ゴールデンウィークの谷間の動物病院は、激混みだった。

30分くらい待って、診察室に入る。

 

診察台に乗せたときも、下のコはぐらついた。

 

「ふらつくね」

 

先生は真っ先に歯茎を見た。

一気に、慌ただしくなった。

 

「歯茎、真っ白だ」

 

「歯茎が白いってどういうことですか」

 

「貧血だね、血圧も下がってると思うな」

 

え、ちょっと待って

 

「これはちょっと一大事だな」

 

え、どういうこと?

 

「血液検査と、レントゲンとエコー検査、やります」

 

下のコは、看護師さんに抱えられてレントゲン室へ

消えていった。

 

レントゲンを撮ったあと、少し待って、エコー検査。

お腹の毛を剃られて機械を当てられる。

 

先生が言う。

「このコ、こんなにお腹出てたっけ」

 

あの暴れん坊が、力のない目線で

大人しくされるがままになっている。

 

わっちが「お腹ずいぶん出てる気がするな」と思ったのは

この1週間の話だ。

 

上のコと並んで寝ていると明らかに太さが違う。

よく食べるから?

でも体重はイイ感じって言われたばっかだよな。

 

そしてこの2,3日で急に、肩や背中の骨の感触が

浮き上がってきた気がしていた。

 

耳掃除で定期的に通うようになっていたので

次回、まさに昨日、病院に行ったときに言おうと

思っていた矢先の出来事だった。

 

 

エコー検査で、とんでもない結果が出た。

 

「肝臓…脾臓…このあたり

ここから、ここまで、腫瘍だね」

 

先生が指したのは、肋骨の下あたりから後ろ脚の付け根あたり

そうとう広い範囲である。

 

デカすぎる

 

どうしよう

 

死んじゃう

 

ブワッと涙が溢れて来た。

 

「肝臓は、取れる場所と取れない場所があるから

(お腹を)開けてみて何も出来ないってなると…」

 

やめてくれ。

 

エコー検査が終わって、待合室でレントゲン結果を待つ。

 

人がいっぱい居るのに、だらだらだらだらと

涙が止まらない。

 

腕の中でぐったりとしている下のコ。

 

目は虚ろで、それでも目を閉じようとしない。

 

閉じたら危ないとか思ってんのかオマエは…

 

エコー画像を見た瞬間、わっちはもう終わったと思った。

きっと、もう、ダメだ。

 

今この瞬間にも、呼吸が止まってしまうんじゃないかと

ずっと顔を見つめていた。