清張の本 | 噺新聞

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自宅の本棚に置かれた昭和40年代から昭和50年代に新潮社から発刊された松本清張の文庫本4冊を読んでみた。

本によっては昭和38年に刊行された本の再刊も含まれている。

 

一度読んでいる本だが、すべて短編集で、読んでいて書かれた熟語の意味が分からないもの、うっすら意味を理解するが、第三者にその意味を正確に伝えられないものを抜き出し、あらためてその意味を識った。

 

日本人を長く続けているが、いまだに知らない文字、読み方はわかるが書けない、読めない、その意味がわからない、正しく説明できない、こんなことが多いのはわたしだけ?

 

 

【短編の表題】

気になった熟語を含んだ文 ○○(○○○○)

広辞苑で確かめたその熟語の意味。

 

【巨人の磯】

身体に瘢痕(はんこん)傷痕、入墨など無い

皮膚面の腫物や傷などが治癒した後に残るあと。

 

資料が僅少(きんしょう)ですから、

ごくわずか。すこしばかり。

僅少の差で勝った。

 

【礼遇の資格】

自分自身がかれらの玩弄物(がんろうぶつ)

もてあそぶ品物、なぐさみもの、おもちゃ

 

【影】

殷賑(いんしん)を極めている

盛んでにぎやかなこと

 

中国山脈の脊梁(せきりょう)に近い新見の町

せぼね。せすじ。

脊梁山脈

 

【眼の気流】

若い女に惑溺(わくでき)する

一つのことに心がうばわれて正しい判断力を失うこと

酒色に惑溺する

 

【結婚式】

細君の元子を欺瞞(ぎまん)している

人目をあざむき、だますこと。

欺瞞に満ちた言動

 

【たづたづし】

裾野があまりに渺茫(びょうぼう)としすぎて

ひろびろとして果てしないさま

渺茫たる海原

 

忿怒(ふんぬ)に燃えているに違いなかった。

いきどおり怒ること。ふんど。

 

白樺と灌木(かんぼく)の林の中に、

枝だむらがり生える樹木

 

【分離の時間】

下の屋根越しに内苑(ないえん)の欅の木立ちを眺めていた。

神社・皇居の内の庭

 

【速力の告発】

そこに不幸の陥穽(かんせい)があったのかもしれません。

獣などを陥れて捕らえる穴。おとしあな。人を陥れるはかりごと。

 

車を擱坐(かくざ)させるのが狙いだった。

船が浅瀬に乗りあげること。戦車などがこわれて動けなくなることにもいう。

 

修吉は怫然(ふつぜん)として答えた。

怒って顔色をかえるさま。むっとするさま。

 

【指】

古代模様の帯の錆朱(さびしゅ)が引き立っていた。

鉄錆のようなくすんだ朱色。

 

身体つきも嫋々(じょうじょう)となるのだった。

風のそよそよと吹くさま。しなやかなさま。なよなよとしたさま。

 

その中も狭隘(きょうあい)で粗末なものだった。

面積が狭いこと。狭隘な土地。度量が狭いこと。狭隘な心。

 

寛闊(かんかつ)な笑いと感謝の言葉を述べた相手

ゆったりしていること。寛闊女 はでで、ぜいたくな女。寛闊声 悠揚として豪快な声。寛闊姿 はでなすがた。

 

【水の肌】

自負心の破摧(はさい)は恐怖心に変わっていた。

破砕。やぶれくだけること。

 

房子は依然として空閨(くうけい)を守っていて変化はないということだった。

空閨を守る。夫または妻が不在または死亡のため、ひとりねの淋しい寝室。

 

【内なる線影】

瞥見(べっけん)にしても鋭い観察はできる。

ちらりとみること

 

幻想は行住坐臥(ぎょうじゅうざが)到るところで組み立てられる

日常の立ち居振る舞いのこと。転じて、ふだん、常々の意。「行」は歩くこと。「住」はとどまること。「坐」は座ること。「臥」は寝ること。仏教ではこれを四威儀(しいぎ)という。

 

瞳には動揺も震顫(しんせん)もなく

ふるえること