answer 41 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

どうして留学を選んだのか?

ずっと考えてた、導き出した答えは 

煩わしいことから逃げ出す手段

それだけだった

家柄だけは超一流の相手との縁談が

ひっきりなしに舞い込んで

あのまま、ここに留まっていれば

親の言う相手と見合いし所帯を持たされてた

 

留学という言葉は、親にとっても都合がいい

『洋行帰りの息子』には箔が付く

 

正直、描く夢など持ち合わせてはいなかった

語学を習得して、事業を継げばいい

そんないい加減な留学だった 

 

貴方に出逢って考えたんだ

俺は何がしたいんだろうって

 

親父がやってる事と大差ないかも知れないけど

海外で学びたい若者を受け入れる場所、体勢を作りたい

それが引いてはこの国の発展に繋がる気がするんだ

 

書生として学校に通う

それと同じように、海外で学ぶ場を提供できれば

その為に土台作りをしようって思う

いつか、貴方が来てくれる日を想い描きながら

俺は俺の夢を形にする

会えなくても頑張れるから

 

 

貴方が朝餉の後、俺の部屋まで来て

お別れの挨拶をしていった

 

「見送りには行けないから

 この場所で見送らせて頂きます

 翔君の夢が叶うと信じてる

 体に気を付けて、元気でいてください

 お気をつけて行ってらっしゃい」

 

堅苦しい言葉は相変わらずだけど

珍しく貴方が俺の手を握って

余所行きではない、人懐っこい笑顔で握手してくれた

その温もりが今もこの掌にある

 

泣きたいほど大好きで

このまま貴方をカバンに詰めて連れて行きたい

そう叫びたい想いを、寸前の所で飲み込んで

笑顔で「行ってきます」と告げた

 

 

見送りはいらない

この屋敷が旅立ちの場所

 

 

昨日、雅紀がしつこく出発の時間を聞く

見送りはいらないと何度告げても

 

「翔ちゃんは水臭い事ばかり言う

 幼馴染が留学するんだよ

 俺に見送らせて!」

 

涙目になりながら、思いっきり叱られた

 

「仰々しい見送りでなければ良いよ」

 

「行くのは俺だけだよ

 大ちゃんが一緒に来るなんて期待しないでよ」

 

ニヤリと笑って釘を刺された

 

「アハハ ・・・ 期待はしてないから安心しろ

 友人として過ごせた数日が今の俺の宝物

 彼と並んで歩けるようになったら

 何度でも告白する

 それまでは、俺はお前と同じ友人の一人」

 

過度な期待はしない

万が一、見送りに来てくれたら

泣いてしまうかもしれないから

 

 

cafeに寄って駅に向かおうって思ったけど

気持が揺らぎそうで諦めた

 

 

東京駅は新駅舎の建築中で入口が分かりにくい

アイツ、改札分るのかな?

少し余裕をもって駅に到着したが

改札に雅紀の姿はない ・・・ 間にあうかな?

プラットホームまで見送りにくると言っていたから

改札を抜けて欧亜列車のホームに向かう

発車時間まで、まだ数十分ある

客車に荷物を置いて、ホームに出て待つことにした

 

階段を上ってくる人影をぼんやり眺めながら

貴方の事を思い出す ・・・

ホントに愛想も何もない人だった

何を言っても笑ってくれなくて

貴方の瞳に俺は映ってなかった(笑)

やっと貴方の瞳に俺が映った時は小躍りしたんだ

それも俺の宝物になった

 

駅の時計が出発時間が近い事を教える

 

何か有ったのかな?

彼奴の事だ、お茶だ饅頭だと買い込んでそうだけど

 

「雅紀、気持ちだけ貰っておくな

 あの人の事頼んだから」

小さい声で呟いて、列車に乗り込んだ

 

 

丁度ホーム側の客車、列車の窓を上にあげて

階段から来るであろう雅紀を探す ・・・

 

ホームには沢山の見送りの人

沢山の友人に囲まれたモダンボーイ

家族総出で、母親らしき人がハンカチーフで涙を拭う

恋人に見送られる男性 ・・・ 其々に物語がありそうだ

見送りのいない俺が、少しだけ可哀想に思えてきた(笑)

 

 

あれだけ思わせぶりに時間を聞いておいて

姿を現さない雅紀を少しだけ恨めしく思った

諦めて窓を閉めようとした時

 

階段を駆け上がってくる ・・・ 雅紀

えっ? ・・・ なんで?

