こみち | 噺新聞(874shimbun)

噺新聞(874shimbun)

「落語」のこと、暮らしの中にある「噺」についてなどを集めた、噺新聞

喬太郎が10年ほど新札幌で続けていた落語会「喬太郎北伝説」。

この会に通い詰めていた喬太郎おっかけの「ぴぽぱ十勝さん」と、ブログ噺新聞を通じて交流を深めていった。

 

ぴぽぱ十勝さんは喬太郎以外にも幅広く落語会へ出向くようで、私が春先にあった三越落語会で笑福亭べ瓶を初めて聴き、この上方落語家、ちょっと気になる噺家の一人に加えるよ、てなことを伝えたところ、「こみち噺スペシャルⅡ」にべ瓶が出演するので、聴きに行きませんかとお誘いを受けた。これは、これは、二つ返事でいきましょう、となった。

この会の柳亭こみち自体のことをまったく知らない、昨今、東京も上方も女流噺家の活躍がめざましい。

会に出かける前、柳亭こみちのことをちょっと調べてみる。

 

師匠は柳亭燕路。柳亭燕路は十代目柳家小三治に入門して、平成9(1997)年に真打に昇進、七代目柳亭燕路を襲名した。

柳亭こみちは早稲田大学を卒業後社会人を経験後、平成15(2003)年柳亭燕路に入門。平成29(2017)年真打に昇進。

もう真打になって七年目を迎える。いやいや、この噺家の存在、ぜんぜん知りませんでした。勉強不足です。

 

笑福亭べ瓶を目的でこの落語会へ足を運びましたが、もっともながらもう一人います、三三、柳家三三が。そして初見参の柳亭こみちの芸風も楽しませてもらいましょうか。

 

今日の会の仕かけ方を理解せず、会場の椅子に腰をかけている。

 

開口一番、こみちが登場して今日のその仕かけを説明してくれた。

落語は圧倒的に男がストーリーに登場してきて、男が語る、こんな組立て、その咄の主人公を女にし、古典を改作したこみちの作品を今日のゲストというか、こみちからすれば両、兄さんの柳家三三、笑福亭ベ瓶に自身の作品を渡しネタ決めをしてもらい、今日の演題にしてもらったという。

 

べ瓶のネタは大阪のおばちゃん編「壺算」、壺の買いものをするアニキは、根岸リツ子という上方おばちゃん。

買いもの、ねぎり上手で、根ぎ(し)リ。こみちはこの大阪のおばちゃんは上沼恵美子をイメージして改作したといい、ベ瓶はこのおばちゃんは夫婦漫才の宮川花子を想定し、買い物を頼んだ男を宮川大助を想像しながらこの咄を作り上げたとトークで説明していた。

根岸リツ子は買い物で大事なことは「気迫!」。連れの男には「アンタは黙っとれ、木や、木」学芸会の木の役のように、なんも言うなと大声で叫ぶ。このやりとりは秀逸だ。

こみちから五作品を渡され、決めたのが「壺算」。選んだ理由は、自分のネタに「壺算」はなく、持ちネタだと、そのネタを壊して新たに作り直すという作業は大変、新たに「壺算」のネタを覚え込む、作っていく方が楽だったから、この咄はこれから高座でもかけますと語っていた。

 

三三のネタはお嬢様編「崇徳院」。ネタの中に都知事選の小池現知事、対抗馬の蓮舫などを持ち出したりしてクスグリ、浅草演芸ホールからこの会場に向かいながら、そしてこのホールの楽屋入りしてからも「崇徳院」の中身の修正、サゲをどう作り上げていたのかとトークで語っていた。

 

トリの柳亭こみちは大店の旦那が義太夫にハマる「寝床」。これを大店のおかみさんを主人公に改作した咄だった。

 

今回の趣向、こみちが改作した元ネタ「壺算」や「崇徳院」を聴いていて、三三やべ瓶の「壺算」「崇徳院」を聴くと、二人がこみちの改作に自分の手心をどのように加えたのか、もともとの咄、それに改作、そして三三、べ瓶の味が加わり、なお一層この会の意図する面白さが数段アップするのだろうなと感じた。

 

開口一番の前座さんは、林家たい平の長男、林家さく平の「金明竹」だった。