義父が亡くなって、

広い家に一人暮らしになった義母。




その頃の
夫やわたしの思い込み。




跡継ぎ長男家族が

自由に楽しく生きること、


実家から離れて暮らすことは


親不孝で

子供の役割を放棄してる、

長男家族失格者である。



でした。





新婚当時、

夫の実家から車で40分の距離のアパートに住み、


週に一回泊まりに行かないと


義父から怒って電話がかかってきた。



義父からの電話に
息子である夫は

大変だ!
親父が怒ってるから
帰らなくちゃ!

となる。








わたしは、

跡継ぎ長男の嫁として

役割を果たしてないようで

申し訳なくおもったり

土日は夫婦で街に遊びにいきたい、
家でのんびり過ごしたい。
とも思っていたんです。




イヤイヤ行くようになってた
週末の実家通い。





後から義父が言っていたのは


義父はお婿さんとして家に入り、

土地の風習や

近所づきあいなどで苦労したため、

田舎に帰らない息子夫婦に

苦労をさせたくなかったらしい。





早くなじむように。
皆から可愛がられるように。


村の行事になるべく長男が参加してほしい。




皆んなから愛されてほしい。





それが義父母の愛情でした。







で、一人暮らしの義母の家には

どんなに会社が忙しくても
家族3人予定を合わせ
月に一回、
実家に通っていたんです。



お義母さんに、
毎月顔見せることで、

跡継ぎ長男家族の務めを果たしてること
認めてもらいたかった。


義務、として
行かなければ。と思い込んでいた。







いつものように
金、土日実家で過ごし
仙台に帰る準備をして



じゃあ、また来月だね


と言った時。




え。。?





あ。


毎月来てること

全然覚えられてにゃい!!!



こんなに頑張ってるのに

1年に1回会うくらいの頻度に思われてる!!!



つか、
お義母さん

ただ会いたくて
顔見せにおいで。って言ってるだけ。



夫も
可愛いお義母さんのボケに拍子抜けして笑いながら


俺、毎月来てるんだけどなあ。。


って言った。





そのうちに
お義母さんは娘である義姉と
住み始めて



わたしとお義母さんは
毎日のように電話でおしゃべりした。




夕方になると
義母が電話をかけてきた。




めぐみちゃ〜ん
めぐみちゃんの声きくと安心する〜


今日はデイサービスで
習字をしたよ〜


「元気」

と漢字で書いたら
98歳のバアさんが
お義母さんの三倍でっかい字で
書いていて
感心した話。



戦争中で食べ物がなくて
たまに手に入った砂糖を
手のひらにのせて
近所の人とお茶飲むときに舐めあった話。



実の母より
血の繋がらない祖母にうんと可愛がられて、

めぐみちゃんも、会ったら
すごく可愛がってくれただろうと毎回言ってくれた。



2歳になる前に亡くなった娘の話。



息子であるパパが
熱を出したときに
また不幸が起きそうで震えた話。




娘が毎日いてくれて
肩を揉んでくれたり
夜中にさすってくれて
ありがたい話。



デイサービスのお風呂に
男性職員が入れてくれるとき

どんなにバアさんでも
恥ずかしんだよ、と話した。








話の最後には
必ず、


パパは今日も夜遅いのか?
会社が大変ならやめちまえ。
体が資本だよ。

お母さんは今日は茶碗も洗えなくて
自分の体にがっかりしたんだよ。

とにかく
体が健康じゃなかったら
何にもなんねえから
パパに言っといてよ。



と話した。







長年思い込んできた
跡継ぎ長男のこうあるべき。

確かに
義母も姑になりたてルーキーの頃に


頑張ってわたしたちに言っていた。


こうしなくちゃ
あーしなくちゃダメ、と。

皆んなそうしてるから。
うちだけ違うわけにいかねえ、と。






そして自分も年老いたときに

わたしに、




めぐみちゃんが元気ならいい。

パパが元気ならいい。




実家に来てもらうのもいいけど

お母さんは心配性だから

家に着くまで心配しないとなんねえ。

帰りは仙台に着くまで
生きた心地しねえ。



だがら、

無理して来んなよ。



と。






多分ずっと
そればかり思ってくれたに違いない。




夕方になると
義母とおしゃべりした時間を思い出す。




一緒に怒って泣いた日。


寂しいとき
不安なとき

それを出していいと教えてくれた義母。



それが可愛いと
思わせてくれた人。




夕方に町内放送の音楽が流れて、
農作業を終える合図になる。



広い家の真ん中の
夏の直前まであるコタツ。

コタツに丸くなり寝てた義母。



わたしに食べさせたいと
作ってくれた里芋と大根のイカ煮物。



つきたてのお餅。




お団子は
耳たぶくらいの柔らかさまで
こねるんだよ。



お団子の丸め方が上手いと
褒められた。



ピカピカに光る団子だと
ご先祖様に喜んでもらえっぺ。






田植えを初めて手伝ったら
ぎこちなくて、


めぐみちゃんの手つきは美智子さまみてえだなあ。

と笑った義母。





新米の季節に食べるしんごろう。
囲炉裏で焼いてみんなで食べた。




めぐみちゃーん
お義母さんはね
めぐみちゃんが大好きなんだよ。



弘前のお父さんもお母さんも
なんぼ会いてえか。
早く帰ってやれよ〜





あったかい。
義母の言葉は全部ほんとうだ。





野菜を育てるのは楽しい。
命の成長を見るのは楽しいねえ。





命を大事に見守り育てて
それが楽しいと教えてくれた。





あれこれ思い込んで
プレッシャーで
イヤイヤ通った山。

わたしもあんな風に
土地や人を愛して愛されるのかな。

と思う。





アイスが舐めたいと言った
義母をよく思い出して

夕方に優しい気持ちになる。