起きたら昼の2時過ぎでした。




1度10時ぐらいに起きて
トイレに行き、水を一杯飲んで
またベッドに横になりました。




夜に身体の痛みで熟睡出来ずに
昼過ぎまで寝ているなんてことも
時にはありますが。




今日は夜もゆっくり熟睡出来て
二度寝で昼過ぎまでまたぐっすりと。




手足をベッドの上で自由に
動かしながら猫のようにゴロゴロ
クネクネするのがこんなに
気持ちがいいなんて。




ゆっくりグウタラ出来るなんて
これが至福でなくてなんだという
のでしょうかっ!




幸福感に包まれながら
寝起きでトイレに入りました。




今日は思いきって押し入れを
整理整頓しようかなと考えながら
トイレを出ようとドアを開けると。




開けたトイレのドアから見える
目の前の景色を見て一瞬何が起きたのか
わからずフリーズしました。




時が止まるってこういう時のことを
いうんですね。




目の前には当たり前に
開けっ放しのリビングの
レトロな焦げ茶のドアが
見えるハズなんですが。。。




どういうわけか
そこには見覚えはあっても
あるハズなどありえないドアが
あったのです。




なんと妹の部屋のドアが
そこにはありました。




正解には【実家】の妹の部屋の
ドアになります。




そのドアを入り口のほうから
見ています。




少しでも意味がわかって
いただけたでしょうか?




文章にしてもあまり伝わらない
様な気がしますが続けます。




   思わず大きな声で
「ワァー」と叫んでいました。




とっさに後ろを振り返りましたが
トイレまでもが実家のトイレに
(早変わり?)していました。




あれ?私、実家に泊まりに
来ていたんだっけ?




トイレの入り口でフリーズしたままに
寝ぼけた頭の中を整理し始めました。




今さっき起きたばかりでトイレに
入りましたよね。

実家にはもう何年も泊まりには
来ていないですよね。

でもなぜか今は実家のトイレの
入り口に立っていますね。

目の前に妹の部屋のドアが
ハッキリ見えていますね。




少しでも冷静になるために
声に出して呟いてみました。





目を覚ました時にベッドで
寝ていると一瞬思い込んだけど
コタツだったなんてことありませんか?




親戚のオウチとかに泊まりに行って
夜中に目を覚ましたらいつもと違う
雰囲気の天井を見て「ココはドコ?」と
一瞬寝ぼけたりなんてことはなかった
ですか?





あの感覚って気がつけば
ほとんど一瞬で消えますよね。




あの感覚がトイレのドアを
開けた瞬間から始まって消えない
パターンの奇妙な感覚です。




あれ。。。寝ぼけてるの?
えっ、もしかして私狂った?




とりあえず全く知らない場所だったら
発狂寸前ですが、実家の2階ということ
だけはわかっています。




実家のトイレは出るとすぐ目の前が
妹の部屋で、すぐ左に私の部屋があります。




一旦落ち着こうとトイレを出て
ドアを閉めたらどこをどうに見ても完全に
実家の2階になってしまいました。




自分が今住んでいる家のトイレから
実家の2階のトイレに
ドコデモピンクのドアよろしく
瞬間移動するとこんな感覚になる
のでしょうか?




うん。きっと私は頭が狂ったに
違いない。




瞑想中に起きた出来事ならともかく
トイレで用をたしただけで実家に来て
しまいましたなんてね。




耳を澄ませると1階も2階も
物音がしないのでどうやらみんな
出掛けているようです。




1階に下りていく気分にはなれず
とりあえず自分の部屋のドアを開けて
みることにしました。




自分の実家なのに
勝手に上がり込んだ様な感覚になって
なぜか忍び足になっている。




久しぶりに触るけれど開けなれている
自分の部屋のドアを開けてみました。




西陽に照らされた見慣れた懐かしい
部屋のベッドには今まさに寝起きの
ボサボサの頭の人物が座ってたので
ギクッとなりました。




あれってもしかして。。。と
思った瞬間にベッドの上の人物が
ドアの前の私に気がつき勢いよく
私のほうを見ました。




そして向こうはみるみる目を
丸くしながら硬直してしまって
動かなくなってしまいました。




しかしながら自分のほうは
果たして私のことが誰だか
わかるだろうか?となぜか
頭の中はとっても冷静。




私は顔を見るまでもなく見た瞬間に
彼女が誰だかはわかっています。




わかってはいましたが
まず現実的にはありえない状況
なんです。




しかしながらそれが実際に目の前に
あると受け入れざるおえない。




ベッドに座っていた彼女は
勢いよく立つとこちらをキョロキョロと
何回も振り返りながらも
机の上に置いてある補聴器を
慌てて落としそうになりながらも
耳に装着しました。



