A Sweet Moment 64 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

こんなに愛されてて良いのかなって思ってた

貴方は優しくて、俺の我儘をいつも受け止めてくれて

だから、考えた事もなかった、俺の傍からいなくなるなんて



大学を辞めた

ダンスをしたいんだ

NYに行くことにした



その言葉が俺の胸に突き刺さって

体中の水分が二つの目からとめどなく零れ落ちる



一緒に旅行に行こう ・・・ そう言ったのは貴方なのに ・・・

ずっと傍に居るよ、どこにも行かないからって ・・・ 指切りしたのも貴方なのに



全部嘘だったの?   

一瞬でも俺の事考えてくれた?

大学さえ合格すればいいって思ってたの?

何を話し合えばいいの?



もう決めてしまったと、10日後にはNYに発つと

そう言い切った貴方の瞳に迷いはなかった

答えは出てるのに ・・・ 


相談すらして貰えなかった俺の存在

薄っぺらくて紙切れみたい ・・・ 情けなくて悔しくて ・・・



いっそ別れて欲しいって言ってくれた方が諦めもつくのに

ズルイよ ・・・ 俺に決めさせるなんて



朝から晩まで ・・・ 果ては夢にまで

その事だけが堂々巡り ・・・ 

それでも答えが出なくて 




・・・ 疲れ果てて ・・・

もう ・・・ どうでもよくなって ・・・ 

このまま ・・・  答えを出さないまま ・・・

終わってしまえばいいって ・・・ だから連絡もしなかった




卒業式の後、雅紀たちが俺の教室の前まで来た


「翔ちゃん、卒業おめでとう」

って、笑顔なのに少し淋しそうに呟く雅紀


「「ご卒業おめでとうございます」」

って、二宮君と松本が笑顔でお辞儀した


そんな3人の言葉も頭の上を通り過ぎていく


「ありがとう」

抜け殻のような俺を、心配そうに見る3人

それでも深く聞いてこないのは知ってるからだよね


どうしても気になってた事が口を付いて出た


「松本は知ってたんだろ?大野さんが大学止めた事も

 それからNYに行く事も」


松本はばつが悪そうな顔で俯いて


「知ってたというか ・・・ 

 ダンススクールの先生がチラッと話してたのを聞いただけで

 大野さんから直接聞いてはいません、確認もしていません

 あの時、先輩が違うって言ってたから ・・・」

って、辛そうに呟く


「翔ちゃん、嘘じゃないよ ・・・ 一昨日聞いたんだよね先生に

 潤君すぐに電話くれて ・・・ その時凄くショック受けてたから 


 だから、本人に確認しようって

 昨日、3人でカンテラまで会いに行ったんだ」


「バイトは辞められていました ・・・

 マスターが ・・・ 送別会を開くから来てほしいって

 先輩にも伝えて下さいって」


三人とも淋しそうな顔してる ・・・ 



「そう ・・・ 俺だけが知らなかったって事じゃないんだ ・・・

 夢を叶える為にNYに行くんだ、笑顔で送り出さないと


 ごめん ・・・ 送別会か ・・・ 行けるかどうかわからない

 いろいろ忙しくて ・・・ 

 もし行けなかったら伝えてくれる、元気で頑張って下さいって


 ありがとうな ・・・ この後、クラスで卒業祝いがあるから ・・・ 」


それだけ言って、教室に入ろうとした時



二宮君が俺の腕を掴んで引っ張って、二人から離れたところで


「あの ・・・ マスターが後悔しない様に向き合いなさいって

 それだけを伝えて欲しいって」

 って小さい声で呟いた 



向き合っても変わらない事実 



会えば引き留めてしまう

言いたくもない事言って傷つけて

ドンドン醜くなる自分を見たくないんだ


どんなに頑張っても

笑顔で送り出せない、泣いてしまうから



それに ・・・ 貴方は待ってて欲しいって言ってくれなかった ・・・



それが答えなんじゃないの ・・・

話すことなんてないのに ・・・



先生を囲んでクラスで卒業祝いの食事会の後

星空見上げながらの帰り道

零れそうな泪を必死でこらえて上を向く

そんな俺の前に貴方が立ってた


精一杯笑顔を作って


「翔君 卒業おめでとう

 この言葉だけは直接伝えたかったから

 連絡するまで待ってって言ってたのに約束破ってごめん

 それからこれ、卒業祝い兼合格祝い ・・・ 受け取ってくれる ・・・」



そう言って、差し出されたのは1メートル四方の包装された物

キャンバス? ・・・


引きつった顔のまま、黙ってそれを受け取った

顔を見れなくて ・・・ 見たら抑えられない ・・・



「話したくない? ・・・ そうだよね ・・・

 顔も見たくない ・・・ か ・・・


 ・・・ NYに行ったら ・・・ いつ戻って来れるか分からない

 そんな俺を待ってて欲しいなんて・・・ 虫が良すぎるでしょ ・・・

 自分の夢の為に勝手なことするんだ 

 愛想つかされて当然 ・・・ うん ・・・ ごめん ・・・


 君との7か月 ・・・ ホントに楽しかった ・・・ ありがとう ・・・

 ・

 ・

 ・

 俺達 ・・・ 別れよう ・・・ 

 

 そんな辛そうな顔見たくない

 もう、君を苦しめたくないから ・・・ 俺の事は忘れて ・・・


 翔君の夢が叶いますように

 ずっと願ってる ・・・ 笑顔で元気でいて ・・・

 それじゃあ ・・・ 行くね ・・・

 さよなら ・・・ 翔君 ・・・ 俺の大切な人 ・・・」

 


大野さんは手を差し出して、握手しようとした

それでも身動き取れなくて、その手をじっと眺めてた

その手は、スッと戻されてジャケットのポケットに戻っていった


思わず顔をあげると

瞳いっぱいに涙を浮かべた大野さんが淋しそうに笑って


俺を見つめて、小さく頷いて ・・・

くるっと後ろを向いて、顔を上にあげて



泪を堪え乍ら


「楽しかった ・・・翔君と過ごした7か月

 ずっと恋してた ・・・ キラキラ輝いてて

 どんな翔君も大好きだったよ ・・・」




そう呟く貴方の背中が震えてた ・・・



「俺だって ・・・ 俺だって ・・・ 大好きだよ ・・・

 今だって ・・・・ でも ・・・ 」



その先が続けられない ・・・ 行かないでって言わせないで ・・・ 



 

貴方は振り返らなかった ・・・ そのまま ・・・

俺を置いて ・・・ 帰って行った ・・・・





俺は追いかけもせず、その後姿だけを眺めてた





俺達の恋は ・・・ そこで終わってしまった 












<続きます>