君のいない迷路 127  | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

東京駅に戻り3人で夕飯を食べ

新幹線改札で2人を見送り

家に帰る電車に乗り込んだ

地上の星が輝く車窓を眺めながら

『楽しい時間は車窓を流れる景色のようだ』

彼の言葉を思い出した

夢のような時間はあっという間だ

 

最寄り駅に入る手前

減速する列車から見える景色は

ゆっくりと現実の世界に戻していく

 

ホームに降り立ち階段を上がり

改札に向かう ・・・

サプライズは一度だけだと

分かっていても

淡い期待を抱きながら

君が居た場所に視線を向け

姿を探すだろう日常が目に浮かんだ

 

今だって

君が飛行機に乗ってるのを知ってるのに

探してるんだから(笑)

 

コインロッカーからカバンを取り出し

君と歩いた道をゆっくり歩く

この街で暮らし始めて

あまり良い事がなかった

正直、引っ越しも考えていた

それが、君との思い出に塗り替えられたことで

少しだけ好きになって

もう少し住んでみようかと思った

 

大きな木が有るカフェの前

木の枝には青のLED照明が施されてて

淡い光がテラス席を照らしていた

夏だから結構人がいる

 

今度二人で来よう ・・・

 

 

寂しい気持ちは勿論ある

気を張っていないと溢れそうだけど

それでも君が

『そばにいるよ』と笑ってくれてる

それだけで大丈夫

 

 

部屋に戻りシャワーを浴びて

冷たいビール缶を手にソファーに座る

 

来月、持って行く物をピックアップしておくか ・・・

そんな事を考えながら

グラスにビールを注いだ時

携帯が鳴った

 

画面には池田の名前

時間を見たら着いた頃だな

 

『家に着いたぞ~』

 

第一声がそれかよ!

って言うほど明るい声

 

『お疲れ!

 お前のマンションって

 駅から近いの?』

 

それにしては早いな 

 

『ああ、駅の近くだよ

 タクシーでワンメーター

 だから東京駅から2時間掛からない』

 

『タクシーに嫌がられる距離だ』

 

『昔はそうだったけど

 今は嫌がられないぞ

 さっきのタクシーの運転手さんが

 数で稼ぐんだって言ってた 

 お客を選んでるご時世ではないみたいだな』

 

『へ~ タクシーに乗ったんだ

 若いんだから歩けよ(笑)』

 

俺は歩いたぞ

 

『新幹線って早いけど

 長距離移動だからなのか

 結構疲れるのな

 それに今回の旅行は

 色々あったから』

 

苦労したよって声が聴こえてきた

確かに今回もお世話になった

 

『それは申し訳なかった

 お前の配慮がなければ

 大変なことになってた』

 

池田様様だ

感謝してるよ

 

『分かればよろしい ・・・』

 

かなり偉そう!

でも、頼りになる兄貴だし ・・・

 

『あのさ ・・・

 ちょっと気になったんだけど

 昨日の『はとこ』ちゃん

 お前の就職先知ってる?』

 

いきなり話題が飛んだ

それに声がさっきと違う

 

俺の就職先?

あ ・・・ 今年の正月

祖父が集まった人に話してたな 

 

『正月の集まりで

 祖父が親戚一同に伝えてる ・・・

 なんか拙いか?』

 

『そうか ・・・ 知ってたか ・・・

 いや、連絡先を渡してくれと言われて

 断っただろ?』

 

不用意に個人情報を

他人に渡すのは如何なものかと

説教したと言ってた件だな

 

『ああ、断ってくれたよな』

 

『何を暢気なことを

 あの様子だと

 多分、会社に行くぞ』

 

いきなり何?

相手は学生だし 

 

『考えすぎだろ』

 

『ほんと甘ちゃんなんだから

 「本家の優しいお兄様」って

 昨日インプットされてるから

 会いに行くのは当然

 何でも相談に乗るって請け負ったんだろ?』

 

『まあ、よく知ったおじさんだから

 そう言ったまでで ・・・

 真に受けるか?』

 

『親戚だから真に受けるの

 他人なら社交辞令だと思うだろうけど

 もう少し自分の立場を自覚しなさい

 昨日も言ったけど

 親戚関係は助けられない』

 

『そうだよな ・・・

 かなり近い間柄だから ・・・』

 

親戚でもないのに

首を突っ込むなと言われたら

下手したら出禁になる

 

『あのはとこちゃん

 祖父さんのお気に入り?』

 

『どうだろう?

 気にしたことないからな ・・・』

 

『そうじゃないことを祈るよ

 冷たい態度が取れないのは

 仕方ないけど

 毅然な態度を忘れないように

 楽しい時間の後に言うのはどうかと思ったけど

 おばさんの電話の話を聞いて

 言った方が良いと思ったんだ』

 

『能天気なことしか考えてなかった』

 

『だろうな 

 頭の中、大野の事で埋め尽くされてる

 だから、敢えて言わせてもらった 

 何もなければいいけど

 心に留めておけば対処できるだろ』

 

『いつも助けられてて

 ほんと感謝してるよ

 ありがとう!』

 

『どういたしまして

 じゃあ、風呂に入るわ』

 

『ゆっくりしてくれ!

 それじゃまたな』

 

『お休み』

 

まだ寝ないけど ・・・

浮かれてばかりはいられないのか

 

 

そうだよな ・・・

母がストッパーになってくれてても

祖父の嫁取り作戦は

水面下で動いてそうだ

心して掛からなければ ・・・

 

 

グラスのビールを飲み干して

両頬を思いっきり叩いて喝を入れた

 

 

 

 

 

 

 

 

<続きます>