一之輔のドッサリ。 | 噺新聞(874shimbun)

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今年もこの会から始まる、春風亭一之輔のドッサリまわるぜ2024、落語同好から誘われて行ってきました。

 

この会のチケットを同好の方から渡されたのが、ちょうどテレビでこの放送をやっていた頃、

NHK、「鶴瓶の家族に乾杯   春風亭一之輔が富山県滑川市へ!落語家2人の“すべらない旅“」(5月13日放送)。

番組で一之輔が語っていた、年間、900席の高座をこなしていると、これに、聞いていた鶴瓶がオレ、200席、これでもやっている方やで、と。確かに、900席というと、荒っぽく計算しても、一日平均2.5席、365日、毎日だ。これは凄い。

 

一之輔が訪れた滑川市の「こども食堂」で、食堂にいたお客さん、ここを訪れた子ども連れの母親、食堂のご主人になんと、ここで落語できる?と一之輔は問いかけ、ご主人は即答、できる、できる。では16時半でと、それを決めてこの日の番組は終わった。

 

「笑点」に出演し始めて一年ほど。落語愛好家の中では、チケットが取りにくい噺家の筆頭に迫る一之輔、でも、この番組で出会う人たちの一之輔の認識度はそれほど高くない。

 

番組の中で一之輔が言っていた、基本的に私は人見知り、初めての人に話しかけるのは得意ではない、苦手ですと。

確かに、噺家は高座でひとり、客席に語りかける生業(なりわい)ですからね。

 

その、こども食堂での落語会は、というと。翌週、番組の中で紹介された。

即興で決まった16時半開演の落語会、一之輔は開演まで少し時間があるので、滑川の街を少しブラブラ、お湯屋さん「塩湯」をのぞいてみた。番台にいたおかみさんと話しこむ。

「滑川で銭湯1軒だけになってしまいました。7〜8軒ありましたね」

「大事な所なんですよ、銭湯って、体を洗うところだけじゃない、地域のコミュニケーション、昔は社交場って言っていた」

と話を聞いたところで、せっかくだから、と落語会が始まる16時半、時計を見ると15時53分。

ザッと入って、ザッと出てきますよと、一之輔は湯につかってしまった。

写真は2024.5.20放送 NHKTV「鶴瓶の家族に乾杯」を撮影させていただきました

そして、こども食堂での一席、

 

この番組を観ていて、一之輔、年間だてに900席も高座に上がっていませんね。

この客席、今日は落語を生で聴くのは初めてという人、そして小さい子どもたち。

演題は「初天神」、この選択はさすがだなと思いながら放送をながめてしまいました。

 

 

春風亭一之輔のドッサリまわるぜ2024VOL.12銀座ブロッサム中央会館。

開演の10分前から一之輔自ら影アナで、開演の際の諸注意、公演中のビデオ、写真撮影の厳禁、スマホの電源を切ることのお願いを、何度も。以前の公演中にスマホが鳴ったことは二度ほどあったなど面白おかしく会場内にアナウンスしていた。

 

そして、開演18時、スタンディング・トーク、Tシャツにキャップを被った姿であらわれた。どれも、今回のドッサリまわるぜ用に作ったグッズらしくTシャツは前面にマスク顔に一と刻まれたマスクのマーク、そして次が方位形、北に矢印を合わせる磁石の絵柄、これで一、ノース、三つ目のマークの図柄は忘れてしまったが、Kの文字だったのか…これがケーを表していたのであろう。3千5百円。キャップは4千5百円といっていたかな。

今回の銀座ブロッサム中央会館では、中央区から千円以上の品は販売できないといわれていると。残念がっていた。

 

開口一番は、16歳で一之輔に弟子入りを願い、仙台出身のこの子、18歳の平成29(2017)年に入門、令和3(2021)年に二ツ目昇進、春風亭与いち、今では寄席かホール落語でしか聴けない「唖の釣」を演じた。

 

お待ちかね、一之輔の登場、もう笑点に登場して一年を超えるのだけど、と鶴瓶の家族に乾杯でいっていたこと、初対面の人との会話が苦手というニュアンスを高座から披露していた。

水道橋で宮治と歩いていると何人かに「宮治さんですよね」と声をかけられる、その時の宮治の愛想の良さ、対応のすごさ、なんだろうと思うほどびっくりするということを語っていた。

 

今日のニ席、最近寄席や落語会でよくやっているネタだという。

最初のが「浮世床」文盲の源ちゃんが本を読んでいる、読んでいるんじゃなく文字の数を数えているんだよ、とチャカしたり、何を読んでいるんだと聞き出すが、

「て・ぇ・こ・う・き…」よくよく聞くと「太閤記」

一之輔流改作とでもいうのか、源ちゃんのやりとりを大きくふくらませた咄に仕上げ、オチも「わたしは貝になりたい」とサゲた。

何回も聴く咄だが、一之輔の「浮世床」大いに笑い、楽しめましたね。

 

そして、「転宅」これも面白かった。笑いの感性、感覚が志ん生のもつ天性のもののような、そんな近さを感じる噺家だ。

 

仲入り後の一席は「甲府い」。笑いの少ない、人情ものともいえる咄。

このような咄でも笑いをさそい、引き出すことができる噺家は一流だ。

 

11月16日(土)よみうりホールで行う予定の、春風亭一之輔のドッサリまわるぜ2024VOL.12ツアーファイナルが楽しみである。