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4月からでしょうか、ホラー映画…中でも日本のホラー映画、そしてさらに大きな意味合いでの「日本の映画」を観たい気持ちが自然に高まって、中田秀夫監督の『仄暗い水の底から』(2002年)をスタートにして、『リング』シリーズ(1998年~)など日本の映画を観ています。
心から満足して好きになった映画もありますし、そうでない映画もあります。
中田監督の映画作品…私はこれまでに『女優霊』(1996年)、『リング』(1998年)、『リング2』(1999年)、『仄暗い水の底から』、『MONSTERZ モンスターズ』(2014年)といった作品を観てきましたが、『ラストシーン』という映画を見つけました。
今、日本のホラー映画を観たい気分ですので、続けて観た方がいいと考えまして、昨日3日に観たんですね…
念のためですけど、この映画については映画ファンの方々はよくご存知かもしれませんので、私の感想は「今頃なにを言ってんにゃ」とお叱りを受けるものかもしれないんですが、とにかく私の映画体験を正直に書かせてください、よろしく
LAST SCENE
ラストシーン
な~んも知らんと急に観た映画です。
私は『女優霊』がそうだったように、「撮影所を舞台にしたホラー映画」だと思い込んで『ラストシーン』を観始めました。
最初、なんだかいきなり好きになれなさそうな始まり方をして、ホラー映画としてこれはアカンのちゃうかとすぐに感じたんですが、それは「ひっかけ」でした。
そこでまず、オオーと思ったんですね。
少しだけ物語を書きますので、何も知りたくない方はご注意ください。
映画「愛の果て」の撮影現場から映画は始まります。
その映画は女優・吉野恵子の最後の主演作で、彼女は結婚を機にこの映画で引退します。
スター俳優・三原健はもともと吉野恵子の相手役で人気が出てきた人なので、吉野の引退後が不安です。
案の定、次の映画から彼は主演をはずされ、脇に回ることになりそうです。
この場面で笹野高史さんと大杉蓮さんが出てこられますが、大杉漣さんがもうおられないことをとても残念に感じました。
三原健はもともと、そこまで演技が上手くないというのが自他とも認めるところのようです。
しかし、一旦スターの座を得た三原は、そう簡単にエゴやプライドを捨てることもできない。
彼は酒に逃げ、苛立ちから周囲の人たちに当たり散らします。
大部屋女優で自分と結婚してくれた妻もないがしろにして…人気スターなのをいいことに、女優の卵に手を出して…。
あまつさえミスの多い照明の青年に暴力を振るう。
そして時は流れ…という物語です。
こっちは心霊現象で小日向文世さんの頭にライトが直撃して血ィがドバドバ吹き出るようなホラー映画だと勘違いして観始めてるので、ぜんぜん違う映画なのがもう衝撃でした。
この映画はホラー映画じゃないんですよ。
確かに幽霊は出てきますけどね。
この映画は映画撮影の現場を描いた怖くないドラマなんですね。
でも勘違いして観始めた、その映画の観方が凄かったんです。
自分が勝手に予想していた内容とは違う映画を観ることになったんだけど、その驚きがホント感動でした。
映画は1965年の過去から現代(2001年ってことでしょう)に飛び、現代が舞台で…映画の仕事に幻滅を感じ始めている小道具係のミオの視点になります。
どういった映画か少しずつわかってきて…私はその時点から目頭が熱くなりました。
号泣と言ったら言い過ぎだけど、自然と涙があふれましたね。
映画は中盤から強い怒りを感じます。
映画作りの現場に対して、あるいは現代の映画文化に対しての怒気を意識しました。
私は映画作りの現場を知りませんが…確かに、こうなってしまっては…「テレビドラマの映画版」であることの問題もですし、現場の空気そのものも活気がある、真剣なものだとは思えません。
正直、こうして作られたものならば、私は別に観たくはないなあ…。
映画から感じられる怒気は、中田監督や脚本家の方々のお気持ちなのか…わかりません。
でも、それでも映画は撮られるべきだというテーマなんですね。
もう、そうなると私も真剣でした。
映画とは何なのか、人のすることって何なのかと真剣に考えていましたね。
俳優さんは演技がお仕事ですが、なぜ映画に出て演技をなさるのか、とね。
中田監督のお得意な分野であろうホラー映画を観ようと考えて『ラストシーン』を観て…ホントに素晴らしい傑作を観た気分です。
観ている途中でぼんやりと思い出したんですが、そういえば昔、中田監督がホラーではない映画を撮られたと…何かの雑誌で読んだか、テレビで視たような気がしてきましたが…確かではありません。
しかし結果としてそんな記憶もなく、勘違いから『ラストシーン』を観た私は本当に幸福だったのではないですか。
ミオを演じた麻生久美子さん…もちろん出演作は観ていたんですが、ミオというキャラクターはこれまでで一番、印象的だったし、麻生久美子さんの表情が好きでした。
ああ、こういう女優さんだったのか、と思った。
ミオは職場のチーフ助監督(柳憂怜さん)と不倫していて、それがなんだか残念なんだけど、それは、ま、いいんです。
年齢は20代半ばくらいですか、ミオはきっと映画が大好きな女の子だったのだと思う。
それで、小道具のお仕事とはどうやってなるものか私は知りませんが、もしかしたら美術大学とか出て、それで就職したんじゃないかなあ。
でも実際の現場はきっと彼女の夢見た世界ではなかった。
