キミの夢を見ていたい(扉の向こうにある未来)28 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

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大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

花の匂いしか食べられなかった幼いさとしと出逢って

3年近くの月日が流れてた

小さな花の妖精は俺の中では大きな大きな存在

元気にしてるだろうか?(泣いてないかな?)

時折風に乗って聞こえる子どもの声 ・・・

舌足らずな言葉が懐かしくて、声が聴きたくなる

 

何一つ変わらない日常

ただ ・・・ キミがいないだけ ・・・

 

大人になる為の勉強をしてるキミに

長い手紙を書いた

(淋しいのはお兄ちゃんもなんだよ)

 

 

手紙を届けて貰おうと思って ・・・

会社帰りに店による

 

「いらっしゃいませ」

和さんの声が聞こえた

 

「ご無沙汰してます」

 

「ああ ・・・ お兄ちゃん

 お久し振りです

 お元気でしたか?」

 

何となく素っ気ない挨拶

 

「何とか元気でいます」

 

「それは良かったですね

 それで?」

 

何か用があるのかと言わんばかりの眼差し

さとしが居なければ応対も素っ気ないって事か ・・・

 

「あの ・・・ さとしくんは元気でしょうか?」

 

そう訊ねると、まじまじと顔を見つめて

小さく溜息をついた

 

「やっと来ましたね ・・・」

 

呆れた顔で見つめられた

やっと ・・・ 遅いって事?

 

「来るのが遅いって事ですか?」

 

「腹を括るのが遅いって事です ・・・」

 

今日の和さんは機嫌が悪い気がする

 

「腹を括るとは ・・・」

 

「和 ・・・ ストップ!」

 

奥から蒼ちゃんの声が聞こえて

金髪の彼が顔を出した

 

「ご無沙汰してます

 お元気でしたか?」

 

笑顔の蒼ちゃんが和さんと入れ替わるように

机の向こう側に座った

 

「和、俺が店番するよ」

 

和さんが物言いたげな顔で俺を見て

そのまま奥に入って行った

 

「和は一番過保護だから(笑)

 で、今日はなんのご用ですか?」

 

蒼い瞳が心の中を見透かすように見つめる

 

「中々、顔を出せなくて申し訳ありません」

 

「それは別に構いませんよ

 お兄ちゃんはお兄ちゃんの生活がある

 お仕事もあるだろうし

 キミさん探しもおありだろうから」

 

蒼ちゃんに言われるまで

すっかり忘れていたエルダーの君 ・・・

 

「エルダーの君 ・・・ ああ ・・・ 失念していました ・・・

 さとしがエルフの国に戻ってから ・・・

 なんだかぽっかり心に穴があいた気がして ・・・

 ずっと仕事に没頭していました ・・・

 気が付いたら3か月も過ぎていて ・・・ すみません ・・・

 今日は手紙とTシャツを届けて頂こうと思って ・・・

 向こうの世界は夏なんですよね?」

 

封筒と一緒に洋服の袋を机の上に置いた

 

「お兄ちゃん、確認ね

 これはチビ宛ての手紙とTシャツで良いんだよね?」

 

笑顔なのに瞳は笑っていない

茶化してる訳じゃない事が分かる

 

「はい、さとし君への手紙とシャツです」

 

「畏まりました、チビに届けます

 ええ、エルフの国はもうすぐ夏です」

 

手紙とシャツが入った袋を自分の方の引き寄せて

ニッコリ笑う

 

「一つ質問していいですか?」

 

「質問?良いですが」

 

「最近、夢を見ませんか?

 チビらしき妖精の夢」

 

「さとし君によく似た妖精が

 俺の名を呼ぶ夢は見ます

 ただ ・・・ 起きると内容が朧げで

 よく憶えていないです」

 

お兄ちゃんと呼ばれて起きることもある

それは夢なのか、さとしが呼んでるのか

どちらかは定かではない

 

「まだ朧げなんですね ・・・

 因みにチビに名前で呼ばれたことは有りますか?」

 

「ないです、さとし君は俺の名前を知りません」

 

子どもには名前は必要ないと思った

最近は翔先生と同じ名だから混乱しないように

敢えて教えていない

 

「そうだった ・・・ 例え聞いていても ・・・ 憶えない ・・・」

 

蒼ちゃんが淋しそうな顔をする

 

それはどういう意味?

