answer 31 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

月がとっても綺麗な夜 

見上げた夜空に浮かぶ星が遠慮がちに瞬いてた

 

視線を感じて向きを変えると

今にも泣き出しそうな顔をしたお坊ちゃまが佇んでいた

 

「どうかしましたか?」

 

そう声を掛けると

ハッとした顔で両手で瞳を擦った

 

「少し酔いが回ったのかも知れません」

切なげな表情が発した声は低く口籠ってた

 

自分の壮行会だから

少々感傷的になったのかも知れない

 

僕でさえ、いつでも帰れる距離であっても

上京するとき感傷的になった

渡航するとなると、淋しさも数倍感じるのかな

向こうに着いてしまえば、そこが日常になるから

淋しさも薄れていくと思うけど ・・・

 

船に乗ってる時間が一番淋しいのかも知れない

 

「向うにも沢山のご友人がいるのでしょ?」

 

「向う? ・・・ ああ ・・・ 友人はいる事はいるけど

 どうしても、言葉が上手く伝えられなくてね ・・・

 馴れるまで時間がかかる ・・・」

 

伏目がちの顔には、いつもの自信が窺えない

 

「行くのが淋しくなってしまった?」

 

「ああ ・・・ 行きたくないと思ってしまう ・・・」

 

ボソッと呟く言葉の重み

分かって行ってるのかな?

 

「初めて聞いた、翔君の弱音 ・・・

 弱音吐かない人だって思ってた 

 でも、一時的な感情だよ

 向こうに着けば、向こうでの日常が始まる

 船の長旅を考えると淋しいのかな・・・」

 

大海原を渡るなんて

僕には想像できないけど

 

「船旅だと ・・・一月半は掛かるんだ

 今回は金ケ崎まで鉄道で行き

 そこから航路でウラジオストックまで行って

 シベリア鉄道でヨーロッパに向かう

 船と鉄道を使えば、大体半分の日数で向こうに着ける

 船旅はホントにきついから ・・・」

 

思い出すのもキツイって顔をする

最初は船だったんだ

50日近く船に乗るってどんなんだろう

どっちも、あまり僕には関係ないけど

 

「蒸気機関車で金ケ崎、そこから船と列車 ・・・

 列車の旅も座ってる時間が多いから大変だ

 でも1等客室なら快適かもしれないですね」

 

櫻井家の財力であれば1等客室の移動のはず

って、僕には雲の上の話

 

「行ってみたいと思いませんか?」

お坊ちゃまが瞳を輝かせて訊ねる

 

「う~ん ・・・ 僕はここが合ってるような気がします」

 

「絵の勉強ならパリとかに行くべきでしょ?」

 

行くべきって言われても

そんな事考えたことも無い

 

「叶わない夢は見ない事にしてるから

 それに、まだ修行中 ・・・ 

 自分がどっちに向かいたいかも考えたことないから」

そう答えると、凄く悲しげな顔をした

 

しばらく黙ってたお坊ちゃまは

真剣な眼差しで見つめて

 

「美術学校で優秀な成績を収めた者は

 パリへの留学を許されると聞いたことがあるけど

 それに挑戦してみようとは思わない?」

 

その話は聞いたことはあるけど ・・・

自分がそれに挑戦したいと思った事はない

 

「あまり考えたことはないです

 今は基礎をしっかり学ばないと ・・・

 それからです ・・・」

 

今の場所にいる事で必死なのに

将来の事は分からない

 

「いつか考えてくれませんか

 向こうで待っていますから」

 

「向うで待っている?

 それはどういう意味でしょうか?

 それにそんな軽はずみな約束は出来ません」

 

彼は至極真面目な顔をして

 

「僕は貴方に惹かれています

 この想いに名前を付けるとしたなら

 それは恋 ・・・ だと思っています

 返事はいりません

 向こうに発つ前に僕の想いだけ伝えたかった」

 

それだけ告げて、空を見上げて歩き始めた

 

恋? ・・・ 僕に恋をしてる?

もしかして聞き間違いかも知れない

 

意味が分からない僕はずっと彼の背中を見てた

 

 

 

<続きます>