ミオは「顔に出る人」なので、彼女が怒りや不満を感じているのはわかります。
映画の中の撮影は…彼女を失望させるものでした。
しかし、実際、『ラストシーン』の中の映画の現場は、日本のお仕事の典型的な光景とそう違わないようにも思います。
だから人は諦め、それが仕事だと思い、淡々と仕事をこなしていくのです。
もしかすると夢のない話かもしれません。
いや、ホント自分で何とかせんと、やり甲斐や楽しさが直結してる仕事なんてそうそうないと思うけど。
三原健を演じた西島秀俊さん…いや、『ドライブ・マイ・カー』(2021年)を観たあとで大ファンなほどでしてな…『ドライブ・マイ・カー』の西島さんの声や演技がいつも思い浮かぶほどなんですよ。
お芝居にまつわるお仕事という共通点はありますが、三原健は『ドライブ・マイ・カー』の家福悠介とは全然違いますなあ。
三原健はイヤな男ですよ。
人気に驕って、人をないがしろにして…でも、映画俳優というお仕事はそうまでになってしまって、でもそうまで不安に苦しめられるものかもしれない。
三原健はのちに俳優を引退しますが、何のお仕事をしてはったのか…現代の三原を見る限り、苦労しはったのは間違いないと思います。
三原健の妻・千鶴を演じるのは若村麻由美さん…美しいです。
この作品の中で私が最も心打たれたのは三原健の記憶です。
彼が思い出す過去に泣かされました。
そしてジョニー吉長さん…。
観ている間、ずっとどなたか考えてたんですがわからなくって観終えて調べたら、チャーさんたちと「ピンククラウド」で活動されておられたドラマーの方なんですね…。
あ、そりゃかっこええわ。
いや、また嘘じゃないんですけどね、最近、私、日本の音楽について調べていて、金子マリさんの歌に惹かれてたんですが、ジョニー吉長さんは「金子マリ&バックスバニー」にもドラマーとして参加されていて、「下北沢のジャニス」金子マリさんとご夫婦だった時代もあったそうです。
すごいキャスティングだなあ~。
かっこいいドラマーをドラマーとしてではなく配役するんだから…。
ジョニー吉長さんは2012年6月に亡くなってしまわれました。
金子マリさんとの間の息子さんたちも音楽活動をなさってるそうで、YouTubeには生前のジョニー吉長さんとセッションされている動画もあり、ホンマかっこいいです。
ある時代、映画は人々に愛され、大衆娯楽としての人気を誇ったけど、その人気に陰りがあった時代もあったようです。
テレビドラマの映画版が人気を博すことも映画文化にとって必ずしもいいことばかりではなかったのかもしれません(映画がテレビドラマ化したためでしょうか。今やテレビドラマが映画のようになっているのかもしれないけど)。
『ラストシーン』には映画の歴史も関連しているでしょうし、何よりも映画への思いに満ちた作品でした。
実は私は『MONSTERZ モンスターズ』を観た時、オリジナルの韓国映画『超能力者』(2010年)と比較して、いい映画だとは思いませんでした。
でも『ラストシーン』を観た今、やはり中田監督は凄いと思いました。
『ラストシーン』には中田監督以外にも原案、脚本で携わっておられる方々もおられますので、この映画に込められた思いがどう誕生したかはわからないけど、演出からも作り手側の方々の思い、そして映画愛が強く伝わってきて、ホントに感動しました。
私はふと出会うことになったミオと三原健の交流を通じて、心にあたたかいものが広がり…この世を愛おしく感じました。
三原健にはきっと様々な後悔があったと思いますが、映画の最後、彼の願いがかない、それでこそこの人が俳優であったという証しが残ったのだと思いますし、だからこそどんな映画であっても撮られるべきなのだと信じることができるのだと思います。
ホラー映画を観るつもりで名作を観た偶然は、私にとってとても大きな喜びでした。
もちろんホラー映画と他の映画を比較してホラー映画がジャンルとして落ちるわけではないけど、予想を裏切られた喜びこそ、映画を観る大きな理由だと思えます。
ここ最近、観た映画の中でもホントに良かったんです。
もしもまだ観られてないなら是非オススメさせていただきたいですね。
今日も読んでくださり、ありがとうさんでした☆⌒(*^-゜)v
Last Scene
라스트 씬
水银灯下死
2001年製作/100分/日本
劇場公開日:2002年11月9日
配給:オズ、オムロ
監督 中田秀夫
原案 一瀬隆重
脚本 中村義洋 鈴木謙一
プロデューサー マシュー・ジェイコブズ 一瀬隆重
アソシエイト・プロデューサー 後藤順
撮影:前田米造
編集 高橋信之
HDエンジニア 北須賀直己
録音 岩倉雅之
照明 鳥越正夫
美術 斎藤岩男
音楽 ゲイリー芦屋
キャスティング 山口正志
製作プロダクション オズ
三原健 - 西島秀俊
三原千鶴 - 若村麻由美
吉野恵子 - 麻生祐未
北川ユカ - 野波麻帆
俳優部長 - 大杉漣
撮影所長 - 笹野高史
沖田 - 小林隆
スチールカメラマン - 竹中直人(特別出演)
ミオ - 麻生久美子
三原健 - ジョニー吉長
医療アドバイザー - 生瀬勝久
プロデューサー - 小日向文世
鮫島 - 小橋賢児
監督 - 坂田聡
不治の病の少女 - 水川あさみ
リポーター - 星野有香
チーフ助監督・佐々木 - 柳ユーレイ
婦長 - 根岸季衣
看護師 - 宮崎景子
看護師 - 坂野友香
井草 - 清水宏
鮫島のマネージャー - 小木茂光
装飾部 - 諏訪太朗
記録係 - 大家由祐子