2024.8.8付け毎日新聞夕刊のコラム、憂楽帳に「芸人を支え育てる席亭」と題した記事が掲載された。
その中の一文、
東京・新宿の「道楽亭」は落語にハマった橋本龍兒さんが開いた。客入りが芳しくなくてもめげずに続けたが、5月に72歳で急逝。亡くなる2日前に「続けてほしい」と託された演芸評論家の渡辺寧久さん(62)や落語好きの女性らが、素人の共同席亭として再スタートした。
ブログを通して付き合いのある北海道に住む落語愛好家の方がこの記事を読み、噺新聞にコメントをくれた。
この方がFacebookで知り合った落語好きの女性が、この道楽亭に関わっていると、そして9月のシン道楽亭のスケジュールもメールで教えてくれた。
さっそく9月のスケジュールをチェックしてみると、9月19日に笑福亭べ瓶の会があった。
笑福亭べ瓶は上方の噺家だが、一年前にその存在を初めて知り、咄が気に入り、それ以来5回ほどべ瓶の高座を追いかけている。
で、今日が6回目、初めてのべ瓶独演会になる。
シン道楽亭の場所は、新宿三丁目駅C8番出口から歩いて1、2 分ほど。新宿柳通りというのか花園通り、はたまた仲通りか、坂上ビル1階になる。
べ瓶のHPを見ると今日の会のことはこのように記されていた。
笑福亭べ瓶 「ネタ&タナおろし」...
~ネタおろしと棚おろしの2席を聴いていただきます~
シン道楽亭の会場、外観は洋風飲み屋さん、というたたずまい。
そこへ入っていくと、カウンターがあり、テーブルは無い、片付けられているのかもしれないが、高座ができ、椅子が21脚並べられていた。入った客は18人。
コアな場所、コアな客を迎え入れるという雰囲気そのものの。
19時開演だが、新宿の繁華街、初めての場所なので、40分前には会場に着いていた。
この会が終了後、希望者は打ち上げもあり、参加する場合はおつまみ、ワンドリンクがついて2千円とのこと、参加するかちょっと迷ったが、咄が終わるのが21時と考え、それから打ち上げとなると22時は過ぎるであろう、まぁ、今回は初見でもあるし、打ち上げ参加はせず、おとなしく帰りましょう、その代わり、会場に早く着いたので、カウターで生ビールを注文して、それを呑みながら開演を待つことにした。
出囃子の音が鳴り出し、開演。
5月に逝去された、ここ道楽亭の橋本さんとの出会いを語りながら、マクラが始まった。べ瓶が東京に出てきたのが15年前、それから1、2年して道楽亭に初めて出演した時はお客さんが3人だけ、2千円の木戸銭、会が終了して橋本さんからいただいた出演料が2万円、持ち出しよ、橋本さんの。このやりとりがしばらく続いたとのこと。その橋本さんにはずいぶん世話になったとまくらが続き、9月8日開催した、出身の兵庫県西宮市山口ホールでの落語会から、今日、19日に兵庫県斎藤知事に対する不信任決議を全会一致で可決した話題、ひとは「空気を読む」ことが必要だし、大切なこと。ヒトといかに心でつながる、これ落語を語る噺家、聴くお客さんにも言えることと笑いを誘いながら進んでいき、このマクラ、45分続いた。
マクラを聴きながら、その咄す内容からチラッ、チラッと噺家の人柄を感じる。筋が通らないこと、まぁ男気が強いのか、上方にいた時、なんでみんなは阪神タイガースばかり応援してるんじゃ、とその頃一番弱かった関根監督が率いるヤクルトを応援し、贔屓しそれが今でもヤクルトファンだと言っていた。
さて、今日のネタおろしは、笑福亭笑瓶が作った新作「横山大観」。
この咄、実際に笑瓶一家で起きた内容を落語に仕立てたもの。
笑瓶の奥さんが昔働いていた明治から続いていたホテルから持ってきた絵が、実家の押入れから出てきた。
この絵の落款が横山大観と分かって大騒ぎ、横山といえばノックかやすしかというギャグをかましながら咄は続く。
口演後、この咄、もっともっとブラシアップしていきます。と言っていた。
タナおろしは、一年以上やっていない咄、やっていないということは、有り体に言えば、面白くない、楽しくないというので棚に上げているとのこと、それを再度見直し、再構築していこうという思いのようだ。
この咄、江戸落語の「粗忽長屋」。これの上方版改作、行き倒れになっている亡骸を見て、「俺の友達だ!」と叫び、本人をすぐ連れてきて確かめさせるという粗忽者の咄。
会がハケて、店の表へ送り出しのため高座着のまま出てきたべ瓶師匠に、
「写真、いいですか?」とカメラを見せると、「どうぞどうぞ」とポーズをとってくれた。
撮った写真、すんません、証明写真のようになってしまった。
一年前に「巣鴨で文鹿その7」でべ瓶を初めて聴いた時、この噺家は華があり明るさがあると思った。私が大好きだった古今亭志ん朝師匠がそうでした。
そんな笑福亭べ瓶のシン道楽亭独演会は、11月26日に第2回が開催される。
次回は、打ち上げセットで来てみましょう。