父ちゃんの宝物  | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

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大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

僕は5人兄弟の末っ子

直ぐ上の兄は同い年

誕生月が僕の方が遅くて弟になった

でも、悟は凄くしっかりしてるから

僕の方が早く生まれてても

お兄ちゃんだと思う

 

僕たちには二人の父がいる

父ちゃんと父だ

二人は僕たち5人を引き取って

育ててくれてる

一番上のお兄ちゃんは

時計会社に就職して

今はドイツに留学している

(会社からの命令みたいだ)

二番目と三番目のお兄ちゃんは

もうすぐ中学生になる

健太兄ちゃんは歌とダンスが大好きで

零兄ちゃんはものすごく頭がいい

帝大に進学するんじゃないかって言われてる

 

悟は将来は父の会社を継ぎたいって言ってる

(本当は物書きになりたいみたい)

僕は ・・・ 父ちゃんと同じ絵描きになりたい

 

父ちゃんの絵は綺麗な絵もあれば

よく分からない絵もある

(抽象画って言うらしい)

 

アトリエで絵を描いてる父ちゃんを見るのが好きだ

何時間でも見てられる

父ちゃんは描いてる時は集中してるから

僕が後ろで見てることに

気が付かない時もある

 

一区切りついた時

僕に気が付いて驚くことも多い

 

悟は「父ちゃんは気がついてる」って言うけど

気がついてるのかな?

 

「父ちゃん

 絵をかいてるとき

 ぼくに気がついてた?」

 

振り向いた時聞いたら

 

「何時の間に来てたのか

 全然気が付かなかったよ

 だから驚いた」

 

優しい顔で笑って答えてくれた

う~ん ・・・ 

気がついてるような気もするんだけど

父ちゃんの言葉を信じることにする

 

「もうすぐ完成なの?」

 

絵の完成が近いと

必ず出てくるのが

真鍮で出来た絵の具入れだ

 

「ハルはどう思う

 まだ描き足りない?」

 

絵描きの父ちゃんは

時々、僕の意見を聞くことがある

僕には全く分からないけど

庭に居る妖精が見に来てるときは

完成が近い

見に来てないときは

まだまだ描き足らないみたいだ

父ちゃんもそれは分かってて

そういう時は真鍮の絵の具入れは出てこない

 

「ようせいが見に来てるから

 かきたりなくない ・・・」

 

「ハルには妖精が見えるからな ・・・

 仕上げの絵の具の登場だな」

 

「しんちゅうの絵の具入れ

 すごくかっこいいね」

 

「そうか? 

 これは父から貰った絵の具入れなんだ

 父ちゃんの宝物だよ」

 

それはそれは嬉しそうに

そして愛おしそうにその絵の具入れを手に取り

僕に見せてくれる

 

「持ってもいい?」

 

「ああ、いいよ」

 

宝物だから、大事に持たないと

両手を出すと、そこに絵の具入れを置いてくれた

 

「重たいんだね」

 

「真鍮で出来てるからな」

 

この絵の具入れは

木で出来てる絵の具入れよりも小ぶりで

父ちゃんが美術学校に教えに行く時も

カバンの中に入れて持って行く

 

「びじゅつ学校でも使うの?」

 

「使わないな(笑)

 父ちゃんのお守りみたいなものだよ」

 

「いつもらったの?」

 

手入れの行き届いた絵の具入れだけど

かなり使い込まれてる ・・・

 

「フランスに絵の勉強に行ってるとき

 父が初めて稼いだお金で

 買ってくれたものなんだ」

 

絵の具入れを眺めながら

その頃の事を思い出してるのか

父ちゃんは目を細めて

懐かしそうな顔をして笑った

 

「そうなんだ

 父ちゃんの宝物だね」

 

欲しいなって思うけど 

父ちゃんの宝物 ・・・

僕もいつか同じ物を買いたいな ・・・

 

「ああ、絵を辞めようかって

 思った時が有って ・・・

 そんな時だったかな ・・・

 食べる物も儘ならないのに

 『俺はこれからもずっと智の絵が好きだ』って

 これを贈ってくれたんだ」

 

「食べる物なかったのに?」

 

父らしいな ・・・

でも、僕が父だったら

やっぱり同じようにしたと思う

だって ・・・ 父ちゃんの絵を見てると

幸せな気持ちになるから ・・・

 

「呆れるだろ?

 でも、嬉しかったんだ

 だから今も絵描きだよ」

 

二人は取っても仲良しで

お互いを尊敬してるんだって

肇兄ちゃんが教えてくれた

 

僕も父ちゃんみたいな絵描きになりたいな ・・・

 

「ハルは将来何になりたい?」

 

「父ちゃんみたいな絵描きさん!」

 

そう答えたら

父ちゃんは凄く嬉しそうな顔をしてくれたんだ

 

 

僕の夢は絵描きになって

父ちゃんと同じ絵の具入れを持つこと!

 

いつか叶うと良いな ・・・

 

 

 

 

 

 

<おしまい>