そしてまた私を黙ったままで凝視。




どちらが最初に声をかけたら
いいのかお互いに迷ってる感じがして
ここは年上の私からと思いきって
声をかけました。




「突然に入って来てこんにちはって
  なんか変なんですけど、こんにちは。
  私が誰だかわかりますか?」




自分で言っておきながら
だいぶオカシナ状況だなと改めて
感じて急に背筋が寒くなりました。




かなり戸惑っている様子でしたが
彼女はペコっと頭を下げて。




「こんにちは。なんて言ったら良いか
  わからないんですけど。。。もしかして
  紘ちゃんですか?」




良かった。わかってくれたよと
とりあえずホッとしました。




「そうなんです。
  あの、私もなんでここにいるのか
  良くわからなくて。。。
  さっき家で起きてトイレに入って
  出て来たらここにいたんですよ。。」




「はぁ。。。そうなんですか。。。」と
若い紘ちゃんが怪訝そうに呟いてまた沈黙。




お互いに長い長い沈黙の後に。




「とりあえず。。どうぞ。」




若い紘ちゃんが机のイスを
すすめてくれた。




ありがとうと言いながら
見慣れた懐かしいイスに座った。




「少しだけ待ってもらって良いですか?」




若い紘ちゃんは部屋を出て
1階に素早くおりていきました。




きっと彼女は内心パニックに
なっていて少しでも落ち着こうと
下でウロウロしているに違いない。




耳を澄ませるとバタバタと
せわしく歩き回る音と何かをブツブツと
喋る声が聞こえる。




こういう時はそっとしておくのが
1番だと自分のことはよく知っています。




椅子に座りながら久しぶりに見る
懐かしい景色が窓の外に広がって
いました。




右側には緩やかな上り坂があり
目の前にはキンモクセイの木の間から
隣の畑の土と作物の緑が一面に
広がって見えます。




今現在、この畑には大きな家が
建っているのでこの景色も全く見えず
キンモクセイの木もすでにありません。




当時の私はこの景色が大好きで
隣に家が建ったりしたらどうしようと
時々心配していたのでこの話はしないで
おこうと思いました。




しばらくして階段を上がってくる
音がしました。




すぐに入ってくるかと思いきや
少しだけドアを開けて隙間から
コチラの様子をうかがう若い紘ちゃん。




階段を上って小さく息切れしながら
コチラを覗く紘ちゃんが何だか可愛い。




そりゃ覗くよね。
戻って来たらいなかったって
こともありえるからね。




でもごめんなさい。
ゆっくりくつろいでしまっていました。




ドアの隙間から目があって
お互いに謎の会釈をすると
紘ちゃんが部屋に戻って来ました。




「どうぞ。」と小さく呟いて
  私の大好きなオロナミンCをくれた。




でも1本しか持って来ていない。




「あれ?紘ちゃんは飲まないの?」
  と聞くと。



1本しかなかったからと言った。




そうだよね。
あなたはそういう人だったよねと
なぜか涙が出そうになった。




咄嗟に自分で自分をほめてる
自分に気がつき興醒め。




いやはや、とりのあえず
目はすっかり覚めているハズ
だけれども、この状況ですよ。




わかっているのは
昼過ぎに起きてトイレに入り
出て来たら実家のトイレに
瞬間移動(?)していたこと。




とりあえず実家の自分の部屋に
入ってみたら、これまた寝起きの
若いあの頃の私がいて。




彼女の大きな体の様子から
たぶん引きこもり真っ最中の頃の
自分だと思われます。




今わかっているのは
たったこれだけ。




自分が存在しながらに
もう1人の過去の自分を肉眼で
見て話をしているという。




やっぱり頭がオカシクなったのかも
しれないけど、私が本人なら彼女は
幻覚なのだろうか?




でもよく考えてみると
この過去の実家の空間が本物だとすると
私がニセモノになるよね。




というか私は今後自分の今の家に
帰れるのだろうか?



私は本物だよね。。。




最近読んでいた
パラレルワールドの本の影響
だろうか?




とりあえず20年も前のあの頃の私
若い紘ちゃんにたった今もらったばかりの
冷えたオロナミンCを開けて一口飲んで
心をなんとか落ち着けてみることに
しました。








つづく。



この話はフィクションです。






今年の夏の空。
無限大∞マークじゃんか!と
興奮しました。