取り敢えず打ち破ろうか 212 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

二人が暁の里に入った日の午後

カンテラのカウンターに

耀の一族の当主と夫人(サクちゃんの両親)の姿があった

 

「直人さん、今日は美味しい物を

 ご馳走して頂けますのよね」

 

「この人、昨日からワクワクして

 朝も少ししか食べてこなかったんだよ

 直人さんだからフランス料理かもって

 期待値Maxだからよろしくね」

 

サクちゃん両親

瞳を輝かせながら、満面の笑みを浮かべた

 

「ご期待に沿えるよう

 昨日から仕込んでるから

 楽しみにしてて

 食前酒でも出そうか?」

 

入り口をチラ見し

誰かが来るのを待ってる様子

 

「二人とも明日出発?」

 

「そうなの

 招待されてるのは主人だけなんだけど

 里がどんなところか見てみたくて

 彼に会えないのが残念だけどね」

 

息子の大事な人の即位の儀

参列は出来ないけれど

近くでお祝いをしたいと言う気持ちで

同行することを決めた

 

「夫婦での参列も出来そうではあったんだが

 流石に私たちが揃っての参列は

 あちら側が不快になるんじゃないかと思って

 遠慮させていただいたよ

 一番重要なのは息子が立ち合うこと

 彼も喜んでくれるだろ」

 

二人が顔を見合わせて

一番の選択をしたと言う顔をした

 

マスターは食前酒と

オードブルをカウンターに置いて

料理の説明をして

 

「お召し上がりください」

にこやかな笑みを浮かべる

 

「頂きます」

 

「これが最後の仕事になるの?」

 

「これが最後だな

 その後は引っ越しの準備をして

 2月中には新しい家に引っ越すよ」

 

新居は横浜の海が見える場所らしい

暫くは夫婦二人の時間をゆっくり過ごし

それから新しい仕事を始める予定らしい

 

「世界一周の旅に出るって聞いたけど

 まずは何処から行くの?」

 

「まずは3か月くらい

 ヨーロッパに滞在する予定なの」

 

「妻の慰労も兼ねてるから

 のんびり観光する予定だよ」

 

一族を率いる当主は

心身ともにハードだ

それを支えた妻も然り

 

穏やかな表情を浮かべる二人を見て

彼(当主)の選択は間違っていなかったと思う

 

「サクちゃんも就職決まりそうだからね」

 

「あの子が自分で選んだ道ですから

 苦労しても乗り越えるでしょう

 ねえ、お父さん」

 

「そうだな」

 

3人で話している最中

閉店の札が下げてあるドアが開いた

 

怪訝な顔の二人と

待っていたマスター

 

「お待ちしていました

 どうぞこちらに」

 

入ってきたのは雑貨屋さん

 

「失礼します

 すぐに帰りますので

 お構いなく」

 

サクちゃんの両親は雑貨屋さんを知らない

戸惑った顔でちらりと雑貨屋さんを見て

黙ったまま、出された食前酒に口を付けた

 

「おじさん おばさん

 今日来てもらったのは

 画伯からお願いされてなんだ

 そして、彼が画伯からの言伝を

 持ってきたくれた方」

 

「初めまして

 雑貨屋を経営しています

 さくら堂の店主でございます」

 

名刺を取り出しサクちゃんのお父さんに渡す

 

「初めまして

 櫻井と申します」

 

「画伯に言伝をお願いしたのは

 蒼幻燈の店主なんです

 耀の一族のご当主さんには

 画伯からと言った方が来ていただけると思い

 カンテラのマスターに連絡を取って頂きました」

 

「用があるのは豆屋さんなの?」

 

マスターも知らなかった事なので

驚いた顔をする

 

「そうなんです

 騙すような形になってすみません

 豆屋から話があると言われても

 『誰?』となるだろうから

 画伯に出てもらったそうです」

 

「つまり、画伯とは知り合いなの?」

 

「画伯が子供のころからの知り合いだそうです」

 

「それなら信用できるでしょ?」

 

マスターがサクちゃんの

両親の顔を順にみて確認する

 

「直人さんは知ってる方なの?」

 

「ええ、存じてますよ

 家にも希少な珈琲を届けてくださいますし

 信用できる方です」

 

「それを聞いて安心しました

 どのような要件でしょうか?」

 

画伯やマスターまで

太鼓判を押す方なら安心だと言う顔をして

雑貨屋さんの方に向き直るサクちゃんのお父さん

 

「僕が預かってきた言伝をお伝えします

 『橘の流れを汲む櫻井家のお二人に

  明日の午前10時、松岡邸内にある

  大楠の前にお越しいただきたい』

 とのことです」

 

「旧松岡邸の事ですか?」

 

「はい、あの庭の大楠の前で

 豆屋さんがお待ちしています」

 

「それは明日でしか行けませんか?

 明日の朝早くに

 暁の里に向かう為

 東京を立つのですが ・・・

 困りましたね」

 

「心配は無用です

 行先は蒼穹の里に在る本家邸

 そちらにお二人をお連れするそうです」

 

「え?里の屋敷には入れるの?」

 

一番驚いたのはマスターだ

有り得ないことだと分かっているから猶更

 

「そう伝えるようにと

 サクちゃんと翔兄さんも

 そちらに滞在しているので

 安心して欲しいと言ってましたよ」

 

「あの子たちは長の屋敷に滞在してるのかね?」

 

ポカンとするサクちゃんのお父さんとお母さん

一族の関係からして

有り得ないことが起こっている

 

「そのようですよ」

 

「それでは行かない訳には ・・・ 

 妻と二人でと言う事ですよね」

 

「はい、旅行の準備をしてお越しくださいとのことです

 申し訳ありませんが

 理由は知らないので

 これ以上は答えられないです」

 

大役を終えた雑貨屋さんは

ホッとした表情を浮かべて

椅子から立ち上がろうとする

 

「雑貨屋さん、このまま帰らないで

 食事をしてって

 用意してあるんだから」

 

マスターが慌てて止めると

笑顔で頭を振って

 

「豆屋さんが報告を待ってるので

 このまま失礼します」と答えた

 

そう言われたら

引き止められない

 

「じゃあ、料理を包むから

 それを持ち帰って

 その間、食前酒でも飲んでてください」

 

「それなら待ってます」

 

にこやかに答えて

椅子に座り直した

 

 

 

 

<続きます>