ボクは、初めて見た❕
飼い主が、指輪をはめている❕
しかも、ダイヤモンドの❕
「これは、婚約指輪なんだ。
40年前に、結納の記念に夫から贈られた。
一緒に宝石店に行って買ってもらった。
私はだいたい目星をつけてあったから、迷わずに決めたんだ。
当時は、婚約指輪は、夫となる人の月収の3倍の値段のもの、というのが主流だった。
だから、高給取りの夫ではないから、ダイヤモンドなんていっても、大したものじゃない。
もちろん1カラットもないよ。
ただ私は、人と同じものは好まないから、婚約指輪として一般的な、【立て爪】のデザインは嫌だった。
これは、真ん中のダイヤの両側に金のラインが2つあって、その間にも小さなダイヤが入っている。
このデザインなら、立て爪よりも気楽に使える場面は多いと思ったんだ。
結納の日にちと、二人のイニシャルを彫ってもらうのに何日か要して、そして結納当日に、めでたく私の左手薬指にぴったりはめてもらった。
しかしケチがついたのは、その後。
結納が終わり、仲人さんらが帰って。
義妹と義オバが、指輪を見せてと言ってきた。
義妹は、へー、変わったデザインだね、と言って、自分の指にはめてみていた。
義オバは、指輪をつまんで、よーく鑑定するみたいに回し見て言った。
『なんだ、立て爪じゃないのか。
立て爪なら、売る時に高く売れるのに。』
私は、絶句したね。
即座に何も言い返せなかった。
義オバなんて独身の居候で、婚約指輪も持っていない。
そんな人に、はなから言われる筋合いはないよ、指輪を手放すことを最初に想定して買うか❕
もし立て爪でも、何カラットもする一粒ダイヤの高価なものでもなければ、そういう価値はありませんよ、と私は言ったら、義オバは苦笑いしていたが。
とにかく義オバは、私が嫁に来ることが気に入らなかったんだ。
自分の居場所を侵害されると思ったんだろうね。
義オバは、まだ50代半ばだったし。
ア、結納の時に、ひとつだけ義オバにほめてもらったことがある。
私は、成人式の振り袖を着ていたんだ。
目の覚めるような青地に、白い藤の花がバーッと描かれたの。
それはそれは目立つ柄だったね。
オレンジ系の帯も、よく合っていた。
義オバは、『誰にでも似合う柄じゃない。』と評した。
私はそれを、誰でも着こなせるような平凡な柄ゆきでないものを、堂々と着こなした嫁、と言ってくれたと思うことにしたわ。
ハハハ❕」
まあ、そのくらいの意気込みじゃないと、姑に義オバに義妹もいるような家に入って行けませんでしたよねえ。
「そうよ。
私はあの時から、突撃隊❕
でね。
この指輪は、結婚後は2.3回はめたかどうか。
大学の同窓会とか、くらいだなあ。
結婚生活は、まさにブチギレの連続で、ギーッと爪を立てて歯を食いしばっていたよ。
だから、まさに立て爪の日々。」
飼い主は、指輪をケースに戻した。
さすがに婚約指輪だけは処分できないようだ。
だいぶ前に、娘に譲ろうとして断られ、以来仕方なくずっと持っている。
指輪か。
人間は、何かと面倒で、大変だなあ。
ボクは、立て爪でも伊達爪でもないが、滑り止めやちょっとした攻撃に役立つ爪が標準装備だ。
毎月、シャンプーに行くたびに、勝手にチェックされて切られてしまうけどね。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240717/14/8350017/f7/58/j/o1080081015464160083.jpg?caw=800)
ア、忘れてた。
飼い主の婚約指輪。
今は、小指にしかはまらないんだ。
![](https://stat.ameba.jp/user_images/20240717/15/8350017/46/ad/j/o1080065315464173140.jpg?caw=800)
![ぼけー](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char3/060.png)
40年
かけた節くれ
久々の
ダイヤモンドの
指輪通さず
指の節
嫁の殊勲と
したくない
輝き鈍る
ダイヤ外して
かつてこう
細くもあった
我が指の
ダイヤは悟る
場違いなリング