ふんわりシフォン -294ページ目

月が満ちるまで ともしび 3

眠い頭で学校にいく。

勉強ってどうして頭に入っていかない気がするんだろう。



誰かと自分を比べることは、なんだか虚しくてたまらない。

そばに居なくても、僕の心には兄貴がいて、いつも正しいことを囁く。



うるさいな、わかってるよ


そんな言葉を飲み込んで。
僕は兄貴ならどうするか考えてしまう。





好きで憧れてる

でも一方で大嫌いだ。

みんなが兄貴を褒める。すごいのね、頭がいいわ。格好いい。みんなみんな兄貴に対する賞賛で…

ソレハ、ダレトクラベテイルノ?

そう考えたらぞっとした。隣で兄貴が褒められるのを自分のことのように、喜んでいた自分はなんて考えが足りないんだろう。

ソレハ、ボクトクラベテイルノ?

僕は普通だって思っていた。

兄弟だもの頑張れば同じくらい出来るはず…





兄貴に憧れていた。
同じ血の流れる兄弟だから、同じことが出来ると思っていた。

いつからだろう。

なんとなく分かったのは。今は同じに出来ないって思い知っている。

たった一枚の紙に思い知らされている。



全国模試。



自分の全てを否定された気がしてる。

ひととき

君がいるだけで

君の姿を見れる幸せ

君の声を聞ける幸せ



ちいさな幸せが

降り積もれば

優しく過ごす時間になる



肌に触れる温もりも

君がいる しるし



一筋の髪も

一本の指も

その気持ちも

なにひとつ 損なうことなく


君でいて

そのままで

僕の好きな

君でいて

月が満ちるまで ともしび 2

朝食の席でトーストを頬張っていたら、母さんが紅茶をいれてくれた。

ぱりっとしたトーストにバターを付けて、スクランブルエッグとベーコン、サラダ。

変わらない朝食。




変わった所があるとしたら、母さんの顔色が冴えないところかもしれない。

「柊也、勉強はかどってるの」


「まぁね…頑張ってるよ。もうすぐ期末試験だし」

頬張ったトーストがざらりと口の中でこすれる。

ホントは朝から言われたいことじゃない。

ただ僕の顔を見ると口をついて出てくるようで、心配してくれてるのがわかるし…特に話もなかったから、あいまいにやり過ごしていた。



頑張っているよ



それが、すべて結果に繋がるならどんなにいいだろう。

頑張っても敵わない相手がいることをおもい知っている。



「母さん、あんまり柊也にプレッシャーかけないでよ」

笑いながら兄貴が助け船を出す。ほぼ朝食を平らげ、余裕で新聞に目を通している。

頭も良くて、気配りもできて完璧な兄貴。目標にするにはレベルが違うとなんとなく感じていた。

優しくされて、いらつく自分がいる。



「お兄ちゃんと同じ学校にするなら、模試の成績を上げなくちゃね」

小さな紙に印刷された数字。それが僕の全てであるかのようだ。

学校ごとの合格率。

合格圏内には手が届いていなかった。



味気なくなった食事を取る。腹を満たすためだけに。