Wish you were here 164 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

屋敷へと向かう道をゆっくり歩いて行く

車の侵入は禁止されているようだ

広い道の真ん中に立った大野さんが

不思議そうな顔をする

 

「こんなに広い道 ・・・ 

 馬車?それとも車?が通ったのかなあ ・・・」

 

どっちだろうって顔をして

俺に訊ねる

 

「明治の中頃には車はありました

 かなり高価だけど ・・・

 このお屋敷を建てるくらいですから

 この邸の主は何台も持っていたと思います」

 

この邸の主は明治維新後

財閥と呼ばれるほどの財をなした

偶にテレビで取り上げられたり時代劇にも登場する

一応、物書きという職業の端っこに居る以上

歴史も少しばかり齧った

 

「きっと、とんでもないお金持ちですね

 ここ ・・・ ほんとに森みたいだ ・・・」

 

結構な距離を歩くと

道が開けて車寄せが見えてくる

そこは未だに砂利道

当時の面影を残している

 

「あれが玄関ですか?」

 

「ええ、いきなりヨーロッパでしょ?」

 

「はい ・・・ すごい ・・・ 」

 

大野さんが立ち止まって

目をパチクリしながら建物全体を見回した

 

「イギリスの有名な建築家の設計らしいです

 内装もこれでもかって言うくらい豪華で

 一体いくら掛かったんだって思うほど

 唖然としますよ(笑)」

 

「これが明治の時代の建物 ・・・」

 

「木造ですよ」

 

「木造?」

 

また驚いた顔をする

それがかなり可愛い

 

彼の背中に手を添えて中に入るように促す

 

「あの ・・・ この邸は蒼さんが言ってた

 爺さんの持ち物なんですか?」

 

「今ですか?」

 

「ええ」

 

「この敷地と屋敷は都の管理になっていたはず」

 

「他にも有るんですか?」

 

「ええ、都内に数か所、屋敷を持っていたようです

 現存してる洋館はここともう一つ ・・・

 ベールに包まれた洋館と呼ばれています

 そこは現在も松岡財閥の所有で非公開

 中の様子も全く分かりません」

 

「じゃあ、月ごとに帰る家が違うんですか?」

 

「彼が暮らしたのはこの邸で

 非公開の屋敷は息子さんの邸宅だったようです

 年に一度、花見の会が催されるようですが

 招待客以外は入れないようです」

 

「じゃあ、僕に入る機会はないな(笑)」

 

「それは俺もですよ」

 

「ふふ ・・・ 櫻井さんは物知りなんですね」

 

「小説の舞台になりそうな場所はリサーチするので ・・・

 ただ、それが作品になるかと言われると ・・・

 中々難しいですね(笑)」

 

ここは笑い飛ばすしかない

 

「インスピレーションが湧くって事ですよね」

 

「あまり沸いてくれないですが(笑)」

 

「湧いてくるのを待ちましょう

 僕もそうだから ・・・」

 

励ましてくれてるような気がする

この人もモノづくりをするから

共感してくれたのかな

 

「ええ、降りて来てくれるのを待ちます(笑)

 それじゃあ、中に入りましょう」

 

この人といると凄く優しくなれる気がする

何でも素直に受け取れるんだ ・・・

それは惚れてるからだけではないと思う

この人の人柄 ・・・ 温かさだ ・・・

妖精君が懐くのも分かる気がする

 

 

大野さんが柔らかい笑みを浮かべて

小さく頷いてくれた

 

 

休日だとガイドの人がいて

内部の説明をしてくれるけど

平日はボランティアガイドはいないようだ

 

豪奢な作りの内部を見回しながら

主の書斎に入ると

大野さんが小さな声を上げた

 

「あっ ・・・ そうなんだ」

 

「どうかした?」

 

「天井の模様 ・・・ 壁紙 ・・・

 蒼さんの店と同じなんです ・・・」

 

子どもがパズルの答えに辿り着いた時のような

無邪気に笑う大野さん

その顔があまりにも可愛らしくて

しばし、フリーズしてしまった

 

「確かに、似ています」

 

あの家も相当古い洋館だと思う ・・・

 

「きっと、その爺さんが蒼さんの為に建てた家ですね」

 

「そうか ・・・ きっとそうです」

 

他の誰が言っても

寝惚けたことをと言ってしまいそうだけど

大野さんが言えば信じられる

 

それに ・・・ あの二人なら ・・・

この時代にもいたような気がする

 

 

今度聞いてみようかな?

ベールに包まれた洋館

 

いとも簡単に答えてくれそうな気がする

 

「どうしました?」

 

ニヤニヤ笑ってた俺が不思議だったのか

大野さんが怪訝な顔をする

 

「ベールに包まれた洋館

 彼は行った事が有るのかなって思って」

 

「あぁ ・・・ 知ってるかも

 今度聞いてみましょう(笑)」

 

少しずつ共通の話題が出来ていく

今はそれだけ ・・・

 

 

 

 

 

 

<続きます>