ベガとアルタイルは会えるかな?(珈琲屋と雑貨屋) | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

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大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

蒼幻燈の庭先では

朝から可愛らしい歌声響いています

 

♪ ささのはさ~らさ~ら 

  のきばにゆれる~

  おほちしゃま きらきら

  きんぎん しゅなご~ ♪

 

一年に一度、ベガとアルタイルが会える日

七夕です

 

雨に邪魔されることも多いですが

今年は朝から快晴(かなりの暑さ)

チビちゃんたちは短冊に願い事を書いて

笹に飾りつける真っ最中

 

日曜日と言うこともあり

豆屋さんにはお兄ちゃんや雑貨屋さん

ちびっ子妖精君たち全員と子妖したちで大賑わい

 

「おにいちゃん たなばたかざりできちゃ?」

 

縁台に座って七夕飾りを作っている

お兄ちゃんと雑貨屋さん

どちらも超が付くほどの不器用さで

さとちの目から見ても

危なっかしく見えていて

かなり心配そうな顔で様子を見に来ました

 

「もうすぐ出来るよ」

 

二人が作っているのは

一番簡単な吹き流し

風に揺られ、笹と一緒になびくのが綺麗な飾りです

 

雑貨屋さんは赤

お兄ちゃんは青の折り紙を手にしています

 

細かく折って、細く切り込みを入れる単純な作業

なのですが ・・・ なかなか真っすぐに切り込みが出来ない

 

沢山の色の折り紙で作って欲しいのですが ・・・

 

「どれくらいできちゃの?」

 

ワクワクしながらお兄ちゃんの目の前に立ち

出来上がった吹き流しを探します

 

「え?」

 

どれくらいと聞かれて

目をパチクリさせて

雑貨屋さんと顔を見合わせますが

未だ手にしている折り紙だけ

 

それを店の中からもいていた豆屋さん

クスクス笑いながら

二人の助け舟を出しに来ました

 

「チビちゃん お兄ちゃんたち

 丁寧に作ってるんだよ

 コツを掴めば

 あっという間に出来るから

 心配はいらない」

 

「ほかのかざりつけは?」

 

七夕飾りと言えば

 

貝つなぎに提灯

網飾りに星飾り等など

折り紙で出来る飾りが沢山あります

 

「短冊を付け終わってるなら

 皆で飾りを作ろう!

 テーブルの上に折り紙が有るから

 それを使ってね」

 

子どもの工作用のハサミは

骨董屋が届けてくれているので

そこは問題ない

 

「おいらね あみかざり つくりたいの!」

 

「ぼくはちょうちん」(じゅんくん)

 

「じゃあ、かいつなぎつくる!」(かずくん)

 

「ぼくは ほしかざり にする!」(ま~くん)

 

4人はそれぞれ違う飾りを選びました

それに呼応するように

子妖したちも思い思いの飾りを口にします

 

さながら豆屋は幼稚園の様相を呈してきました

 

「豆屋、チビちゃんたちに

 飾りの作り方を教えてやって

 料理は俺に任せてくれていいから」

 

キッチンで腕を振るうのはMaster

七夕に食べる料理とお菓子などなど

 

「了解!

 そっちは任せる」

 

笑顔で応えて

チビちゃんたちと七夕飾り作りを始めた

 

「雑貨屋さん ・・・

 俺らも中に入りません?」

 

縁台で作業してたお兄ちゃん

子どもたちの賑やかな声が店の中に移り

寂しくなったようです

 

「確かに賑やかな声がないと

 ちょっと寂しいですよね

 中に入りましょうか」

 

「丁度一つ終わったので

 入りましょう」

 

糊付けして輪にすれば出来上がる吹き流しを手に

立ち上がる二人

雑貨屋さんが先に入り

お兄ちゃんが中に入ろうとしたら

 

露地門辺りに人影が見えた

吹き流しを縁台に置き

近づいていくと

見たことのない衣装を身に着けた子どもが

露地門の向こう側から

こちらを覗き込んでいる

 

「君は誰?」

 

「そこに あおひはいるのか?」

 

少しだけ怯えた表情で

可愛らしい声で聞いた

 

中に入らせない方が良いような気がしたお兄ちゃん

 

「ちょっとだけ、そこで待っててくれる?」

 

そう言うと「うん」と言って頷いた

 

 

あの衣装 ・・・ なって言ったっけ?

確か ・・・ 『半尻』とかいう衣装だっけ?

うろ覚えの言葉を頭に浮かべたまま

店の中の豆屋さんを呼んだ

 

「豆屋さん ・・・」

 

声を掛けると

「何?」って顔でお兄ちゃんを見た

黙ったまま手招きすると

怪訝な顔をして外に出てきた

 

「どうしたの?」

 

「あの ・・・ 露地門の向こう側に

 半尻だっけ ・・・ 水干は庶民だったはず」

 

その言葉を聞いた豆屋さん

一瞬で表情が変わり

 

「お兄ちゃん、ありがとう

 教えてくれて

 悪いけどMasterに

 ここに来るよう伝えて」

 

お兄ちゃんが見つけた子どもは

間違いなくあの子だ 

 

こっち側に来たら戻れなくなる

時空の歪みを直すには

Masterの力もいると判断した豆屋

焦っているけれど

怖がらせないように満面の笑みを浮かべ

一瞬で着ている衣装を変えた

 

「あおひ!」

 

豆屋を見つけた彼が大きな声で呼ぶ

 

「直ぐにそこに行くから

 動かないで」

 

「なかに入ってはいけないのか?」

 

何度も迷いこんでく童(身なりから指摘続だ)

