで、

その違いを体で諦めて


ああ、頼もしくなったんだなあと、思っている。





Meg.