わっち、物心ついたときから抜けない癖がある。
そば殻枕である。
そば殻枕の中のゴリゴリを、指でいじる癖がある。
主に眠るときだ。
成長するにつれてその癖は抜けて行っていたが
目の前にそば殻枕があったら、絶対いじる。
我が父が愛用していたのがそば殻枕で
父が亡くなって実家に戻ったあとは
その枕を横に置いて
寝るときにずっといじっていた。
父が亡くなって最初の1週間は
モラハラ元夫もわっちの実家に泊まっていて
夜、寝るときにわっちはその枕をいじっていた。
この枕、昨日まではお父さん使ってたんだよなぁ…
現実を受け止めきれず
動揺を抑える感覚で枕を指でゴリゴリしていたときだ。
「うるさい。やめて」
いやもうまったく
親を亡くしたばかりの人に
これだけ冷たく普段通りの行動を取れる。
ある意味、すげぇな。
ま、このあとの生活で
もっとえげつないことを平気で言うんだが。
正直、モラハラ元夫に吐きつけられた
えげつない言葉の数々は想定内の範疇だったが
状況が違う。
我が父がいきなり倒れて、そのまま旅立つという
あまりにも過酷な状況でも
通常運転でわっちを追い詰めて
いいように使おうとするその神経は
ある意味わっちを冷静にさせた。
コイツ…わっちの人生に
そんなに必要か?
兄様のことだって、わっちひとりで十分できる。
婿殿がいる、というのは対外的なものであって
こんなヤツがソトヅラ良く振舞うのも
わっちの親があっての話だろう。
父が亡くなって、瞬時に態度を変えて来たモラハラ元夫。
この父が亡くなったタイミングで
モラハラ元夫はわっちと毒母をも
良いように手中に収めたと確信していた。
モラハラ元夫は毒母を自分の信者にしたつもりでいた。
兄様に良くしてやることで、そのプランは大成したと
思っていたのだろう。
これから先、わっちに待っているのは
兄様のケアと、毒母の介護だろう。
それだけじゃない。
モラハラ元夫のご機嫌取りをしながら
やりきれるか。
いや、もはや一方だけで済む話ではない。
モラハラ元夫の機嫌が悪かったら
毒母にまで責め立てられるという最悪の状況になる。
うわぁ…絶対無理…
つくづく、あの時
本気でモラハラ元夫を斬り捨てて良かったと思う。
ナイス判断だ、わっち。
…って、そんな話をしたかったわけじゃない。
長く書いてしまったけども。
わっちは未だに父が使っていたそば殻枕を
自分の枕の横に置いている。
上のわんこがわっちの隣で寝てくれるときは、
それを枕にして眠る。
上のコが隣で寝てくれなくて
わっちの気持ちが落ち着かないとき
その枕を指でゴリゴリといじっている。
酷い時には、親指と人差し指にタコが寄ったり
水ぶくれになるほどいじる。
それと同じことが、下のわんこにも起きている。
下のコは、何か不満だったり不安だったり
マイナスの感情があるとき
足の裏やつま先をしつっ…こく舐める。
おかげで今はおててにハゲがある。
そのくらい、舐める。
かかりつけの病院でエリザベスカラーを出された。
「舐めるときは叱ってやめさせてください」
…無理です…
下のコがあんよをハゲるまで舐めるのは
多分、わっちが枕をいじるのと心情的に大して違わない。
叱ったりして止めさせるのは
モラハラ元夫と変わらなくなるような気が、する。
安心につながるなら、好きなだけ舐めなさいよと
言いたいところだが
可愛いおててのハゲはちょっと…痛々しい。
なので、舐め始めたら
ちょっかいを出して気分を逸らしてみて
それでだめだったら、エリザベスカラーを装着。
ただ、病院でエリザベスカラーを付けられて慣れたのか
付けたままでも、結構、爆睡なさっている。
良かった…
わっち、わんこたちを「叱る」というのは
どうも苦手だ。
良くないことをしたら、完全にシカトを決め込み
きちんと出来たら、
大袈裟に褒めて褒めて褒めちぎる。
褒めすぎて何もしてないわんこの方までテンション上がって
家じゅう大騒ぎになる。
で、ふたりとも冷蔵庫の前に正座する。
満面の笑顔で。
そこにオヤツが入ってるのを知っているのと
なんかわかんないけど褒められた!
って思ってるから。
一応、ふたりにオヤツは出すが
ちゃんと出来たコの方に少し多めに出す。
わっちは、わんこを𠮟れない。
叱らなくても、なんとか
キモチを伝えたい。