俺の名前を覚えない?

 

「理由はいずれ分ります ・・・ 

 それより、鍵は見つかりましたか?

 というか、大ちゃんに逢いましたか?」

 

「いえ ・・・ 逢っていません ・・・」

 

この店に来ていないんだから

会ってない事くらい分かるはずなのに

 

「どうして分かり切った事を聞くんだって顔してる

 確認は必要なんです

 大ちゃん自ら動くことは無いと思いますが

 念のためです」

 

「念のためですか?」

 

蒼ちゃんは俺の問いには答えない

俺の事なのに関係ないという顔をして

受け流して違う話を始める

 

「今から時間ありますか?」

 

「はあ ・・・別に予定は有りませんが ・・・」

 

「じゃあ、少しだけ付き合ってください

 多分ですが、大ちゃんが力を貸してくれるはず(笑)

 少し待っててくださいね」

 

机の上の袋と手紙を手にして

立ち上がり奥に入っていく

それと入れ替わるように

雅紀さんがお茶を持って出てきた

 

「お兄ちゃん、いらっしゃい

 お茶をどうぞ」

 

彼の笑顔が一番柔らかい気がした

 

「和さん、ご機嫌斜めなんでしょうか?」

 

「ああ ・・・ さとし君が向こうに行って

 和も淋しいからじゃないかな ・・・

 エルフ時間で1週間ごとに逢いに行ってるけど ・・・

 最近、淋しそうにしてるって ・・・」

 

「泣いてるって事ですか?」

 

胸がギュッと締め付けられる気がした

 

「泣いてはいません・・・ 時折見せる表情がね ・・・

 蒼ちゃんに似て強がりですから

 向こうに着いて1週間目が

 一番淋しそうだったらしいです

 だから ・・・ 遅いって言ったんだと思います」

 

「すみません ・・・ 仕事に没頭していました ・・・

 休日にすることが無くなってしまって ・・・

 考えると ・・・ 夢のような1年でした ・・・」

 

失って初めて気が付くこともある ・・・

 

「どうぞ、召し上がって下さい

 すぐに来ると思います

 蒼ちゃん、エルフの国に帰る時間なので」

 

ああ、すぐに届けてくれるって事だ ・・・

 

「お兄ちゃん、エルダーの君の事は忘れないでください

 それが一番重要な鍵だと思います」

 

 

「ふふ ・・・ お節介な奴がここにもいた(笑)

 お兄ちゃん、そのお茶飲み干してね

 大ちゃんのお茶だから」

 

「蒼ちゃん、用意できたの?」

 

「緋~ちゃんが買った荷物多すぎ(笑)

 一緒に帰れないのにたくさん買うから」

 

「それは仕方ないよ

 ご実家に帰る日だったんだから」

 

ひ~ちゃんの実家って

エルフの国じゃないの?

 

「あの ・・・ ひ~ちゃんのご実家って ・・・

 この世界にあるんですか?」

 

「ひ~ちゃんの両親は人ですから」

雅紀君が即答した

 

「人でもエルフの国に入れるんですか?

 それなら俺も会いに行けますよね?」

 

エルフの国に行く道があるんだ

まさか、ひ~ちゃんが人だったとは ・・・

 

「お兄ちゃん、そう簡単にはいかない

 鍵は大ちゃんが持ってるって言ったでしょ?」

 

蒼ちゃんが真面目な顔をして

頭を左右に振る

大ちゃんに逢えば道が開けるって事なのか?

 

「さて、お茶を飲んだら付き合ってくださいね

 漏れなく、荷物半分が付いてきますけど(笑)」

 

蒼ちゃんが笑顔で大きな紙袋を一つ机の上に置いた

 

 

 

 

 

<続きます>