自閉症で知的障害があります。
明るくて笑顔がかわいい女の子です。
私はしいちゃんのおかあさんで56才のシングルマザーです。
私の趣味は、今は無趣味に近く、唯一楽しみなのは、
テレビを観ることです。
ドラマが大好きで、好きな俳優さんや女優さんが出ているドラマを楽しみにしています。
ドラマを観ていると、当然、感想があるわけで、
それを誰かに話したいと思うのです。
でも私の職場は、ドラマの話をするような雰囲気は全くなくて、私はつまらないなと思っていました。
ところが昨年の夏に出張に出かけたときに、
ふとしたことから、いつも向かいに座っているMさん(59才)がドラマを熱心に観ていることを知りました。
「私はね、テレビが大好き!ドラマも好きだし、バラエティーも大好き!」
と言いました。
仲間がいました。目の前の霧が晴れたような気がしました。
この冬は、「不適切にもほどがある」と朝ドラの「ブギウギ」について語り合います。
仕事の話が一段落したところで、
「しずくまさん、そろそろあの話、行きましょうか」
とMさんがニヤッと笑います。
Mさんのドラマ好きは、私の比較にならないほどで、考察もすごいのです。
私がわからないことも教えてくれます。私が、
「ブギウギに最近出ている、だじゃれを言う男の人は誰なんですか?」
と聞くと、
「それはね、和田勉のことだよ、知ってる?和田勉!」
と教えてくれます。もちろん和田勉は知ってるけど、少し前の人だから、思い出せませんでした。
「それと、最近出てきた若い女の子は、美空ひばりなんですか?」
と聞くと、
「違うよ、あれは江利チエミだよ、しずくまさんは江利チエミは知らないでしょ?」と言うので、
「歌手としての江利チエミさんはあまり知らないですけど、江利チエミさんが主演のドラマは好きで観ていました!」
と私が言うと、Mさんは、
「木曜の8時!石井ふく子プロデュース!」
「この流れで渡る世間は鬼ばかりにつながっていくんだよね~」
とMさん。木曜日の8時にやっていたとか、質問以上の答えが返ってきて、本当に驚きです。
「不適切」の方は、
「昔はさ、バラエティーの司会のMCはミニスカートの女の子のスカートの中から出てきたんだよね~」と言うMさんに、
「え~!それってどういうことですか?」
と驚く私の隣の平成生まれのTさん。
Tさんはいつも冷静沈着で、驚いた様子を見るのは初めてで、その姿に私も驚きました。
「うん、そういうのも当たりまえだったってことだよ」と私が解説すると、
「Mさんとしずくまさんの話ってすごく楽しいです!」
と昭和を知りたがるTさん。
「うん、昭和は自由だったけど、パワハラ、セクハラは当たり前だったんだよ」
とMさん。
「でも令和はいろいろ見えない何かにおびえて生きてる気がするんだよ」
「1回失敗したら、もう許されないみたいな空気があるよね」
「学校では、失敗してもいいんだよ~って教えてるクセに、社会で失敗したら一発アウトだよね」
(確かにそうだなあ)と思う私。
「不適切」は昭和のパワハラのおじさんが、タイムマシーンに乗って、令和に行くお話。
Mさんは、
「私はね、タイムマシーンがあっても、若くてきれいな頃に戻れたとしても、59才の今がいいなって思うの」
と言いました。私も、
「何歳に戻りたいとかってないですね~今まで一生懸命生きてきたから」
と言いました。
ドラマ1つでこんなに話が盛り上がり、そして自分の人生に落とし込むことができる。
やっぱりドラマっていいなと思うのです。
1週間のドラマの感想を月曜日の午後に話すというお楽しみ。
Mさんからどんな話が聞けるか楽しみなのです。
でももうすぐ春の特番が始まり、ドラマがお休みになります。
私はこの時期が苦手でつまらないのです。
それをMさんに言うと、
「私は特番も大好きだよ。1.2倍速で観まくるよ!」
とさすがテレビ世代のMさん。
しばらくは新しい朝ドラをじっくり観たいと思います。
実は最近ドラマ以外にも、少し楽しいことがあります。
それは、真しかくな普通のふせんに、赤いボールペンで字を書くこと。
何でもない仕事のメモをするだけなんだけど、
すごく幸せを感じます。
なんでかなあ?と自分でもわかりません。
でも仕事の中でも幸せが見つけられるんだから、それもいいかなと思います。