智翔旅行社分室 チーフの奮闘! 35 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

桜の精の皆さんのおもてなしを済ませた後

上毛屋・若智屋の関係者の方々と風っ子の3人を

労うためにお茶を振舞い

漸くさとち達紅玉面々と翁の番となりました

 

 

「じいちゃん ・・・ ごくろうしゃまでちた」

 

さとちがお茶を妖精三人がお菓子を運んでいく

その愛らしい姿に目を細める翁

 

「このお茶はさとし殿が淹れてくれたのかな?」

 

「おいらがいれまちた」

 

「それはそれは ・・・ 有難く頂くよ」

 

「おかちはわかさとしゃん!」

3人が元気よく叫ぶ

 

「あやつの菓子は美味しいから

 皆も一緒に食べなさい」

 

既に茶席ではなく

慰労会の様相

車座になって真ん中に置かれたお菓子を

それぞれが手に取りお茶と共に頂く

 

「若主人の菓子は見事ですねぇ」

大ちゃんが感嘆の声をあげる

 

「食べるの勿体ないほどの美しさです」

 

蒼ちゃんもお菓子を手に取って眺め

感心しきりの顔をする

 

「皆様に喜んでもらいたい一心で

 二人で拵えたようです」

 

「しょうだんなしゃんもかんがえちゃの?」

 

「着物の袖に桜の花を咲かせたい

 そう言ったのは翔旦那じゃ

 それを形にしたのが智

 見た目だけで味がそこまでと言うものなら

 可愛げがあるが ・・・ 味も妥協しない

 菓子職人になるのかと聞いた事もございます 」

 

若主人の話をす翁はそれはそれは嬉しそうだ

 

「あの方は自分が納得できなければ

 良しとはされないでしょう

 そうでなければ

 あそこまで緻密な絵は描けません」

 

「絵を描き始めると

 無心に描き続ける

 それこそ寝食を忘れて ・・・

 菓子もそうだったようじゃ」

 

その様子が目に浮かぶのか

嬉しそうに笑う

 

「自慢の息子さんですね」

 

大ちゃんがニッコリ笑う

 

「じいちゃんのむすこしゃんなの?」

 

「儂は坊主じゃ ・・・ 子はおらぬ ・・・

 そんな儂の ・・・ 」

 

「大事な息子さんです」

 

「息子みたいなものじゃな

 あやつは嫌がるかもしれぬが(笑)」

 

「嫌がりませんよ

 あの方にとって、翁は大事な親です」

 

蒼ちゃんがそう言って遠くのお山を見つめた

蒼ちゃんのお父さんも同じ山を見つめてた

 

「おちびちゃんたち

 お兄ちゃんたちと一緒に

 お菓子を頂いてきて」

 

「は~い」

 

お兄ちゃんのお膝めがけて飛んでいくさとちと

お父さんたちがの膝をめがけて飛んでいく3人

その後姿を見送りながら目を細める翁

 

「さとし殿を見てるとあやつの昔を思い出します ・・・

 蒼殿 ・・・ 少し儂の四方山話を聞いてはくれぬか」

 

突然言われて驚く蒼ちゃん

大ちゃんは黙って笑みを浮かべて

翔先生の方に向き直った

 

 

「私ですか?」

 

「ああ、蒼殿に聞いて欲しいんじゃ」

 

「では、聞かせて頂きます」

 

「儂が若かったころの話じゃ ・・・」

 

「翁は元服前に仏門に?」

 

「ああ ・・・ 家の事情と言う奴じゃ ・・・」

 

「大きなお寺でしたよね」

 

「かなり大きな寺じゃな

 その寺の僧侶の中で一人変わったお方がいた

 位の高い僧侶なんだが ・・・

 人里離れた山の麓に庵を作って

 そこで暮らしておられた 

 偶に寺に顔を出す時は

 薬草や丸薬を持ってこられる

 その薬草や丸薬はかなり効き目があってな

 かなりの高値で取引をされていた

 その方はそれで得た利益の半分を寺に寄進し

 その半分を持って帰られるんじゃ ・・・

 大体を必要な物に代えてな

 その荷物がかなり多いんじゃ ・・・

 誰にお渡しになるのかと訊ねたら

 丸薬は一人では出来ぬぞと笑っておられた

 その言葉で、まさか女子でも引っ張りこんでるのではと

 噂が立ってな、慌てた法主さまが

 儂に様子を見て来るようにと頼むものだから

 その方の元に走ったんじゃ

 何故か分かるか?」

 

「女犯を犯した僧侶は

 寺持ちであれば遠島

 そうでなければ晒され寺に帰され追放となる・・・」

 

「その通りじゃ ・・・

 日本橋の前で3日間晒され破門される

 儂が向かった庵には

 全くと言っていいほど誰の影もなくてな

 肩透かしもいいところじゃった ・・・

 猫の額ほどの畑を耕しながら

 ほんとに質素な暮らしをされていらした

 仏に仕えるとはこう言うことなのだと

 その時、教えられたんじゃ」

 