いつもなら迷わず入ってくるのに

そうしないのは

露地門が彼を入れないようにしているからだ

 

「入っても良いが

 少しだけお待ちください」

 

彼が入るべき蒼幻燈に繋げてからでないと

あの子は時空を彷徨うことになる

 

「わかった、われはここをうごかない」

 

蒼灯は何処に行ったのやら ・・・

野に出ているのか ・・・

子妖しが呼びに行ってるはず

少しだけ時間を稼ぎ

あの子を戻さないといけない

 

笑みを浮かべたまま

露地門傍までいき

彼と話を始める

 

「今日も退屈をして遊びに来たのか?」

 

「いえのものは七夕(しちせき)のぎょうじの

 したくで いそがしそうに しているゆえ

 あおひに ももをもってきた」

 

やはり退屈で抜け出してきたようだ

 

あの頃の七夕は

宮中行事の一つで

星を眺めながら詩歌を楽しんでいた

今とはかなり違って行った

 

「抜け出してきたんだな?」

 

「ぬけだしてなどいない

 ももをとどけてくる

 そういってでてきた」

 

袖の中から桃を一つ取り出して

嘘はついていないと

自信満々の顔をする

 

「我に会いに来ると伝えたのか?」

 

「それは ・・・ いわなかったが ・・・」

 

バツの悪そうな顔をしながら

桃を手のひらに載せて

豆屋に差し出した

 

「美味しそうな桃だな ・・・頂くよ」

 

手だけを向こう側に出して

その桃を受け取る

 

庭に出てすぐのその光景を見たMaster

直ぐに状況を把握して

やはり一瞬で着ているものを変えた

 

「客人か?」

 

静かに近づいていき

豆屋に声を掛けた

 

「ああ、我の友人の一人だ」

 

「左様か ・・・

 中に入って頂く支度をするゆえ

 もう少しだけ待って頂けますかな?」

 

凛々しい顔をした彼に向かって聞くMaster

 

「ながいはできぬゆえ

 なにもしたくせずともよいのに」

 

Master全神経を集中して

向こう側の蒼灯が戻ってきてるかを確認する

 

「豆屋 ・・・ 時空を繋ぎ直す

 俺の気に合わせて

 露地門に力を加えてくれ

 向こう側のお前は

 蒼幻燈に戻ってきてる」

 

それを探るだけ

かなりの力を使ったマスター

額に大粒の汗が浮かび始める

 

「分かった、お前に合わせる」

 

彼に気付かれないよう

笑みを浮かべたまま

露地門の空間に向かって力を加える

 

「桃は返してやれ

 蒼灯に渡すものが無くなる」

 

慌てた顔のMasterに言われ頷く豆屋

 

「お前に渡すものが有る

 少しだけ桃を持っててくれぬか?」

 

一旦渡した桃を戻されて

キョトンとした顔をするが

渡すものがあると言われたら頷くしかない

 

桃を渡したすぐ後

露地門の空間に白いベールが掛かり

向こう側が見えなくなったあと

露地門自体が消えた 

 

「Master ・・・ 無事繋がったのか?」

 

違う時空に繋がったら

それこそ大変だ ・・・

焦った顔のまま振り向く豆屋

 

「少し待て ・・・ 確かめる」

 

気を集中させ確かめようとするMaster

力を使い過ぎたのか

強張った表情のまま目を閉じた

 

その時、後ろからさとちの声

 

「まめやしゃん ますたー

 だいじょうぶなの

 ちゃんとつながっちゃって」

 

満面の笑みを浮かべて伝える

 

「ちびちゃん ・・・ ずっと見てたの?」

 

「ろじもんがきえちゃうのはみたの

 あのね、おおちゃんが

 あるべきすがちゃに 

 もどっちゃから

 ちんぱいいらないっちぇ

 つたえちぇって」

 

その言葉で安堵の表情を浮かべる二人

 

「ありがとう

 これで安心したよ」

 

「はやくつたえちぇあげちぇって」

 

「もしかして、木が教えてくれたの?」

 

「おおちゃんとおはなしちたよ

 にわにある

 いちばんおおきなきで」

 

二人の役に立てたと思ったさとちは

満面の笑みを浮かべる

 

「チビちゃんが居て良かったな

 多分、あの方が力を貸してくれた」

 

Masterの見解に頷く豆屋

 

「そうだな ・・・」

 

大方、蒼灯が留守をしていたから

行方を捜し、ここに辿り着いた

すぐに迷子になるのは

あの頃からだ ・・・

 

屈託なく笑うあの子に

会うことが出来た

豆屋は泣きそうになりながらも笑った

 

ここには姿かたちは変わったが

あの頃と同じように彼が居る 

それだけで満足だと思う 

 

微笑む豆屋にマスターが声を掛けた

「七夕の奇跡だな」

 

「ああ、そうだな」

 

本当にそう思う

そしてそれは

始まりの妖精君が連れてきたのかもしれない

 

さとちを抱き上げて

「七夕飾りを作ろうな」と言うと

 

「うん いっぱいつくっちぇ

 みんなでかざるの!」

 

嬉しそうに笑って答えた

 

「俺は美味しい物を沢山作るよ」

Masterの言葉に満面の笑みで頷くさとち

 

 

本日、豆屋さんでは

七夕会が開かれます

お時間が有る方は

どうぞ覗きに来てください

さとち達と一緒に天の川を眺めながら

短冊に願い事をお書きくださいませ

 

 

 

七夕に食べる物は素麺と索餅です

どうぞお召し上がりください

 

 

 

 

 

 

 

<おしまい>