当主の戦い39 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

何も見えていなかった ・・・ 違う、見ようとしていなかった

当主の品格を貶める事なく、当主の務めを必死でこなしてきた

そう、こなしてきただけ


「こうあるべき」って言う理想像だけを求めて

上辺だけを取り繕って中身は伴っていない


休暇になると、さっさと海外に出かけ

仕事以外では町に下りる事もせず、人と触れあう事もない

そう言う意味では、マサキの方が務めを果たしている



サトシが過ごした1年、あの人の瞳に俺はどう映っていたんだろう

顔を合わすたびに言われた言葉



お前は働きすぎなんだよ

何も考えない日も必要だぞ

ここが一番好きだって、胸張って言えるのか?



深く考えることはしなかった

お気楽な人はいいよな、好き勝手言えて ・・・

とんでもない思い違い ・・・ 俺以上に重い荷物を背負ってる人なのに



親父と遣り合ってから、俺はサトシが過ごしていたアトリエで寝起きしてる

あの人の温もりを少しでも感じたくて



扉を叩く音



「ショウ、入ってもよろしいですか?」

お袋の声がした



「ええ、どうぞ」


お袋は、優しい笑顔を浮かべながら中に入ってきた



「まあ、色とりどりの世界 ・・・ 綺麗 ・・・ この花はうちの庭に咲いてる ・・・」

そう言いながら、瞳を輝かせてサトシの絵を眺めてる




「何か用?親父から説得を頼まれたの」


親父とはあれ以降、まともに話をしていない

お互い、言いたい事があるのはわかってるけど

結局堂々巡りなんだ


お袋はキョトンとした顔をして


「何の説得?お嫁さんを貰いなさいって話 ・・・

 必要ないでしょ、好きでもない女性と結婚するなんてナンセンス

 だって、私の大切なショウの相手なのよ

 愛されていないお嫁さんと張り合っても楽しくないでしょ

 私が焼きもち妬くくらい愛されてる人でなきゃ、貴方を任せられない」


って、クスクス笑ってる



「俺は結婚しないって言ってるんだ

 そもそも好きな人は ・・・」


言いにくそうに俯くと


「ああ ・・・ そう言う事 ・・・ まあ、親としてはショックよね

 まさか女性が嫌いだったなんて」


って、あっけらかんと答える



「勘違いしないで、

 男性が好きな訳じゃない ・・・

 あの人が ・・ サトシだから ・・・」

 

そんな俺の言葉を聞いてか聞かずか

何も言わずに壁に描かれた絵を見てる



「これは夏の大三角形 ・・・ ベガ、アルタイル、デネブ ・・・

 南斗六星 ・・・ ミルク・ディッパーね ・・・ 

 ミルキーウェイの星を掬っているみたいに見えるから ・・・

 因みに東の国では生を司る星って呼ばれてるみたいね

 それに ・・・ 月が描かれてる ・・・ そう ・・・ ブルーなのね」


壁に描かれた夜空の星を、なぞる様に指が宙を舞う



焦れた俺が声を掛ける


「ねえ、聞いてる ・・・ 俺はサトシが好きなんだ

 あの方が王子でも ・・・ 気持ちは抑えられない

 ずっとずっと閉じ込めてきた想い ・・・ 

 幼いころから ・・・ 忘れなきゃって 

 だけど出逢ったら止められない ・・・

 最初で最後の我儘だと思って諦めて 

 賛成してくれとは言わない、認められないなら勘当でも何でもして」


お袋は少しだけ淋しそうな顔をして


「どうして勘当しなきゃいけないの? 

 貴方、悪いことしたの?


 浮いた話一つない堅物で、幻の婚約者を想い続けて

 心配してたんだから ・・・ 

 むしろ喜んでるのよ、人を好きになれる事が解って

 ふふふ ・・・

 それにしても、ロマンティストなのね ・・・

 鈍感な貴方が理解できるかしら、あの方が残したメッセージを」



堅物だの鈍感だの言いたい放題だよね

貴方の息子なんだけど



「良いの?俺がこのまま当主でいて

 マサキに託してもいいんだ、あいつの方が当主らしい気がする

 思いやりがあって、周りをちゃんと見てる」


お袋は小さく頭を振って


「あの子は当主としては優しすぎるの

 時には厳しくしなければいけない時があるから

 今迄通り、二人でこの家を守ってくれればいいのよ

 跡継ぎの事は、まだまだ先の話でしょ



 それより、可愛い二人の息子が幸せになって

 元気でいてくれるだけで、親はそれだけで良いの

 お父様も本当はわかってる」



叶わないな、お袋には


「ありがとう ・・・ 100人力だよ ・・・ 母さん ・・」


言葉に詰まりながら答えると

お袋は俺をぎゅっと抱きしめて



「分かってるの私が言った事

 鈍感な貴方が理解できるのか、それだけが心配

 この ・・・ ダメね ・・・ これは貴方へのメッセージ

 貴方が答えを見つけなさい

 ただ、これはラストチャンスかもしれない

 それを逃したら、彼は遠い人になってしまう

 精々頑張りなさい」


回された手で、背中を思いっきり叩かれた



確かカズナリも言っていた ・・・ 今月いっぱいだって



「何が描いてあるの ・・・ 全然分からない ・・・

 母さんは味方でしょ、教えてくれても ・・・」



「そうよね ・・・ ロマンの欠片もなさそう ・・・ 

 だめよ、私は味方になるとは言っていないわよ

 貴方の選択を尊重するって言ってるだけ

 お父様の沽券を傷つけないように

 あの人、意外と拗ねるの ・・・ ご機嫌を取るのも大変なだから

 私にとっては愛しのダーリンですからね」


って、茶目っ気たっぷりに笑う



「分かった、親父に理解して貰える様に

 何度でも説得するよ ・・・」



「その前に相手に振り向いてもらわないとね」



一番痛いところを突かれた



「うん、頑張るよ」



お袋がもう一度、軽く俺を抱きしめて



「私も甘いはね ・・・ キャンバスの絵に惑わされないこと」

って呟いて、優しく笑って部屋を出て行った





どういうこと?


 


謎がまた増えた ・・・ 俺はサトシに辿り着けるんだろうか?