「そうですか ・・・」

 

蒼ちゃんの瞳が少しだけ濡れる

(爺 ・・・)

 

「淋しくないのかと聞いたら

 儂には大事な息子がおるからなと

 山の方を眺めて笑っておられた

 また変わったことを言うと思っていたが ・・・

 時が過ぎて ・・・一人での生活が難しくなって来た頃

 寺の近くに小さな庵を用意してくれと言われ

 儂が今住んでいる庵が出来たんじゃ

 そこに戻って来られてからも

 何故か薬草や丸薬が届く ・・・

 初めてあの話が眉唾ではなかったと気が付いてな

 大事な息子さんが届けてくれてたんじゃな ・・・」

 

「その方は ・・・ 笑っておられましたか? ・・・」

 

蒼ちゃんが絞り出すような声で訊ねる

 

「『儂ほどの果報者はおらぬと』と笑っておられた ・・・

 大事な息子に伝えて欲しいと託された言葉があるのじゃが

 何処に行けばいいのか分からず ・・・

 そのままになってしまったのが心残りじゃ」

 

「翁は ・・・ その息子に会った事は?」

 

「何度か遠くから姿だけは見たことがある ・・・」

 

そう言って蒼ちゃんの顔をじっと見つめる

 

「何と言付かったのですか?」

 

「『必ず会いに行く、その時は笑って迎えてくれと』と ・・・」

 

蒼ちゃんの瞳から一滴の涙が

ゆっくりと頬を伝い

手の上に零れ落ちた

 

「翁 ・・・ まだ、山の麓の庵は有りますか?」

 

爺さんがいなくなってからは

訪れることはなかった

別の僧侶が済む可能性もあったからだ 

 

「誰も住んではおらぬが ・・・」

 

「それではお願いがございます

 そこに行って ・・・

 今の言葉を叫んで頂けますか?」

 

「儂ではなくあの二人でも良いだろうか?」

 

「あの二人でも構いません ・・・

 山に住む息子が喜ぶと思います」

 

「そうじゃな ・・・ 直接伝えてやらんとな

 漸く ・・・ あの方の想いを伝えられる ・・・

 済まなかったな ・・・

 儂のよもやま話に付き合って貰って」

 

翁が肩の荷を下ろしたのか

安堵の表情を浮かべた

 

「聞かせてくださり

 ありがとうございました ・・・

 彼は ・・・一人ではなかった ・・・

 いつも誰かがいてくれた ・・・」

 

両手で顔を覆って暫く黙り込む蒼ちゃん

その背中を大ちゃんが優しく撫でて

緋~ちゃんを手招きした

 

「儂の庵にも訪ねてくれればよいが ・・・

 欲張りは駄目じゃな

 儂にも立派な息子が3人もおる(笑)」

 

翁が視線を大ちゃんに向ける

 

「若主人に翔旦那、それと和也殿ですね」

 

「ああ、3人とも出来た息子でな(笑)」

 

「存じ上げております」

 

「翁 ・・・ お茶のお変わりは如何ですか?

 少し違うお茶をお出ししますよ」

 

「違うお茶をかね?」

 

「ええ、特別です(笑)」

 

 

「泣かせてしまって済まなかったな」

大ちゃんに小声で伝える翁の瞳も

少しだけ濡れていた

 

「いいえ、私からもお礼を申し上げます

 蒼には大切な話です」

 

緋~ちゃんが泣いてる蒼ちゃんを見て

慌てて肩を抱き寄せた

 

大ちゃんは翁と一緒に席を立ち

特別なお茶の支度を始めた

それを見たさとちが手伝いを始めた

 

 

蒼ちゃんの側にお父さんが来て

蒼ちゃんの事をギュッと抱きしめた

 

 

「父さん ・・・ 」

 

「ああ ・・・ 話を聞けて良かったな」

 

お父さんの腕の中で何度も頷いて

 

「一人じゃなかった ・・・

 見えていなかっただけで ・・・

 沢山の人が支えてくれてた ・・・」

 

「翁の心にも智はいた ・・・

 声を掛けたかったのかもしれないな」

 

「気に掛けてくれてた ・・・

 それだけで ・・・ 充分です ・・・

 同じ時代を生きた彼らの中に俺はいた」

 

「そして ・・・ 今に繋がっていく ・・・

 お前が繋いできたご縁なんだよ」

 

「うん ・・・ 泣いてたらダメだね

 『笑って迎えてくれ』と言ってくれた爺さんに叱られる」

 

「そうだな、思いっきり叱られるぞ(笑)」

漸く笑みを浮かべた蒼ちゃん

 

 

 

江戸への花見ツアーを企画した大ちゃんの想い

蒼ちゃんにも伝わったようです

 

 

 

 

 

 

<続きます>

 

 

翁の茶会をお楽しみくださり

ありがとうございます

こちらの部屋のお茶会は終わりました

(別部屋は進行中ですが)

あと少しだけですが

お付き合いください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<続きます>