ふんわりシフォン -210ページ目

月の裏で会いましょう(余談)

ここしばらく、書くことについて考えています。

なんで小説を書いているかなと。

昔から書くのは遅いので、一回の分量を書くのに時間がかかります。勢いで書くとぽろぽろ抜けてしまうので、見直すためにすぐにアップしません。

FULL MOONは特にそうかもしれません。今、書かないといけないもので、そのくせ調べながらなので、ちまちま進みます。



なんで書いているんだろう?


とりわけ楽しいというものでもなく、淡々と。

自分の書くものは、どことなく寂しさを包み込んでいます。脳内メーカーが寂ばかりなだけあります(笑)



お話を作るのに、ぽっかり浮かんだことを繋げていくと、まとまりのない散文になってしまいます。

閉じ込もらず、まわりからなにかリスペクトされないかとテレビを見たりしています。

あまりぺた返ししていないのはそのせいです。見始めると際限なく見てしまう(笑)

ぺたしてなくても見に来ていただけるのは、とても嬉しいです。

あちこちにぺたしていたら、割にランキングも上がりますが、それも大変なので。書くほうに時間をさこうかな。

FULL MOON 26

「信じらんない、方向音痴」

「呼ばれたんだって」

すたすたと明け星が歩いていく。後を追いながら、まわりに問いただしていく。
『誰?』

そして『何処?』

体全体がレーダーのように微弱な電流を探していく。
何処からか呼んでいる。近くにひとつ。あとは点在する光のマップみたいに、まぶたの裏にある。



「植生が日本の南になる…ずいぶん流されてる」

黒猫は薄暗い山のなかで状況を把握しようとしている。

「とにかく道に出るから」

文句を言ったって、連れがいるのはいい。ひとりなら竦みそうな闇が降りてきている。ひとりなら耐えられない沈黙を和らげる存在がある。

黒猫、お前がいてよかったよ。

耳内にチリチリと鈴を鳴らす音がする。

「あ、明け星そっちじゃない俺について来て」

「なに」

歩いていくと一際大きな樹影がみとめられる。ああ、ここだ。ここに呼ばれたんだ。

巨木の基準は地上2メートでの幹周りが3メートル以上。これは、はるかに上回る。

市の指定天然記念物の標識がある。幹周り13.3メートル、高さ20メートル、樹齢は650~800年。

大楠の木だった。





木の幹に手をあてる。抱えきれないのに、抱きついてみたくなる。何人の子供が手をつないだら、一周するだろう。

『…俺を呼びましたか』

『来てくれたね』

ぽっかりと浮かんでくる泡のような言葉。

『助けておくれ。この地を守って欲しい』











『俺に出来ることなら』

黒猫を見た。猫は置物みたいに微動だにしていない。

FULL MOON 25

後ろなんか見ずに、飛び込むしかない。それでも心配だから、明け星を抱き抱える。

腕のなかで、ふるふるとヒゲを揺らす。瞳孔が細く、考えているような表情をする。



思いだせよ

俺のこと



道先案内に立てるなんてできない。俺が先に行くから。

「じゃ行ってきます」

「行ってこい」

並び立つ二人のように、俺も成長していきたい。三本の柱がしっかりしてこそ、バランスが取れるはずだから。

背をむけて歩く。飛び込むのは穴だけど、続いているはずの場所へ。俺を連れていってくれ。



「いくよ、明け星」

「OK」



思い切りよく

飛び込む先には、なにがある?












カキン

カキン

火花を散らす鉱物は、まるで星みたいだと思ったら、本当の空が広がっていた。
藍が深まっていく夕暮れの空に、星が現れていく。

明るい宵の明星。
引っ掛かるような細い三日月を抱いて。雲の絨毯が柔らかに広がる。



ひとつ息をつくと、胸に抱いた明け星がもぞもぞと動いた。顔を出して外を伺うとするりと肩へと登ってきた。

「ついたみたいね、何処かに」

「…何処かにね」



そう。あんなに行こうとしてたジョーカーの庭でなく…

まわりには木々がそびえ、家の明かりは遠く視界の端にあるだけ。

ここは、何処だ?