日曜の夜、池田君からラインが入った
”電話しても良い?”
全く問題ないので
”いいよ”と返したら
直ぐに携帯が鳴った
「こんにちはでいいんだよね?」
多分この時間は月曜の昼間のはず
「ああ、そっちはこんばんはだな」
「夕飯を食べ終わったところだから
そうなるね
今回はありがとう」
「大野に弱音が吐ける櫻井に戻ったよ
彼奴、カッコつけてたのかね」
「僕より年上だから
そうなんだと思う」
「見えねえけどな(笑」
そう言って可笑しそうに笑った ・・・
何があったのか
差し障りのない程度に
聞いておきたいけれど
話してくれるかな?
「それで ・・・ 話せること?」
「ああ、搔い摘んで話をするな」
事の成り行きを話してくれた
今で言う『ハニトラ』に引っ掛かりそうになって
途方に暮れていたから
様子がおかしかったんだ
「電話で話した時
一切内容を教えてくれなかったから
女性が絡んでるんだろうなと
何となく思ってた ・・・
櫻井の家の事を考えると
この先もその手の話は出てくるんじゃないかな」
「大野は冷静だな ・・・
まあ、俺もおばさんも
何となくその手の事だと感じてたけど」
感心したような声が返ってきたけど
冷静でいることで
自分を守ってる(僕は狡いと思う)
「遠くに居るから冷静でいられる
近くに居たら
どうにかして相談に乗りたいって
やきもきして大変だったと思うよ
大切な友人だから力になりたいだろ」
今は友人の立場だし
近くに居たら飛んで行ったと思う
「友人ねぇ ・・・ まあそうだな(笑)」
彼奴の望んでる関係ではないぞ
暗に言ってる気がしたけど
そこは突っ込まないことにした
「お姉キャラに扮したの?」
「そこは優しくスルーして欲しかったな(笑)」
「僕も見たかったな
池田君のお姉キャラ(笑)
その知恵を付けたのってアイツ?」
池田君の彼女は羽衣
大好きな画家の絵が展示されると聞き
美術館に足を運んだ時
元カノカップルと一緒に居た羽衣と
偶然会ったらしい
その場を離れようとしたら
元カノの方から声を掛けられ
(普通スルーするだろうと怒ってたけど)
羽衣を紹介された
彼(櫻井)の件で世話になったのもあり
その日の夜は4人で食事をしたのが切っ掛けで
連絡先を交換
(好きになったのは池田の方らしい)
それから電話で話すようになって
最近、付き合い始めたらしい
「まあ ・・・ 相談したら
その方法が一番いいんじゃないかって
向こうが架空の彼女を探すよりは
自分を的にしろって言われた」
「アイツらしいなあ ・・・」
男前と言った方が良いのかも
「だろ!俺はタジタジ(笑)」
「まだ、二人に入ってないんだろ?」
「うん、内田に彼女が出来てからだし
横取りした訳ではないんだけど
なんか言いにくいだろ?」
「確かに、櫻井が東京に行ったときは
既にフラれてたから
全く問題ないと思うけど
言いにくいのは分かる
平気で話せるまで待った方が良いかな」
多分,彼は気がついてるんじゃないかな・・・
そう言う所は勘が良いから
「櫻井に話した方が良いよな?」
「池田君次第なんじゃない
でも、話しても大丈夫だよ
内田には伝わらないから」
多分、内田だけ知らなかった
そういう形にはしたくないんだと思う
「まだ始まったばかりだし
この先どうなるかも分からないし
もう少しお互いの気持ちが固まってからにするよ」
「それで良いよ
そっちは二人で相談して(笑)」
羽衣は諦めることに慣れてるからって
姉ちゃんが言ってたことが有る
だから、池田君はピッタリだと思うな ・・・
「そうだな
大野、櫻井の事頼むな
もう少し突っ込んでいいから
聞いてやって
何やかや言って、彼奴はお坊ちゃまだから
人間らしくなったけど
その分迷いが出て弱くなってるから」
「うん、彼にも伝えたよ
電話するし、電話して欲しいって
ただ ・・・ もどかしくなる
飛んでいけないのが ・・・
これからも池田君に頑張って貰わないと(笑)」
「あはは 確かにそうだな
大野の口からその言葉が聞けたから
俺は一安心だ ・・・
内田にも伝えるよ
櫻井は元気になったって」
「それは僕の方から行っても良いよ
彼奴は今、幸せ君だから
「良かった」で終わるはず」
「確かに幸せ君だわ
じゃあ、また連絡するよ
そんじゃ」
「貴重なお昼休みに電話くれて
ありがとう
じゃあ、またね」
「お~」
明るい声を残して電話が切れた
予想通りだったから
そこまで驚いていないけれど
これからもあるかもしれないな ・・・
<続きます>