「…う……あ……」
ゆっくりと目を開ける。身体がひどく重い。
(……ここは…?)
目だけで辺りの様子を窺うが、目に入るのは木目の天井か襖ばかり。
身体の重みを堪えながら起き上がってみる。
(ダメだ…力が入らない……1人で立ち上がるのは無理そうだな)
襖の間から射し込む日光から察するに今は昼頃だろうか。
(………ん?)
遠くの方から足音が聞こえる。2人ぐらいだろうか。音は次第に近づき、隣の部屋で止まった。うっすらと声が聞こえる。
「先に食べてていいわよ。私は彼の様子を見てくるから」
「ほーい」
ガラッと右側の襖が開けられる。
「あら、目が覚めたのね」
「お?起きたのか!良かった良かった」
そこにいたのは紅白の一風変わった服を着た女性と角の生えた少女がいた。
「えっと……」
「…混乱しているようね?」
女性がやっぱりか、という感じに苦笑する。
「あの…僕は一体…?」
「そうね、気持ちは分からなくもないけど、まずは腹ごしらえでもして、ゆっくりしましょうか?」
刹那、青年の腹が空腹の合図を鳴らす。
「~っ////」
「食欲には、勝てないでしょ?」
~青年食事中~
「ごちそうさまでした」
ご飯と味噌汁というシンプルな食事中だったが、空腹を満たすには十分すぎるほどに美味しかった。
「ふぃー、美味しかったぁー」
隣に座っていた角の生えた少女、萃香が満足そうに息をついた。
「アンタ、食後は本当に幸せそうね…」
向かいに座っていた女性、霊夢が呆れ顔で呟いた。
「さて」
霊夢がこちらに向き直る。思わず姿勢を正した。
「まずは、名前を聞こうかしら。私たちは食事の時に名乗ったし、次はあなたの番よ」
「間斬 阨斗、です」
「じゃあ、阨斗。気を失う前の記憶はある?」
「いえ…全く……思い出せません…」
「思い出せない…記憶喪失、か」
記憶喪失。そのフレーズに少しばかり不安を覚える。記憶を失うほどの出来事が自分に起きていて、加えてそれを覚えていないとなると不安になるのは仕方ないだろう。
「んー…手がかりなし、か」
「手がかり…ですか?」
「ん、あぁ、そうだ。阨斗、ちょっとついて来てくれる?」
「あ、はい」
連れて行かれた先は神社の境内、鳥居の前だった。
「あの、霊夢さん?ここで何を…?」
「ちょっとね。阨斗、あそこの黒い塔が見える?」
「塔、ですか?」
「そう。黒い大きな塔。何かしらの手がかりになると思うんだけど…」
霊夢が指差す方向に目を凝らす。確かに塔らしきものが見える。
「……駄目です。何も思い出せません」
「そう…」
う~ん、と霊夢は考え事を始めた。何やらブツブツ呟いている。
改めて塔を見る。黒くそびえ立つ塔は異様なオーラを発している。異質であるのに、何故かそこにあるのが自然なよいにも見える。
『…………タイ』
「…っ⁉」
突如として激しい頭痛が阨斗を襲った。余りの痛みにその場に倒れ込む。
「ちょっと、阨斗⁉どうしたの⁉」
「ぐぁ……が…ぐ…」
(何だ、これ…⁉頭が…割れ、そうだ…!)
『…………シタ…』
(……声…⁉)
『…ワシ……。……シタイ……ワシタ……』
「ひっ……ぐ…あぁ……がっ…」
「阨斗⁉ねぇ、阨斗⁉」
「霊夢ー?大声出して一体どうし…っ!どうした、阨斗⁉」
騒ぎを聞きつけて萃香もやって来た。
(くそ……意識が、遠の……く…)
無意識の闇に呑まれる寸前、阨斗は確かに声を聞いた。
『コワシタイ』
第二話 終了
第三話へ続く