慌てて、ホームに飛び出した

 

 

智君! ・・・ 智君! ・・・ 智君!

 

背伸びをして手を振りながら、大きな声で叫んだ 

見送りには来ないって言ってたから

幻かと思った ・・・ 何度も目を擦った

鼻の奥がツンとして ・・・ 泪が零れ落ちそうになる

 

貴方が俺を見つけて駆け寄ってくる

 

「ハアハア ・・・ 翔君 ・・・ 間にあった」

 

荒い息を吐きながら額の汗を拭う仕草

 

「どうして?」

ビックリした顔で訊ねると

当然って顔をして

 

「ハア ・・・ んっ ・・・ 友人が留学するのに

 見送らないのは如何なものかと思って ・・・

 相葉君から時間は間に合うって聞いたから

 あれ?相葉君も一緒だったんだけど」

 

そう言って、ホームをキョロキョロ見回してる

 

雅紀は柱の陰に隠れてる(笑)

気を使ってくれたんだ 

 

「雅紀と一緒だったの?」

  

「一緒に上って来たんだけど

 可笑しいな ・・・」

 

小首を傾げて辺りを見回す

 

「そうだ、列車の中で食べる物を買っていて

 遅くなってしまたんだ ・・・

 あんパンとジャムぱん(笑)

 こんなものしか用意できなかった」

 

紙袋を俺の手に置いて、ニッコリ笑う

 

「二人の思い出のパンだから嬉しいよ

 一緒に食べれないのが残念だけど ・・・」

 

半分に割って二人で食べたかった ・・・

 

「帰って来た時食べれば良い

 パン屋は逃げていかないから ・・・

 翔君、手紙書くから」

 

「俺も書くから ・・・ 毎日書くよ」

 

「アハハ ・・・毎日じゃなくて良いよ

 巴里がどんな都なのか教えて」

 

「ああ ・・・ 俺が見た全ての物を教えてあげるから」

 

知らず知らずに、彼の手を両手で握り締めてた

 

「相変わらず、西洋式だね(笑)

 今日は許す」

そう言ってクスクス笑う

 

「それにしても相葉君は何処? ・・・

 相葉君 ・・・ 相葉君 ・・・」

 

大きな声で雅紀を呼ぶから

渋々姿を見せた雅紀

 

「大ちゃん ・・・ ここだよ

 翔ちゃん、ハラハラしたでしょ?

 間にあってよかった」

 

苦笑いを浮かべて貴方の隣に並ぶ

 

「ああ ・・・ お前の姿を探したよ ・・・

 雅紀、ありがとう ・・・ 感謝する」

 

雅紀も紙袋を目の前にぶら提げて

 

「大ちゃんがパンを買ってたから、

 俺は日持ちがしそうな物にした

 ビスケットとドロップ」

 

そう言って、俺に手渡した

 

「俺たち、そんなお金持ってないから

 これが精一杯 ・・・ 餞別にもならないね」

 

貴方と雅紀が顔を見合わせて

申し訳なさそうに笑う

 

「ううん ・・・ 見送りに来てくれたことが一番嬉しい

 何もいらなかったのに ・・・ 気を使わせて済まない ・・・」

 

ダメだ ・・・ 泣きそうになる

 

「泣いちゃダメ!

 笑顔で行ってきますって言ってください

 僕達も笑顔で見送ります

 次に会う時まで、その笑顔を覚えていたいでしょ」

 

貴方が柔らかい笑顔浮かべて

俺と雅紀の顔を順に見詰めて大きく頷いた

 

 

笑顔で ・・・ 笑顔で ・・・

 

 

俺の背中に手を添えた貴方が

 

「そろそろ出発の時間だよ

 次に会える日を楽しみにしています

 お気をつけて」

 

「翔ちゃん ・・・ 気を付けてね ・・・」

雅紀が泣きそうな顔で笑う

 

「じゃあ ・・・ 行ってきます

 2人とも元気で、今日はありがとう」

 

列車に乗り込んで、客室の窓を開ける

 

「智君、もし巴里に留学したいと思ったら

 手紙に書いて ・・・ 向こうで待ってるから」

 

貴方は黙ったまま笑みを浮かべて小さく頷いた

 

列車は汽笛を鳴らして動き始める

 

雅紀が千切れんばかりに手を振る

貴方が笑顔で手を振る

 

二人の姿が涙で滲んでぼやけて見える

それでも必死で手を振った

貴方の選んだ未来に俺がいることを祈って

 

 

 

 

 

 

<続きます>